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東京大空襲76周年

東京大空襲から76周年目の今、在日朝鮮人たちの置かれた現状… 掲げられた「多様性と調和」とは一体?

東京大空襲から76周年目の今、在日朝鮮人たちの置かれた現状… 掲げられた「多様性と調和」とは一体?の画像1 去る3月13日、大雨の降りしきるなか墨田区にある横網町公園内の東京都慰霊堂で行われていたのは、東京大空襲における朝鮮人犠牲者の追悼会。参列者は約70人。会場内ではソヘグム(朝鮮半島の弦楽器)の演奏による心地よい音色が聞こえてくる。

 今年は、ちょうど東日本大震災から10年の節目となり、ちょうど連日震災関連のニュースが報じられていた。そのため「3.11」の前日、3月10日が東京大空襲から76周年であることは、人々の記憶から薄らいでいたことだろう。

 1945年3月10日の東京大空襲では、米軍の爆撃により死者は10万人以上、負傷者は数十万人を越える。しかしこの空襲で日本人のみならず、多くの朝鮮人犠牲者が亡くなったことはあまり語られていない。

「戦争末期、強制連行などにより多数の朝鮮人が下町の軍関係企業・軍工場で働いており、東京大空襲によって東京在留朝鮮人9万7632人中戦災者は4万1300人、死者は少なくとも1万人を越えていたことが判明しています」(参列したけしば誠一杉並区議)

 当時の日本には、「募集」「官斡旋」「徴用」などさまざまな形で多くの朝鮮人が各地で働いており、その被害は東京大空襲だけにとどまらない。

「広島・長崎の原爆投下により、朝鮮人は約4万人が死亡。後遺症による死者を含めればそれ以上の人が亡くなったでしょう。正確な人数はわかっていません」(参列した有田芳生参院議員)

 また、日本の大学に通う在日朝鮮人の学生は、追悼文の中で次のとおり述べた。

「先代の同胞たちの多くは植民地支配のもと想像を絶する苦労をして故郷を離れ、日本での暮らしを余儀なくされました。家族と引き離され、過酷な労働によって搾取され人間以下の扱いを受けた挙げ句、東京大空襲により無残に殺されていった同胞の、怒りと悲しみ、苦しみは、容易に想像できるものではありません」

 1923年に起きた関東大震災では、「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」というデマや流言により、自警団などの手で多くの朝鮮人が殺害された。また前述の通り、東京大空襲をはじめ太平洋戦争でも日本にいた多くの朝鮮人が犠牲となっている。

そうした在日朝鮮人犠牲者の数は長い間ひた隠しにされ、正確な人数は現在もわかっていない。そして在日朝鮮人の声を封じるかのように、現在も彼らに対する差別は続いているという。

東京大空襲から76周年目の今、在日朝鮮人たちの置かれた現状… 掲げられた「多様性と調和」とは一体?の画像2
追悼の言葉を述べる有田芳生参議院議員(中央)

放課後は虎ノ門に集合

 2020年3月、新型コロナの広がりでマスク不足が深刻化していたさなか、さいたま市が市内の幼稚園に備蓄マスクを配布した際、当初埼玉朝鮮幼稚園を配布の対象外とされたことが問題となった。

 また朝鮮幼稚園を含む外国人学校幼稚園が、2019年9月から始まった幼保無償化制度(改正子ども・子育て支援法の幼児教育・保育の無償化)の対象外とされたことも記憶に新しい。朝鮮学校については、2010年から始まった高校無償化制度(高等学校等就学支援金制度)からも除外されている。

 都内で飲食店を営む在日朝鮮人の男性は話す。

 「娘が朝鮮学校に通っており、私は日本政府の対応に憤りを感じています。朝鮮学校を無償化制度から除外する理由は、『カリキュラムが日本の教育基準に準じていないこと、北朝鮮との関わりを指摘し支援金の使途が明白でないこと』などです。

私たちは日本で生まれ育ちましたが、ルーツは朝鮮半島にあります。自分たちの民族の歴史を学ぶことの何がいけないのでしょうか。なぜ教育問題と外交問題が同じ土俵で語られるのか理解できません。

(新型コロナ拡大以前)私の娘は現役高校生として、毎週金曜日に虎ノ門にある文部科学省の前で朝鮮学校差別是正を訴える活動に参加していました。学校が終わって、本来なら勉強や部活動ができる時間にですよ……。それなのに子どもたちが、わざわざ電車に乗って遠くまで出向いて差別解消を懇願するんです」

 幼保無償化制度は消費税を10%に引き上げたことによる増税分を財源としている。つまり国籍に関わらず、外国人も含めて日本に在住するすべての人が負担している。どうやら日本では、義務を負担しても多様性というのは認められないようだ。

「私は北朝鮮の拉致問題について、本当にひどいことで、あってはならないことだと思っています。正直にいうと、少なくとも私の周りには、北朝鮮の思想に傾倒しているという人はほとんどいません。政治的な思惑なんかないですよ。純粋に民族教育のためだと理解してほしいだけです。

 私は日本で生まれ育ったからこそ日本の友人もいますし、日本のいいところもたくさん知っています。だからこそ日本が、もっと多様性を認め、よりよい社会になってほしいのです」(同)

そう語る男性からは不満ではなく、「在日朝鮮人」という自らの存在を否定されている現状に対しての悔しさと悲しさがにじみ出ていた。

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