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『鬼滅の刃』成功は必然だった―先行投資と芸能界重鎮へのパイプがつくり上げた“ソニー帝国”の軌跡

文=与良天悟(よら・てんご)

アニソンで集英社、芸能界ではバーニングと太いパイプ

 そもそも、「アニプレックス」を設立する以前からソニーはアニメに力を入れていたとか。

「アニソンといえば業界では『キングレコード』が有名ですが、実はソニーもかなり昔からアニメ業界と親交が深く、特に『鬼滅の刃』の原作マンガが連載されていた『週刊少年ジャンプ』(集英社)とは太いパイプがあると言われています。また『NARUTO』や『BLEACH』のOP/EDはソニー所属のアーティストでした。アニメは先行投資が不可欠なのですが、例えば他のレコード会社がアニメの制作費の5%~10%程度を負担することでオープニング曲やエンディング曲といった主題歌の権利を得るところをソニーはそれ以上の比率の資金を投入し、主題歌だけでなく、グッズの権利なんかも獲得していました。こうした歴史が今の『アニプレックス』の隆盛につながっているのでしょう」(アニメ誌ライター)

 さて、“パイプの太さ”といえば、大手芸能事務所との蜜月関係も無視できない。

 テレビ局やスポーツ新聞社、レコード会社などでは現在、「吉本担当」や「ジャニーズ事務所担当」など、日頃から付き合いのある大手芸能事務所との窓口となる社員を配置するのが当たり前となっている。

 そんな中でも“芸能界のドン”こと周防郁雄社長率いる「バーニングプロダクション」の担当社員は通称“B担”と呼ばれて業界内では独特の存在感を放っているが、そもそも80年代に他社に先駆けていち早く“B担”という仕組みを作ったのもソニーだという。

 当時を知る前出の大手レコード会社のベテラン社員は明かす。

「人気アーティストを多数抱えていたバーニングの中でも、在籍する郷ひろみさんがアーティストとして所属していたことが当然根底にはありますが、ソニーの“B担”スタッフは単なるA&Rやアーティスト担当にとどまらない動きをしていましたね。“B担”にはソニー社内でも優秀な社員のみが担当し、他の芸能事務所担当にはない自由な行動が許されていました。当時は携帯電話やスマートフォンなどない時代、『ソニーのB担は社内の行先予定表のホワイトボードに『バーニング』と書けば半年間は出社しなくていい』なんて噂があるほどでした」

 こうしたソニーのやり方を見て、追随する形で他のレコード会社も“B担”を設置することになり、「一時期、ライバルのワーナーミュージック・ジャパンがソニーの“B担”のトップを引き抜き、業界内の政治力アップを図ったこともありましたね」。

 そんなソニーとバーニングプロダクションとの強固な関係が顕在化したのが、99年8月の郷ひろみによる渋谷駅前スクランブル交差点でのゲリラライブ事件である。

 郷は、後に大ヒットして社会現象にもなる新曲「GOLDFINGER ’99」のプロモーションの一環として、JR渋谷駅前の交差点にトラックを止め、無許可で白昼ゲリラライブを敢行。

結果、マスコミと野次馬が交差点に押し寄せたために交通渋滞を引き起こしてしまった。

「この事件で警察の取り調べを受けた郷さん本人は『どこでやるのかさえ知らされていなかった』などと話し、お咎めはありませんでした。その一方で関係者ら6人が道路交通法違反容疑で書類送検され、このうちソニーのプロデューサーは懲役3カ月(執行猶予2年)の有罪判決を受けます。言わば、郷さんの新曲のPRのために前科がついてしまったわけですが、音楽業界ではこのプロデューサーに対して、同情的な声よりも『バーニングにあれだけの忠誠心を示したのだから出世は間違いないし、これで一生安泰だな』といった嫉妬や羨望の声が多かったのが実状です」(前出の元スポーツ紙の芸能担当記者)

 当然のことながら、両社の蜜月関係は令和の今も続いているといい、「毎年年末に発表される音楽業界最大の賞レースと言われる『日本レコード大賞』は、16年以降、5年連続でソニー・ミュージックレーベルズ所属のアーティストの作品が年間大賞に輝いていますからね」(同)とのこと。

 もっとも、ソニーの凄みや卓越した政治力を如実に表しているのが、バーニングプロダクションだけでなく、別の芸能界の一大勢力とも親密な関係を築いているところだ。

「『ジャニーズ・エンタテイメント』がソフトの流通をSME傘下のソニー・ミュージックマーケティングに委託していることは有名ですし、ジャニーズ事務所が18年に旧SME乃木坂ビルに本社を移転したことも話題になりました。両者の関係も一般的に知られている以上に強固で、『ジャニーズ事務所にもしものことがあればSMEが吸収合併するだろう』と見る業界人も多いです」(前出の大手レコード会社社員)

 昭和、平成、そして令和と魑魅魍魎うごめく芸能界の最先端を突き進んできた常勝軍団“ソニー帝国”の栄華はまだまだ続きそうである。

与良天悟(よら・てんご)

与良天悟(よら・てんご)

1984年、千葉県出身のウェブメディア編集者。某カルチャー系メディアで音楽や演劇を中心にインタビューなどを担当するほか、フリーで地元千葉県の企業の記事なども請け負っている。

最終更新:2021/04/04 09:00
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