『青天を衝け』堤真一演じる平岡円四郎、実はコミュ障だった? 非正規雇用10年くすぶり続けて開花した才人

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

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インスタグラム:【公式】大河ドラマ「青天を衝け」(nhk_seiten)より

 今回のテーマは、堤真一さんが愛嬌たっぷりに演じている、平岡円四郎の実像についてです。草彅剛さん演じる徳川慶喜との“掛け合い”は、『青天を衝け』前半の見どころの一つでもありました。

 ちなみに大河ドラマの歴史で、「平岡円四郎」というキャラが登場したのは、実は今回で4度目。『西郷どん(2018)』にも、山田純大さんが演じて登場していたそうですが、筆者には記憶がまったくありません……。

 おそらく今回の『青天~』が、平岡という人物が深堀りされ、印象的に描かれる最初の例となるのでしょうが、史実の彼は一体どんな人物だったのでしょうか。

 文政5年(1822年)、平岡は「下谷練塀小路(したやねりべいこうじ)」に生まれました。ここは現在の「千代田区・神田練塀町」で、JR秋葉原駅のすぐ近くにあたります。実家は、将軍直属の上流武士である旗本です。実の父は岡本忠次郎といって、円四郎はその名の通り、四男坊でした。父の仕事を受け継げるのは長男だけですから、円四郎は養子に出されることになりました。天保9年(1838年)、彼が数えで17歳の時です。

 養父となった平岡文次郎は、「裏門切手番頭(うらもん・きってばんのかしら)」という役職の旗本の武士でした。「裏門~」の仕事は、江戸城・本丸の切手門(きってもん)のガードマンです。大奥から出入りする女中たちや、荷物の検査などを行いました。

 しかし、天保12年(1841年)、平岡は神田明神の近くにある「昌平坂学問所」において「学問所寄宿中頭取」……つまり、学生寮の代表・監督役の一人に就職したという記録があります。養父の仕事とは、かなり別の職場を選んだな、という印象がありますね。

“武士の学問”である儒教の学校が「昌平坂~」で、日本全国から武士の子弟たちが学びに来ていました。実際は武士だけではなく、町人・農民に開かれた講義もあったそうですが、寄宿寮は武士向けです。

 寮は2つあり、一つは「書生寮」で、地方から来た武士の子たちが暮らしました。高杉晋作も滞在していたそうです。もう一つの寮が、若き日の平岡が仕事していた「寄宿寮」で、こちらは将軍直属の武士である旗本や御家人たちの専用でした。

 旗本や御家人たちの実家の多くは江戸市中にあり、寄宿寮をわざわざ使う機会もすくなかったと思われますね。「書生寮」と比べ、「寄宿寮」は規模も小さかったそうですし、監督の仕事も楽だったと思われます。

 しかし、就職からわずか2年後の天保14年(1843年)、平岡は仕事を辞めてしまっています。ちなみに辞任理由は「武術練習の為」だそうですが、時間だけはありそうな仕事だったのに、怪しいですよね。

 史実の平岡は、ドラマで描かれる愛嬌のあるキャラとは正反対の人物だったようです。複数の史料の中で、「変人」よばわりされており、「賢いのだろうけど、彼はコミュ障だよね」と要約できるような文言が目立つのです。

 たとえば『昨夢紀事』という書物では、「(平岡は)世俗と交はるを好まざりしかば、衆人目して変物」……、彼は“俗っぽいタイプ”の人間とは交流を拒絶したので、みんなから変人扱いされていたなどと評されています。

 これらのデータから平岡の実像を推測すると、彼は「人間関係を維持するのがものすごく苦手」だったのではと思われてならなくなるのです。たとえば、養父の仕事である「裏門切手番頭」では、有力者の奥女中のワガママを黙認せねばならない場面も多々あったでしょう。その手の“忖度”が、平岡には無理だったのかもしれません。

 昌平坂学問所の寮でも、恐らく硬派すぎる平岡には扱えないような問題が起きて、退職するに至ったのでしょう。辞任理由が「武術練習の為」だったことを思い出せば、不真面目な学生とガチンコの喧嘩になった可能性もあります。上司から平岡は叱られ、「本気で向かってくる相手に手加減できるほど、私は武術の達人ではありませんから! もっと練習してきます!」などと逆ギレして辞めてしまったのではないか、などとも想像がふくらむわけです。

 そこまで不穏ではなくても、誘惑だらけの江戸に暮らす旗本・御家人の子弟たちは、地方の武士の子より“遊び人”が多く、成績が悪いケースも多いのです。平岡が寮の仕事をすぐに辞めたのも、その手の学生たちとはコミュニケーションがうまく取れず、ストレスが溜まった結果という可能性が強そうですね。 

 そんな平岡が次に正規雇用されたのが、嘉永6年(1853年)、一橋家の雇小姓となったときのこと。家柄さえあれば安泰と思える江戸時代ですが、やはり“コミュ障”だと、いくら頭がよくても、丸10年も正規の仕事に就くことができないままだったのでした。

 一橋家に就職する前の平岡は幕府の「勘定方(かんじょうがた)」、つまり財務関係の仕事に就きたくて、中村次郎八という「町方与力」の役人の下でアシスタントをしていたそうですが……。

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