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NHK伝説の番組『プロジェクトX』 あの「神回」がDVD化から漏れた“大人の事情”

「プロジェクトX 挑戦者たち 4Kリストア版」(C)NHK

 テレビ界には、何十年経っても語られる伝説的な番組がいくつも存在するが、2000年にスタートした『プロジェクトX』(NHK)もその1つ。何度も再放送され、4月からはBSプレミアムで「4Kリストア版」の再放送が行われているが、その中でも屈指の“神回”は、なぜかDVD化されていない。

『プロジェクトX』は、戦後の高度経済成長期、知恵と努力の限りを尽くして成功を収めたプロジェクトを紹介する番組。毎回大きな反響を呼び、中島みゆきのテーマ曲『地上の星』が大ヒットするなど、高視聴率ドキュメンタリー番組としてテレビ史にその名を刻んだ。6月1日には、その中でも指折りの名作とされる「窓際族が世界規格を作った~VHS・執念の逆転劇~」(初回放送2000年4月)が放送された。

「このエピソードは、日本ビクターのVHSビデオテープレコーダー開発のストーリーに迫ったものです。当時はSONYがベータの開発を行っており、ビクターは業界8位の中小メーカーで、ビデオ開発部門はジリ貧状態。リストラ寸前でしたが、極秘で開発プロジェクトを進めて、松下幸之助も唸る品を作り上げ、VHSは世界規格にまで上り詰めました。

 他のエピソードにも共通していますが、関係者やライバル企業など、あらゆる固有名詞が実名で登場するのが大きな魅力。NHKが民間企業のプロジェクトを取り上げるのも異例でしたし、丁寧な取材、再現ドラマの精度など、あらゆる面でこだわりまくった作りはNHKにしか出来ないもので、その後の企業ドキュメンタリー番組に大きな影響を与えました。VHSのエピソードはとりわけ反響が大きく、2002年に西田敏行主演で『陽はまた昇る』という映画も作られています」(キー局関係者)

 実に21年前の番組だが、1日の放送後、ネットでは、「NHKの面目躍如」「VHS回良いなあ…何度見ても泣ける」「何度観ても感動するな」といった賛辞の声が次々。『プロジェクトX』はビデオや書籍にもなり、BOXセットも発売されているが、ビクターのエピソードはDVDに収録されていない。当時の事情を知る経済誌編集者はいう。

「ビデオの開発競争ではSONYの鼻を明かしたビクターですが、その後に台頭することになるDVDの開発では大きく立ち遅れ、DVDレコーダーで重大なバグが発生して、回収と修理に追われます。ブランドイメージが大きく損なわれたところに、他の商品の欠陥も明らかになって、会社は致命的なダメージを受けました。そういった経緯から、VHSを駆逐したDVDにエピソードが収録されることに対し、ビクターが強い難色を示したようです。結局、ビクターは2011年に会社が無くなってしまいました」(経済誌編集者)

 栄枯盛衰とはまさにこのこと。今となっては、せめてDVDだけでも栄光の歴史を残すべきだったのかもしれない。

木村之男(芸能記者、TVウォッチャー)

1972年生まれ、東京都出身。大学時代にライターとして活動し始め、出版社~編集プロダクションを経てフリーに。芸能・カルチャー・テレビ・広告業界などに精通する。趣味はテレビに映った場所を探し出して、そこに行くこと。

きむら

最終更新:2021/06/09 09:00
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