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【短期集中連載】音楽ライターが検証する『大豆田とわ子と三人の元夫』のED評

『大豆田』ED、セカンドヴァースで解き明かされる物語の意味―とわ子はなぜ離婚と結婚を続けるのか

今、ラップで男女の関係を紡ぐ意義

 なぜ難しいのか。ここでドラマ本編とはトピックが外れてジェンダーとラップの話を手短にさせてほしい。

 ラップの特性は、楽器が弾けず、歌に自信がなくても曲を作れる点にある。それゆえラップは、詩や物語のように言葉の芸術としてメッセージを伝えられる。そしてラップが人気になればなるほど、今までは大衆に届かなかった声が多くの人に届くようになり、虐げられている者たちのエンパワーメントの一端を担う。

 音楽ライター・高木”JET”晋一郎氏による「ちゃんみな、あっこゴリラ、valkneeの楽曲を聴いて40代男性ヒップホップライターが我が身を振り返って考えたこと」(https://note.com/tv_bros/n/nd21917010477)にわかりやすく解説されているように、ラップは今も女性蔑視や差別用語がほかのジャンルに比べ多用される音楽だが、そういった風潮をシーン一体となって是正してゆく流れも昨今生まれてきている。

 だからこそ、男女は違う生き物だと吐く主張は、『まめ夫』のストーリーを踏まえているがために言える、パンチラインになり得るのだ。

 そして同時に、鹿太郎の次の素敵な2小節「君に寄り添って何度でも/どんな失敗にも花束を」を引き立てる、NENEの最高のパスでもある。離婚したって、どんなに塩対応をされたって、褪せることない憧れをとわ子へ伝え続ける鹿太郎。しかもオートチューンとは、歌声を“補正”するツールであることを踏まえると、鹿太郎の「僕にとってあなたは高嶺の花です。あなたを下から支えることはできます。僕があなたを持ちあげます」「花束を抱えているようです」という、とわ子の人生を“補いたい”かのようなプロポーズを思い起こさせる。

 また、鹿太郎と花束といえば、もうひとつエピソードがある。ひとりオフィスで残業するとわ子へ、鹿太郎が花束を届けたシーンだ。

 余談だが、そのときとわ子が悩んでいたのは、デザインが秀逸でも予算がオーバーする計画を不採用にしたことで生まれた孤立だった。それでも今、とわ子は買収先から利益を追及する為経営体質への変化として、社長解任を迫られている。そう考えると会社経営の難しさと社長という孤独さを、少しだけ理解できる気もする。

 最後の2小節「それぞれの道で扉を開いてる/逆算はせずに歩き始めてるの」は、行く末がまったく予想ができないドラマのストーリーをなぞらえているのだろう。1拍空けることでフック(サビ)のコーラスに弾みがつくところも聴き心地が良い。

 このように今回も「Presence」シリーズのラップは、ドラマの要素を丁寧に汲み取ったリリックであった。

 それでも、7話のエンディングでBIMのリリックの中でも解けない部分が残っていると書いたが、そのひとつが岡田将生演じる慎森による「この先もどうせ進まない要件」は解けそうだ。

 慎森の言う通り、とわ子に社長解任を迫る小鳥遊は自滅するかもしれない。では、プライベートで急接近したとわ子と小鳥遊は、どのような関係に変化するのか? 八作の結婚相手とは?

 ストーリーにばかり気が向かってしまうが、Daichi Yamamotoが誰をキャメオ出演させるのかも楽しみだ。Jazzy Sportが映るのか、Aru-2やKMが出るのか。はたまたロンドンの頃から曲をともに制作していたJJJもあり得るかもしれないと、筆者は妄想している。

斎井直史(ライター)

音楽ライター。主な執筆の場はOTOTOYでの『パンチライン・オブ・ザ・マンス』の連載。その傍ら年に数回、他媒体での寄稿を行う。

Twitter:@nofm311

さいいなおふみ

最終更新:2021/06/08 13:00
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