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TBS火曜枠“ヒット作を生む難しさ”…川口春奈主演『着飾る恋』が万人ウケしない理由

『着飾る恋には理由があって』
『着飾る恋には理由があって』公式サイトより

 川口春奈横浜流星の共演が話題となった火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系)がいよいよ最終回を迎える。6月15日に放送された第9話の世帯平均視聴率は7.1%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)だった。

 おそらく世帯平均視聴率としてはふるわない結果に終わることが予想される『着飾る恋』だが、もともと比較的若い20~30代をターゲットにしているであろうドラマ設定である。さらにインフルエンサーやSNSなど流行への感度の高い「リア充」なイメージが、苦手意識や先入観を持つ人から嫌厭されてしまった結果なのかもしれない。いざドラマを見てみれば、ラブストーリーでありながら“ご都合”すぎないリアリティ、横浜流星をはじめ役者陣の表情で魅せる演技、効果的な間の取り方などどこを取っても悪くないと思うだけに残念だ。

 ヒット作を生み出す難しさは、視聴者の感想からも読み取ることができる。第9話、SNSで紹介したバッグに盗作騒動が持ち上がったことをきっかけに、真柴(川口)はステマ疑惑をかけられてしまう。濡れ衣だと周囲は励ますが、ネット上でのバッシングは重なり、仕事でも遠回しに煙たがられる日々に追い込まれていく。気分転換にと外に連れ出す駿(横浜)だが、真柴の弱音に「逃げるな」と返してしまったことで真柴は耐えきれなくなり一人で帰宅。エスカレートする状況のなか、頼った葉山(向井理)の前でついに真柴は泣き出してしまう……というストーリーだ。

 ネット上の反応はさまざまだったが、大きく二つに分かれた。「自分に好意をもっていると分かっている葉山さんに弱っている自分を見せて何がしたいんだよ」「恋人と喧嘩したからって社長のとこに行くなんて」「駿に決めたなら社長に頼るのやめようよ」と、恋愛ありきで楽しむ一部の視聴者にとっては、恋人がいながら他の異性のもとで泣く真柴の“あざとさ”が鼻についたよう。

 一方で、「これは人生ドラマなんよ……」「逃げ場にしたい相手は逃げ場になってくれないところ、ただ受容されたいとき、それをくれるのは一番大切な人でないところ。うまい」「『着飾る恋』はみんなちゃんと人生・夢・仕事が最初にあって、そこに恋愛が絡んでくるのが素敵」など、葉山にすがった気持ちは恋愛とは別と解釈し、『着飾る恋』は人生を描いているという見かたをする視聴者も一定数いた。

 たしかに火曜ドラマはラブストーリー枠なので、とにかくベタな恋愛模様が見たいという人の存在もわかる。しかし、恋愛や結婚だけじゃない価値観が定着してきた現実をふまえれば、今回の『着飾る恋』の展開には現実に迫真するものがある。恋愛に振るべきか、人間ドラマを見せるべきか。ドラマが得意といわれるTBSでも、幅広い層にウケる大ヒット作を生み出すのは至難の技なのだ。

■番組情報
火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』
TBS系 毎週火曜日22時~
出演:川口春奈、横浜流星、丸山隆平(関ジャニ∞)、中村アン、山下美月(乃木坂46)、高橋文哉、向井理、夏川結衣、飯尾和樹(ずん)、赤ペン瀧川、木本夕貴ほか
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、棚澤孝義、府川亮介
プロデューサー:新井順子
音楽:神山羊、兼松衆、田渕夏海
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kikazarukoi_tbs/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2021/06/22 17:36
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