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「五輪反対派は反日」安倍晋三元首相のトンデモ発言を生んだ“右派論壇”の絶望的状況

文=藤井利男(ふじい・としお)

「五輪反対派は反日」安倍晋三元首相のトンデモ発言を生んだ右派論壇の絶望的状況の画像1
Getty Images

 仮にも日本の首相だった人間が、同じ日本に住む人間を「反日」と罵るとは……。

 安倍晋三元首相が雑誌の対談で、五輪開催を反対する人々を「反日」と表現し、大きな波紋を呼んでいる。

 問題となっているのは、月刊誌『Hanada』(飛鳥新社)に掲載された安倍元首相とジャーナリストの桜井よしこ氏との対談での発言だ。五輪開催問題について、安倍氏は開催の意義を説いた上で、

「共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対しています。朝日新聞なども明確に反対を表明しました」(『Hanada』より一部抜粋)

と、発言。これを報じた毎日新聞のYahoo!ニュースの記事には、2万件以上のコメントが寄せられている。週刊誌の政治記者はいう。

「安倍元首相はかつて、街頭演説でヤジを飛ばされた際、『こんな人たちに負けるわけにはいかない』と発言して大きな問題になりました。今回の発言も問題の根は同じ。『私がやることは日本のため』『私の意見は正しい』『だから私の意見に歯向かう者は反日』というロジックです。ただ、直近の世論調査では、五輪開催賛成と反対は拮抗しており、6月当初に行われた医師へのアンケートでは約7割が反対しています。安倍元首相の理論でいえば、残念ながら日本は反日だらけのようですね」(政治記者)

 政治家の仕事は反対派の意見を封殺することでなく、少数派の意見をすくい上げる作業のはず。コロナ感染が拡大し、ワクチン接種も思うように進まぬ状況で五輪開催を訴える方が無理筋にも思えるが、そういった声は安倍元首相の耳には届かないようだ。こういった発言が世に出る背景には、保守論壇の衰退があると指摘するのは、オピニオン誌の元編集者だ。

「近年、雑誌の売り上げが激減するなか、数少ないドル箱が“反中”“反韓”でした。中韓を叩けば雑誌が売れるので、良心的とされていたオピニオン誌がどんどんと右傾化。その代表が『新潮45』(新潮社)や『SAPIO』(小学館)です。ただ、『SAPIO』も『新潮45』も版元が大手なので、“ああいう雑誌を出すのはどうなのか?”という声が社内外から上がり、『SAPIO』は発行ペースが徐々に減った末に休刊。『新潮45』はLGBTを巡る記事が大炎上して廃刊になりました。

 そして生き残ったのが、『Hanada』や『WILL』といった雑誌です。『SAPIO』や『新潮45』は、良くも悪くもビジネスで右傾化しただけですが、『Hanada』や『WILL』(ワック)は本気だから質が悪い。過激なことを書くほど読者が喜ぶので、どうしても記事が先鋭化し、今回のような騒動を招く結果となります」(オピニオン誌・元編集者)

 ただ、いかなる事情があれど、安倍元首相の発言が問題なのは変わらない。

「安倍元首相は再々登板も噂されるほど影響力が強い政治家ですし、五輪延期を決めた張本人。五輪開催について意見があるなら、広く国民に伝わるような場で説明すれば良いのです。彼には説明責任がありますし、読売や産経など、関係が良好だとされるメディアはいくらでもあるのですから。

 安倍元首相の発言について、『Hanada』編集部は、『共産党に代表されるように、が前置き』『悪質な印象操作』と反論を試みていますが、“代表されるように”ということは、その背後にいる人間も含まれるのは明らか。オピニオン誌の編集部がその程度の読解力しかないのは悲劇ですし、共産党なら排除して良いという理屈も通りません。そんなレベルの雑誌にホイホイと担がれて出てしまう人物が元首相だったというのも、これまた悲劇です」(前出・政治記者)

 五輪が終われば総選挙がやって来る。強行開催のツケがどう出るか、それとも開催して正解だったのか、秋には答えが出ることになる。

藤井利男(ふじい・としお)

藤井利男(ふじい・としお)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

最終更新:2021/07/06 20:00

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