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音楽伝記映画ヒットの方程式【1】

クイーンの成功にあやかりたい!音楽伝記映画ヒットの方程式

文=ゼロ次郎

――『ボヘミアン・ラプソディ』の世界的ヒット以降、往年のミュージシャンたちの音楽伝記映画の制作・公開が予定されており、今後こうした映画がひとつのジャンルになると言われているほどだ。しかし、実在の人物の半生を扱うということで、その制作のハードルは高いようで……。(「月刊サイゾー」2021年7.8月合併号 【裏“ヒットソング” 】特集より転載)

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元メンバーの全面協力のおかげで、大ヒット作となった『ボヘミアン・ラプソディ』。(写真:Jun Sato/WireImage)

 20世紀の音楽史にその名を残すロック・ミュージシャンたちが、映画業界から引っ張りだこになっている。クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの人生を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』が2018年にヒットしてからというものの、同種の“音楽伝記映画”が続々と制作・公開されるようになり、これらはひとつの映画のジャンルに成長した。

 このような映画は往年のファンを取り込むことはもちろん、若い世代など新規の顧客にもアピールできるうえ、版権も動くことから、商業的な“鉱脈”であるとの見方も強い。本稿では、そんな音楽伝記映画の歴史を振り返ると共に、名作と失敗作の違いや、今後の展望などについて探っていく。

身内から不評の『ドアーズ』

 冒頭でも述べたように、制作・公開が予定されている音楽伝記映画の主人公には、そうそうたる顔ぶれが揃っている。詳しくは本記事の最後のページでも紹介しているので、そちらを参照してほしい。だが、下段の年表を見てもわかるとおり、音楽伝記映画は決して作品数が多いわけではなく、ジャンルとしてはマイナーな部類ともいえる。

「音楽伝記映画にはそれなりに名作もあるのですが、『商業的に当たらないから、やっても仕方ない』という風潮があったみたいです。一番大きかったのは『ドアーズ』の失敗ではないでしょうか」

 そう語るのは、『僕と魚のブルーズ 評伝フィッシュマンズ』(イースト・プレス)や『教養としてのロック名曲ベスト100』(光文社)の著者である、作家の川﨑大助氏。

「同作はオリバー・ストーンという、著名な監督が指揮を取るということで期待もされていたのですが、個人的にはどうしようもない映画だと思います(笑)。もちろん、肯定的に評価する声もありますが、そういう人たちは多分ドアーズが好きというわけではないでしょう。そこが致命的です。あの作品で描かれたのは、あくまで“オリバー・ストーンのドアーズ”であって、実際にドアーズの音楽が好きという人が見ると、全然面白くないわけです」(同)

 監督の作家性が強く出てしまったがゆえに、往年のファンが求めるものとは違った作品になってしまったということだ。それでは、成功を収めた『ボヘミアン・ラプソディ』は、どのような点に留意していたのだろうか?

「あの作品は、ストーリーに関しては陳腐な部分もありますが、主演のラミ・マレックがとにかく素晴らしい。フレディとは似ても似つかない体型だし、予告編を見た時点では絶対に失敗すると思っていたのですが、蓋を開けてみるとステージ上でのフレディの動きを完璧にマスターしていて、容姿の違和感を演技力でカバーしています。また、映画館という環境でクイーンの音楽が大音量で流れるうえに、最後にはフレディ本人の映像も出てきたりして、映画を見終わった後、猛烈にクイーンの楽曲が聴きたくなるような作りになっているんです」(同)

 ちなみに、『ドアーズ』は制作段階から監督と元メンバーの間に軋轢があった一方で、『ボヘミアン・ラプソディ』はクイーンのメンバー(ブライアン・メイとロジャー・テイラー)が制作に全面協力している。

「映画の中でも描かれていましたけど、ブライアン・メイはフレディという、とてつもないキャラクターの脇で非常にシュアな仕事をする人で、フレディ亡き後もそのレガシーを見事に引き継いでいます。だから、『ファンがどういうものを見たいか』ということを綿密に計算していて、その結果、作家性の強い映画ではなく、バンドグッズのような『クイーン公認の伝記』という形にすれば、一番盛り上がるという結論に至ったのではないかと思います」(同)

 このように、商業的に成功するための“方程式”は確立されているものの、諸々の事情でそれを実現できた作品が少ないということが、音楽伝記映画をマイナーな存在に追いやってきたひとつの原因ともいえよう。一方、『パンク・ロック/ハードコア史』(リットーミュージック)や「BURRN!」編集部員の奥野高久氏との共著『メタルとパンクの相関関係』(シンコーミュージック)などの著作がある音楽文士の行川和彦氏は、こう語る。

「ドアーズに関しては劇映画よりも、09年に『ドアーズ/まぼろしの世界』というドキュメンタリー映画もありましたが、そちらのほうが評価は高いですね。ドキュメンタリー作品というのは、編集でアーティストのグレーな部分をカットしたりとか、そういった部分に作り手の意思が介在しますが、事実を映している分、大きな反発も少ないんです。反対に、伝記映画は役者選びから、アーティストのグレーな部分の解釈に至るまで、作り手の思想というものがモロに出ますから、どうしても賛否が分かれますよね」

 作り手とファンの“解釈違い”は、小説やマンガといった確たる原作を持つ作品においても顕著に見られる。ましてや、題材が実在の人物やバンドとなると、第三者の窺い知れない〝グレーな部分〟も増えてくる。それゆえ、本人たちや関係者の協力はより重要になってくるということだ。

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