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関東大震災「朝鮮人虐殺」を起こした自警団とは――ラムザイヤーも信じたフェイニクニュースの真相

新聞の「誤報」と政府発表の「フェイクニュース」

――関東大震災後の「誤報」には2種類あり、新聞記者の習性上、不可避だった震災直後のものと、虐殺をごまかし、起きても仕方なかったものという印象を人々に与えるために政府が意図的に流した官製フェイクニュースがある、と著書で指摘されています。
 前者の震災直後の誤報に関して、「もし私が新聞記者としてその場に居合わせたなら、どうするだろうと考えると、警保局長発の電文を記事にしないという選択肢は思い浮かばなかった」「新聞記者としてその場に自分がいたならと考えると、やはり同じ記事を書いただろうと思えてならない。聞いた話の内容が本当に事実なのかを確認する手段はない。(中略)事故や災害の現場で、体験者や目撃者を探して証言を集めるという取材は今日でも珍しいものではない」との記述があります。
 こうした誤報が構造的に避けがたいのだとすると、その後に十分な検証・訂正がなされていない、誤報だったことが今日に至るまで繰り返し周知されなかったことが今日の虐殺正当化論にもつながる問題だということになります。そこの検証・訂正・周知は現在の新聞社に期待できるのでしょうか。できないのだとすると、何か打つ手はありますか。

渡辺 今日までほぼ100年にわたり、検証が行われなかったのはなぜなのかを何度も考えざるを得ませんでした。
 当時の状況もあり、その後の昭和の戦争といった環境もあったと思います。それでは、戦後70年以上も放置されてきたのはなぜだったのか。それは、必要に迫られなかったからのように思えます。今日の日本と韓国の対立・軋轢の激化は、新しい環境がもたらしたものだと私は考えています。冷戦の終了はひとつの要素であり、インターネットの発達はそれ以上に大きな要因ではないでしょうか。隣の国の人たちが、何を考え、何をしているのかが、相当につぶさに知ることができるようになっています。無関心でいることが難しい環境が、ここ10年ほどの間に急速にでき上がったのではないでしょうか。
 このような新しい環境が、軋轢の激化をもたらし、言葉を換えれば、歴史を見つめる新たな視点を求めているように思えるのです。そうして時代をとらえる人が増えれば、時間はかかるかもしれませんが、検証は自ずから始まるのではないでしょうか。それぞれが国という枠組みにこもって、それぞれの都合に合わせて歴史像を描くということが許された時代は終わりつつあるのではないでしょうか。

――では同様に、官製フェイクニュース問題に関してはどうでしょうか。政府の対応に期待できるでしょうか。また、何か打つ手はありますか。

渡辺 大きな枠組みでいえば、先ほど言ったことと同じです。日本においては政府が何らかの検討をするとは考えにくいのが実情でしょう。
 そうした中、アフリカのナミビアにおける虐殺についてドイツは今年、新たな姿勢を示しました。こちらのページを参照下さい。
 このようなことまでドイツと比較する必要があるのかと思われる方もいるかもしれませんが、こうした動きがあることは知っておいたほうがいいのでは思います。ナミビアでの出来事は、日本の朝鮮での振る舞いと、時期的に近似しているというだけではありません。
 1900年に中国であった義和団事件が、国際的には大きな契機になっているとの指摘が歴史研究者から出ています。義和団に向かい合ったのは日本を含む8カ国の軍隊であり、映画や小説を通して義和団側の凶暴性が強調されてきました。日本軍の紀律は保たれていたとされていますが、8カ国側の対応は虐殺と掠奪が実態でした。そのようなことをしても国際的に許されるのだという認識を生み出したとされ、ナミビアで虐殺を引き起こしたドイツの軍人には義和団の経験者が中心となっていたとされています。

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