日刊サイゾー トップ  > 大久保利通は“陰キャ”だから渋沢栄一に嫌われた?

『青天を衝け』で大久保利通が“悪役”として描かれたのは“陰キャ”で渋沢栄一に嫌われていたから? 個性豊かな新政府の面々の実像

倒幕に協力した旧藩主ら「不平士族」と新政府の間を取り持っていた大久保

『青天を衝け』で大久保利通が“悪役”として描かれたのは“陰キャ”で渋沢栄一に嫌われていたから? 個性豊かな新政府の面々の実像の画像3
大久保利通

 渋沢や井上、そして大隈たちに言いたいように言われ、ドラマでも悪役のように描かれている大久保利通ですが、われわれは彼をどう評価したらいいのでしょうか。

 急激な改革を推し進めようとしている新政府内の人々と、それらの改革に対して大反対の立場だった薩摩の島津久光など地方の旧大名たちの間を取り持ち、新体制が転覆しないように努力していたのが大久保利通という人物です。

 ドラマでも「廃藩置県」の言葉が飛び交うようになりましたが、これは倒幕に協力した旧藩主たちには寝耳の水の行いでした。これまで自分の領土だと思っていた土地を新政府によって奪われてしまうのですから。旧藩主たちの多くは、新政府には「第二の幕府」となってもらい、自分たちがもう少し国政に関与できればよい、といった程度のことを考えていたのです。にもかかわらず、明治新政府は旧藩主の大半を蚊帳の外に置いて、旧藩主たちから見れば何処の馬の骨ともわからない若者たちに好き勝手やらせているので、不満は募る一方でした。

 旧藩主たちだけでなく、新政府に入らなかった(入れなかった)旧武士たちの不満もあります。彼ら旧勢力……いわゆる「不平士族」と新政府の間を取りまとめる、という難題に対応せざるをえなかったのが大久保だったのです。

 次回予告にも軍服姿の西郷隆盛が「戦じゃ!」などと叫ぶ映像が見られたので、この手の問題もドラマ内で描かれていくでしょう。詳しくはその時にお話できたら、と思います。

 大久保は新政府の赤字も自分のポケットマネーで埋めるのが常だったため、遺産がほとんどない状態で亡くなっています。これも渋沢など一流の経済人から見れば「経済がわかっていない」行為なのでしょうが、彼も新しい日本を作ろうと踏ん張った「八百万の神」の一柱です。われわれ視聴者も大久保のことを歴史の悪役だと思い込んだりしないように気をつけたいものですね。

 ところで、個人的に気になるのは、渋沢成一郎(喜作)の動向です。ドラマは今、明治4年(1871年)まで進んでいます。史実の成一郎は明治3年に監獄から出所、渋沢栄一からスカウトされて大蔵省で働き始めているのですが、次回の予告にも彼の姿はなく、どうなってしまうのだろうと不安です。

<過去記事はコチラ>

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 11:41
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