日刊サイゾー トップ  > 渋沢栄一の不倫と「妻妾同居」三角関係

『青天を衝け』渋沢栄一 “エロオヤジ”の本性がついに劇中でも!? 大内くにとの“不倫”と、千代との「妻妾同居」三角関係

愛人との同居生活でも…「男は色気が大事」と娘に説いた妻・千代

『青天を衝け』渋沢栄一 “エロオヤジ”の本性がついに劇中でも!? 大内くにとの“不倫”と、千代との「妻妾同居」三角関係の画像2
仁村紗和演じる大内くに(番組公式Twitterより)

 大内くにと渋沢の出会いには諸説あります。ドラマでは、「戊辰戦争」に出征した夫が帰ってこないから女中をしている庶民的な女性として登場しました。渋沢家の縁故の学者・穂積重行の“解説”を筆者なりにまとめると、大内は京都出身者で、明治天皇の皇后に仕える高級女官だった高倉寿子に「女嬬(=雑用係の下女)」として雇われたために東京で働いていた時期もあったが、訳あって仕事を辞めて京都に戻りました。明治4年(1871年)以降は造幣寮管理のために大阪に来ていた渋沢の現地妻となって、渋沢との間にはその明治4年生まれの「ふみ(=のちの文子)」、明治6年生まれの「てる(=のちの照子)」という二人の娘を授かり、彼からも認知してもらって嫡出児にすることができたのだそうです。

 渋沢が東京に帰ってしばらくした明治5年、千代が長男「篤二」を授かり(余談ですが、篤二は後に正妻を捨て、愛人女性を正妻の座に据えようとしたことで、渋沢からモラル違反を咎められ、廃嫡に追い込まれています)、明治6年には大内が「てる」を生むというように、渋沢家はベビーラッシュに見舞われます。ただ、「てる」以降、大内が渋沢の子を生むことはありませんでした。正妻の監督下に置かれたことで、愛人としての「妾」から家の仕事を手伝う「召使い」になる選択を大内自身が望んだのかもしれません。

 大内の目には、渋沢が千代を捨てて自分を正妻に格上げする見込みはないと映り、それならば自分の娘の将来をより安泰にするため、家中で権力を持つ千代に逆らわずに生きたほうが賢いと思ったのでしょう。ただ、いくら広い屋敷とはいえ、同じ屋根の下で渋沢が自分とは違う女を抱いている気配は、千代、大内ともに感じられたはずで、お互いに気詰まりだったことでしょう。おそらく渋沢だけが何も気にしていなかったのではないか、と思われます。

 先述の学者・穂積重行によれば、こうした三角関係も、あの時代では「不自然なことではなかった」そうですが、彼は渋沢の長女・歌子の孫にあたる人物なので、そう言わざるを得ない部分もあったことでしょう。

 また、今風にいえば“(夫に浮気を)サレ妻”千代の本音が気になる読者もいるでしょうが、彼女の男性観は「男は色気が大事」と要約しうるものでした。

 時期は不明ながら、渋沢家に寄宿させていた親類の男子を千代が叱った時の言葉を娘の歌子が記録しているのですが、千代いわく、「男だからと云って(略)少しも愛嬌が無く、万事にごつごつしているのがよいことはない。私はお前に、真の色男になってもらいたく思う。然(しか)しそれはにやけた遊蕩的なのを云うのではない。(略)万事に通じ物のあわれも知って居て、女子から命がけで慕われる程」の男が“真の色男”とのことです。

 千代が夫・渋沢栄一の“妻妾(さいしょう)同居”を許したのも、彼が大内くになど「女子から命がけで慕われる程」の“真の色男”だったから……という理屈なのでしょう。こんな価値観の千代だから、渋沢の不貞行為は“気にならない”。多少のやせ我慢は入っていたでしょうが、そう言い切れる範囲に収まっていたと考えられます。

 その一方で千代は、既婚女性が夫以外の男性と婚外恋愛することを断固として許しませんでした。歌子に対して、「(あなたは)名誉ある父上のお子である上に(略)学問もさせ(略)てあるから、不貞不義などの行いは決してないものと安心して居る。然し万一(略)浅ましいことをすることがあったならば、私は生きてその恥辱を堪え忍ぶことは出来ぬ。不義な者は愛する子でも刺し殺して直ぐその刀で自害して仕舞う積りだ」……などと言ったことがあったそうです(鹿島茂『渋沢栄一 下 論語篇』)。千代は冗談めかしていたそうですが、歌子はその言葉を聞きながら「これは本気だ」と感じ、心底恐ろしかったとか。

 大内と渋沢はその後、関係を完全に解消し、大内は渋沢の家を出ていきました。没年などは不詳です。

 明治15年(1882年)には千代がコレラで突然亡くなってしまうのですが、その翌年、渋沢は後妻を迎えます。お相手は、実家が没落して芸者になっていた、元豪商の娘の伊藤兼子です。しかし、興味深いことに、兼子と渋沢が結婚した時期は「正確にはわからない」とのことです。当時、数多くいた渋沢の妾たちの中で、渋沢の愛情が一番深かった相手が兼子であり、千代の突然の死によって、幸運にも後妻にしてもらうことができた……という事情が垣間見えるような気がしてなりません。

 このあたりの複雑な人間関係を、大河ドラマがハッキリと描くとは思えませんが、どの程度、触れるつもりなのだろうか……と少し興味が湧いてきてしまいました。

<過去記事はコチラ>

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 11:41
12
ページ上部へ戻る
トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『24時間テレビ』強行放送の日テレに反省の色ナシ

「愛は地球を救う」のキャッチフレーズで197...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真