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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.661

『ドーナツキング』はアメリカンドリームの味? スイーツに隠された虐殺とアジア難民の歴史

文=長野辰次(ながの・たつじ)

『ドーナツキング』はアメリカンドリームの味? スイーツに隠された虐殺とアジア難民の歴史の画像1
「ドーナツ王」と呼ばれたテッド・ノイの波乱万丈な半生が語られる

 ドーナツほど、カジュアルでありながら深みを感じさせるスイーツは他にはないだろう。おやつにも軽食にもなり、その甘さは食べた人に祝祭感を与えてくれる。また、環状の形は数字の「0」を思わせ、世界の始まりと終わりを暗示しているかのようだ。法廷時代劇『最後の決闘裁判』が公開中のリドリー・スコット監督が製作総指揮したドキュメンタリー映画『ドーナツキング』(原題『The Donut King』)は、年々進化を遂げるドーナツにまつわる意外な歴史を教えてくれる。

 米国における代表的な揚げ菓子であるドーナツだが、米国西海岸にあるドーナツ店の90%はカンボジア人が経営しているという。その歴史の起点となったのが、本作の主人公である「テッドおじさん」ことテッド・ノイだ。カンボジア難民として1975年に米国に渡ったテッドがドーナツに魅了されたことから、この甘くて苦い物語は始まる。

 命からがらで米国に渡ったテッドは、妻と子どもたちを食べさせるためにカリフォルニア州の給油所で働いていた。近くの店からいい匂いがしてくるので、夜中に覗いてみるとそこはドーナツショップだった。カンボジアの郷土菓子ノムコンによく似たドーナツを初めて食べたテッドは、その甘さの虜になってしまう。居ても立ってもいられなくなったテッドは、米国の大手ドーナツチェーン店である「ウィンチェル」で3か月間の研修を受け、ドーナツづくりと店舗経営のノウハウを学ぶことに。英語はつたないテッドだったが、貪欲さが彼に新しい道を開かせた。

 研修を終えたテッドは、1976年に自分の店「クリスティ」1号店をオープンする。店の名前は愛妻から付けた。美人妻クリスティの明るい接客も評判となり、ドーナツ好きの米国人たちがリピーターとなる。テイクアウト用の箱は、値段がいちばん安いピンク色の紙を使うなど、テッドのアイデアもうまくハマった。

 テッドの成功に憧れ、他の多くのカンボジア難民たちもドーナツ店を開きたがった。テッドは、カンボジアから渡ってきた同胞たちの身元引き受け人を務める。叔父、従兄弟など続柄を偽り、テッドが身元を引き受けた家族は100以上になる。これがドラッグなどの闇ビジネスなら、マーティン・スコセッシ監督が得意とするマフィアものになるところだが、扱うブツがドーナツなので、本作は表面的にはふんわりしたドキュメンタリーだ。米国西海岸に、カンボジア人たちのドーナツ・コミュニティーが誕生することになる。

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