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『関ジャム』音楽P年間ベスト10後半戦 ヒゲダン、『大豆田』、宇多田…良曲多し?

感極まった蔦谷の姿こそ、Official髭男dismの持つ力

 最後に、蔦谷が選んだ1~4位は以下。

1位:Official髭男dism「アポトーシス」
2位:Awesome City Club「勿忘」
3位:Vaundy「しわあわせ」
4位:STUTS&松たか子 with 3exes「Presence」全作品

 まずは、Yaffleと同じく4位に選出した「Presence」から。3人の中でこの曲は絶対被ると思っていた。それどころか、もっと上位でもおかしくない。筆者の中ではこの曲が昨年の1位。「Presence」が2021年を代表する曲だと思っている。

「最前線のHIP HOPプロデューサーとラッパー陣が出演俳優と競演したバージョンを週替わりでエンディングに放送するという、2021年最高のメディアミックス作品でした。『よくぞ、このメンバーを集めてくれた』とうなったリスナーも多いのではないでしょうか」(蔦谷)

 SNS上では、どのラッパーが次に来るかを予想するドラマ視聴者が本当に多かった。フレシノ、BIM、NENE、Daichi Yamamoto、T-Pablowという面子も“わかっている”人選。この面子をきっちり揃えたのも凄い。ドラマの主題歌として超異色だし、この曲のおかげでドラマ自体もさらにカッコ良くアップデートされていた。あと、松たか子は主演ドラマのたびに曲を歌っている印象だが、良曲がちゃんと多いのも驚きである。

 3位は、Vaundyの「しわあわせ」。いしわたりはVaundyの「踊り子」を5位に挙げており、こちらでも被りが発生した。「しわあわせ」は東京モード学園のCMソングに選ばれたし、2021年フジロックの初日クロージングアクトはVaundyだった。彼はすでに売れているが、さらなる大ブレイクの前夜感がする。曲はキャッチーだし、明らかにSONYからも押されている。今年はきっとVaundyの年。昨年の藤井風のような現象が、彼の周辺で起こる予感がする。

 2位はAwesome City Clubの「勿忘」。2021年の『NHK紅白歌合戦』に出場した3人組であり、ポケカラのCMでこの曲は昨年末にやたらと聴いた。ボーカルのPORINは小沢健二との密会報道が流れており、その角度からこのバンドを知った人も多いだろう。

 蔦谷は「勿忘」を「サビは4563進行という典型的なJ-POPのフォーマットで作られている」「ある程度のルールが決まった中で新しく、面白く美しいものを作るのは新たな型を作ることと同じように至難の業」と評価、同じコード進行の曲としてYEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」を紹介した。どこかで聴いたことのある感覚がするのは、これが理由だったか! かつてのシティポップ路線から脱却し、現在の音楽性に着地したオーサム。一発当てて紅白にも出た今、これからがこのバンドの正念場という気がする。

 そして、1位はOfficial髭男dismの「アポトーシス」だった。アニメ『東京リベンジャーズ』(テレビ東京系)主題歌の「Cry Baby」ではなく、こっちを選んだというのが意外。何にせよ、一昨年辺りからヒゲダンはすっかりヒットメーカーのイメージだ。

 ちなみに、「アポトーシス」とはプログラム細胞死(新しい葉を生やすために落ち葉になって枯れる、オタマジャクシがカエルになるときに自ら尻尾を殺す等)という意味だそう。この曲に対する蔦谷の解説が凄かった。まず、イントロのフレーズを鳴らす音について。これはボイスサンプルを編集して作り出した、この世になかった音色らしい。そして、ヒゲダンが奏でているのは上から落ちて来るコードだ。

「音階が下がっていってるんです。新しい命が舞い降りてくるような感じに僕には聴こえました。落ち葉が散っていくようにも聴こえるし、すごく神秘的な音階に聴こえたんですね。あの音色でやる意味があったんです」(蔦谷)

 蔦谷の解釈がダイナミックである。こんなに深く考えて聴いてなかったし、藤原聡がここまで計算して作っていたかは正直言って不明だ。ただ、聴き手が好き勝手に拡大解釈しながら受け止める考察こそ、音楽(音楽に限らずだが)のたまらない楽しみ方の1つ。自分の考察を口にしながら、蔦谷ははっきりと感極まっていた。コロナ禍において余計に響くこの曲の力を、彼の昂ぶりは端的に表していたと思う。それに、理論派の藤原だけにあながち拡大解釈とも言い切れない。多少は考えていたような気もするのだ。

 というわけで、2021年の年間ベスト10は終了。改めてランキングを俯瞰して見ると、少し予想外だった。『関ジャム』お気に入りの藤井風が入っていなかったし、星野源も入っていない。優里もMAISONdesの「ヨワネハキ」も入っていなかった。順当な上位だったようで、何気に意外だった気もする。

「2021年は特にめちゃくちゃ名曲が多かった」と蔦谷が総括した、今回のランキング。正直、そこは一般層との乖離がある気がする。筆者は今回より2020年ランキングのほうに断然惹かれる。不作という言葉を使いたくはないが、自分だったら2021年だけで10曲も挙げられなかったと思う。そういう意味でも、3人の選者にはご苦労様の気持ちでいっぱいだ。

 番組エンディングで、MC・村上信五と蔦谷の間にこんなやり取りがあった。

村上 「じゃあ皆さん、また1年大変だと思いますけど……」
蔦谷 「来年スケジュール空いてないんだよね、俺たちね。確か、スキー行くんだよね(笑)」

『M-1グランプリ』のオール巨人じゃないんだから。ただ、蔦谷といしわたりはそろそろ選者を休憩してもいい気がする。2人が慧眼なのは疑いようもない。ただ、同じ選者が続くとどうしても傾向に偏りが出るし、彼らが好むアーティストの予想も立てやすくなってしまった。多くの選者の嗜好や見方が知りたいだけに、次回は他の選者でこの企画を行ってもいいのでは。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/01/23 20:00
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