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『ザ・ノンフィクション』衝撃の婚活回を男性ライターが見たら震えるしかなかった

「寝具をヨーカドーで買う」のはケチなのか?

 次にミナミさんが紹介されたのは、またしても資産家の男性・長谷川さん(仮名・40代)だった。代々続く地主の跡取りで、家族と一緒にマンションや店舗の経営管理をしているらしい。もう、話し方だけで彼の感じの良さは伝わってきた。ネックがあるとすれば、両親、兄弟と同居している点。今まで彼が結婚に至らなかったのは、おそらくそれが理由だろう。一族同居の中での専業主婦は、かなりキツそうだが……。

ミナミ 「もしご縁があって結婚した場合には、できればお家のことに専念したいなという希望があって。女性に対してどうしてほしいとか希望はあります?」
長谷川 「自分としては相手に合わせたいと思ってますね」

 一族同居でも専業主婦にこだわるミナミさん。「絶対に働きたくない!」という本気がビンビン伝わってくる。ミナミさんにとって、長谷川さんは条件にピッタリ。2人は交際を始めることにした。しかし、2回目のデート後にミナミさんが植草代表へ送ったメールは不穏だった。長谷川さんへの不満が長々と綴られていたのだ。特にインパクト大だったのは、以下の文章である。

「Tシャツや寝具は、ヨーカドーで購入、家電や靴下はネットで購入している。資産が多い人や富裕層に限って、ケチが多いという説は、本当かも知れない、と思った」

 植草代表は、さすがにミナミさんを諌めた。

「寝具とかTシャツをヨーカドーで買ってるっていうことなんだけど、それは別にいいんじゃないの? それは別に一般的だからケチではないよ。あなたにごちそうもしてくれないっていうんだったらケチって言われてもしょうがないけど、ごちそうしてくれてるからケチじゃないじゃない」(植草)

 ミナミさんのメールを読んで、筆者は震えた。ケチと堅実はまったく違うし、自分にお金をかけない男はむしろ婚活市場では好感度が上がるはずである。ブランド物を買いまくるよりよっぽどいい。無駄金を使わない上にごちそうをしてくれたのだから、それって最高なのでは? というか、それ以前にヨーカドーは別に安くない。西友やオオゼキと比べると、むしろ割高だ。資産家に夢を見る彼女は、ハイブランドですべて揃える良家に嫁ぎたいと思っているのかもしれない。世間知らずなミナミさん。ヨーカドーに文句を言う人が専業主婦希望なのも不安である。

 さらに、ミナミさんはスタッフに驚きの本音を告白した。

「嫌なわけじゃないんですけど、私は労働者として一生懸命働いてるわけで。多少体調が悪くても、何があっても会社員だから必死に働いてるわけですよ。でも、相手のその人(長谷川さん)はもともとお金持ちだから、そこまで自分を追い込んで働いたことあるのかなって思っちゃって。そんな住む世界が違う人とやっていけんのかなって」(ミナミさん)

 急に横柄な態度で、堂々と地主を見下すミナミさん。でも、金持ちには金持ちなりの苦労があるはずだし、経営はそんなに甘いものじゃない。どちらかと言うと、労働者よりもはるかに心労は多い。しかも、その資産に乗っかる生活を希望する彼女なのに……。「住む世界が違う」と言いながら、ヨーカドーをケチ呼ばわりしているのも辻褄が合っていない。彼女の不安は、自分と同じく手取り13万円で必死に働く男性と出会えれば解決するが……。ミナミさんは求めるものがブレブレになってきている。

「会社が傾き、就活の代わりに婚活へ全力投球」への違和感

 あくる日、彼女はすっかり吹っ切れた様子になっていた。会社の経営が厳しくなり、「将来的な人員整理もある」と上司から告げられたそうなのだ。

「逆に、それで吹っ切れたっていうか。泣いても笑っても行くしかない(笑)」(ミナミさん)

「会社が傾いたから婚活に全力投球する」だなんて、嫌な宣言だ。就活の代わりに婚活するとは、うまくいかない人生を結婚で一発逆転したい気持ちがありありと窺える。

 今日は、長谷川さんとの3回目のデートの日。しかも、ミナミさんの31歳の誕生日でもあった。このデートで、長谷川さんはミナミさんにハートのネックレスをプレゼントした。

「最高の誕生日です。ウフフ」(ミナミさん)

 長谷川さんとのデート後、ミナミさんはスタッフに打ち明けた。実は彼女、別の男性が気になっているらしい。1週間前にお見合いした30代の介護士・町田さん(仮名)である。

「(町田さんは)『うわぁ、すごく素敵な髪型ですね』とか『綺麗ですね』とか、もうすごいんですよ、本当に。『え? 本当にいいんですか?』っていう感じ(笑)」
「手はつなぎたいです」
「本当に早く会いたいです。一言、早く会いたい。それだけ」
「恋かもしれないです。認めなさいって言われれば認めますけど(笑)」(ミナミさん)

 大学時代、手をつないだだけで彼氏と男友だちを勘違いした彼女だ。リップサービスにのぼせ上がり、町田さんに惚れてしまったのかもしれない。だって、男慣れしてないから……。でも、1つ問題がある。「介護士と結婚しても、専業主婦でいられるのか?」という点だ。それどころか、ヨーカドーがケチだなんて言ってられなくなる。“好きじゃないけど生活力のある男性”か“お金はないけど惚れた男”かで揺れ動く心理は、まさしく婚活あるある。ミナミさんは町田さんへの想いを植草代表に報告した。

「(町田さんと)ご縁があった場合は共働きで、私が時短(勤務)とかそういう形にして。昨日お食事したんですけど『お互い支え合っていきたい』みたいな話が出て」(ミナミさん)

 あんなにこだわっていた専業主婦の望みさえ捨てる覚悟のミナミさん。これは恋だ。しかし、植草代表は表情を曇らせた。町田さんに対し、「ミナミさんは専業主婦を希望している」と何度も念押ししていたからだ。

「話が違う。彼に『どういうつもり?』って聞いてみる。ここは恋するところじゃなくて、結婚をするところ」(植草代表)

 まともに恋愛してこなかったミナミさんだけに、なかなか割り切れないものがあるのもわかるが……。

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