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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.674

自宅が全焼してしまった監督一家のドキュメント『焼け跡クロニクル』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

自宅が全焼してしまった監督一家のドキュメント『焼け跡クロニクル』の画像1
2018年春、お花見を楽しむ原將人監督一家。この3カ月後に大事件が待っていた

 幸せが手のひらからするりと抜け落ちていくように、不幸もまた音もなく静かにやってくる。映画『焼け跡クロニクル』は、自宅が火事で全焼してしまった原將人監督とその家族の姿を記録したドキュメンタリー作品だ。原監督は自宅と家財だけでなく、これまでに撮った作品のフィルムや機材までも失ってしまった。肉体的にも精神的にも大きなダメージを負った映画監督は、不幸のどん底からどのようにして這い出したのだろうか。

 火事が起きたのは、2018年7月。広末涼子の映画主演デビュー作となった『20世紀ノスタルジア』(97)などで知られる原將人監督は、家族と暮らす京都・西陣にある一軒家を火事によって失ってしまった。記録的な猛暑の夏だった。火事が起きた原因は不明。火元のないはずの2階から、炎が広まっている。原因不明の出火による火事は思いのほか多い。消防署の署員によると、漏電ではないかということらしい。大正時代に建てられた自宅は、路地奥にあったこともあり、消火することができずに黒煙と共に全焼してしまった。

 火事に最初に気がついたのは、自宅にいた原監督だった。

「階段を登っていくと、何と火の子どもたちが手を繋いで炎となって踊っているではないか。『何だ! お前たちはこんなところで踊ってちゃダメじゃないか!』と思わず言ったその瞬時『これは火事じゃないか!』『火事だ!』と、ファンタジーの世界から、現実に立ち戻った」

 映画監督ならではの言い回しで、原監督は火事発見時のことを振り返っている。

 原監督、大学生の長男、まだ幼い双子の姉妹(当時5歳)、仕事先に出ていた妻の原まおりさんの家族5人が全員無事だったことが不幸中の幸いだった。まおりさんは職場で火事の知らせを聞き、急いで自宅に駆け戻った。消防車、救急車、パトカーが止まり、町内が騒然としている中、まおりさんはスマホを取り出し、その様子を撮影している。まおりさんのとっさの行動が、今回の映画化につながることになった。

 一家5人が暮らす家を突然に失うという想定外のアクシデントを、原監督の公私にわたるパートナーである原まおりさんがスマホで記録している。目の前にある不幸を映像化することで、そこに客観性が生まれ、冷静さを保つことができる。まおりさんが現場を記録したことで、原監督は救われることになる。まおりさん自身も撮影という行為によって支えられた。

 原監督は全身に大火傷を負って、病院に搬送されていた。入院先で原監督は火事現場をカメラに収めなかったことを後悔したそうだが、まおりさんがスマホで記録したことを電話で伝えると、ホッとする。自分の体の心配よりも、妻の行動に安堵する原監督だった。映画監督としての業を背負う男と、その妻。常人の理解を超えた深い結びつきを感じさせる。

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