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『ねほりんぱほりん』社員を“リストラ”と“死”に追い込んだ非人道的なノウハウ

リストラの“理由”は本人から話させる

 続いて公開されたのは、リストラの告げ方だ。勤務中に対象社員の背中、肩甲骨辺りを“トントン”と叩き、「仕事中、お忙しいところすみません」と穏やかにニコニコと話しかけ、そのまま別室へ連れていき、テーブルを挟んで向かい合う。そして、「なんで呼ばれたかわかりますか?」と問う。そこからは沈黙。人事部側からは何も言葉を発さないのだ。沈黙の目的は、自分から落ち度を話させるためである。

山里  「『今、ちょっと業績悪い件についてですか?』みたいなことを、向こうから出させる?」
ソウタ 「はい。沈黙はやっぱり耐えられないみたいで、5分とか10分したら勝手にペラペラしゃべり出しますね」

 そもそも仕事中に人事部が来たら怖いし、声の掛け方は文字通りの肩叩き。呼んでおいて何も言わないのは恐怖でしかない。さながら、“リストラ仕事人”といったところか。そして、対象者に心当たりを話させるという狡猾なやり口である。はっきりと気持ち悪い。リストラのときにまで忖度を迫るのは、いかにも日本の企業。陰湿だ。

「で、『うちの営業所、業績悪いですよね』なんて言い出したところで、『じゃあ、そのことについてあなた、リーダーとしてどう思います?』『何か改善されましたか?』と」(ソウタさん)

 業績悪化の多くは経営の問題である。なのに、一個人に重大な責任があったと思わせ、自ら辞職を切り出させようとする胸クソ悪さはどうか。決して、会社側から促すという構図を作らないやり口は、裏社会のそれに近い。とは言え、頑なに拒否する社員だっているだろう。その場合は、次なる手を打つ。

「こっちの『辞めさせる』ってことは変えずに、手段としてはタイムセールじゃないですけど『今辞めたら退職金をこれだけ上乗せできる』と言うと、みんなこの後の生活が頭をよぎるんですね。で、『今しか!』ってこちらから言うと、『サインしたほうがいいんじゃないかな?』って方向にほとんどは傾いていきます」(ソウタさん)

 こんな「今でしょ!」はいやだ。

リストラ交渉の担当者が自殺する

 もともとは東京勤務だったイチローさんは、ある地方の工場が閉鎖するにあたってリストラを担当した。その工場があったのは、彼の地元だそうだ。

「あえてというか。そのほうが共感しやすい、仕掛けやすいということで人事としてはままあります」(イチローさん)

 対象は、工場で勤務する約200名の従業員全員。そのリストラ担当者としてあえて地元出身者を行かせるという非情さに、またしても人事部の怖さを感じた。

 形としては、作業員全員に工場閉鎖を告げて一斉にリストラを目指す。しかし、その1年前の時点でイチローさんは工場に着任した。リストラを告げる準備に1年かけるということだ。

「青天の霹靂になると精神的負担がとても大きいので、『なんでこうなった!』ということに突然ならないように、管理職が集まる日頃の会議の場で『景気が悪い』『工場の採算が取れてない』などと伝えたり、工場の中の方々にも『自分たちで考えていかないと、このままだと工場がまずい』と伝えていく」(イチローさん)

 危機感を与えている時点で、工場の閉鎖はもう決まっているのだ。空気を作っていくためだけの煽りである。そもそも、工場内だけで頑張っていても採算なんかよくならない。だから不毛、ただの根回しだ。1年後に閉鎖が決まっているのなら先にはっきり伝え、就活しながら勤めてもらうほうがよいのでは? と思わないでもないが……。

 そして、イチローさんが着任してから1年が経った。工場閉鎖によるリストラを告げるため、全従業員がホールに集められたのだ。閉鎖と全従業員解雇をみんなに伝えたのは、工場長である。実は、彼が工場閉鎖の事実を知ったのはイチローさん着任と同時期の1年前。もちろん、リストラ対象者には工場長本人も含まれている。

YOU   「工場長の身は持つ、1年も!?」
イチロー 「持た……せてもらいました」

 自分もリストラされるというのに、よく勤め上げられたものだ。閉鎖とリストラが発表された瞬間、ホール内は怒号が飛ぶこともなく、落胆の空気が充満していたそうだ。全員、閉鎖をなんとなく察していたのだろう。1年かけた準備の成果である。

「私の仕事は、リストラを告げるときのシナリオを作ること」(イチローさん)

 シナリオを作る、つまりイチローさんは黒幕の役目を担当した。そこからは、工場の各部署の部長が個別の面談を行っていく。でも、面談で揉めることはなかったのか?

「大きな揉め事はなかったんですけれど、シナリオに沿ってリストラを告げていただく部長の内の一人が自殺を……してしまいました。詳しい理由は私にもわかりませんが、面談の期間中だったので、気を病んでしまったのか……」(イチローさん)

 自殺は会社に対する、もっと言えばイチローさんに対する部長からの訴えである。

「なんで気付かなかったのかと、人事と言っていながら人のことが自分も全然わかっていないなと、痛感しました」(イチローさん)

 イチローさんのしゃべり方が暗い。感情を抑えつつ、苦悩がありありと伝わってくる。リストラは“される側”も、“切る側”も、そして“切らさせる側”も苦しすぎる。「1年かけて準備する方法は間違いだったのでは?」という気が、やっぱりするのだ。

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