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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.683

連続殺人鬼との遭遇が退屈な人生を激変させた! 白石和彌監督作『死刑にいたる病』

連続殺人鬼との遭遇が退屈な人生を激変させた! 白石和彌監督作『死刑にいたる病』の画像1
阿部サダヲ&岡田健史がW主演したサイコサスペンス『死刑にいたる病』

 劇薬は、希釈して効果的に使えば良薬にもなりうるが、使い方を誤ると取り返しのつかない事態を招いてしまう。サイコホラー小説の旗手・櫛木理宇が2015年に発表した『チェインドッグ』――文庫化の際に改題された『死刑にいたる病』(早川書房)は、死んだような毎日を過ごす大学生が連続殺人鬼と遭遇することによって生きる気力が湧いてくるという逆説的な物語だ。犯罪サスペンスを得意とする白石和彌監督が、阿部サダヲ&岡田健史のダブル主演作『死刑にいたる病』として映画化した。

 作家デビュー前から、『現代殺人百科』(青土社)など実在の殺人犯たちに関するノンフィクションものを読み込んできた櫛木理宇のミステリー作品には、読み手を惹きつけて離さない禍々しい魅力がある。北九州監禁殺人事件や尼崎事件をモチーフにした小説『寄居虫女』(角川書店)など、フィクションとは思わせない現実味のある恐怖を得意とする作家だ。『死刑にいたる病』で阿部サダヲが演じる死刑囚も、二枚目で頭脳明晰なシリアルキラーとして米国犯罪史に名前を残すテッド・バンディを日本人に置き換えたような不気味なキャラクターとなっている。

 連続殺人鬼と出会うことで人生が大きく変わることになるのは、平凡な大学生の雅也(岡田健史)だ。雅也は中学までは成績優秀な優等生だったが、高校生活でつまずき、今は三流大学の法学部生として無為なキャンパスライフを送っている。中学時代の同級生・灯里(宮﨑優)が同じ大学に通っているが、かつては暗い性格だった灯里は社交性を身につけて別人のような人気者になっていた。灯里から優しく声を掛けられると、雅也はますます気分が落ち込んでしまう。

 孤独な日々に鬱屈していた雅也のもとに、意外な人物からの手紙が届く。中学時代の雅也が立ち寄っていた人気ベーカリー店の店主・榛村大和(阿部サダヲ)が送り主だった。雅也が地元を離れた後、榛村は連続猟奇殺人事件の犯人として逮捕されていた。24人もの男女を監禁殺害した榛村だが、好奇心に突き動かされて面会に訪れた雅也に「最後の一件だけは自分ではない」と訴えるのだった。

 死刑が確定している榛村から懇願され、雅也は裁判資料を読むことに。榛村は17~18歳の真面目そうな高校生23人を拉致拘束した挙句にリンチまで加えて殺害していたが、24人目の被害者だけは成人した女性だった。しかも、監禁せずにすぐに殺害している。秩序型殺人鬼・榛村にしては、違和感を感じさせるケースだった。

 榛村の担当弁護士・佐村(赤ペン瀧川)の事務所に勤めるアルバイト生として、雅也は事件関係者たちへの調査を独自に始める。調べていくうちに、榛村は幼少期に虐待されて育ち、人権活動家に引き取られて成人したことを知る。さらに雅也の母親・衿子(中山美穂)は、かつて榛村と接点があったことも分かる。それまで知らなかった社会のダークサイドや母親の意外な過去に触れ、雅也はますます調査にのめり込んでいく。

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