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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.688

実話をベースにした珠玉作『義足のボクサー』 世間の常識と闘う主人公が異郷で手にした自由とは

1Rノーカットで撮影されたリアルなボクシングシーン

実話をベースにした珠玉作『義足のボクサー』 世間の常識と闘う主人公が異郷で手にした自由とはの画像2
コーチのルディ(ロニー・ラザロ)は、ナオ(尚玄)を「私の息子」と呼ぶようになる

 フィリピン南部にあるミンダナオ島の港町ジェネラル・サントスの開放的な街の雰囲気が、本作にマッチしている。美しいビーチもあれば、街では小さな子どもたちのボクシングごっこまでも賭けの対象となっている。6階級制覇したマニー・パッキャオは地元出身のスーパースターだ。街全体のボクシング熱が高いことが伝わってくる。『あしたのジョー』の舞台となったドヤ街を彷彿させるものがある。

 警察組織の腐敗ぶりをリアルに描いた『ローサは密告された』(17)など、ブリランテ・メンドーサ監督はドキュメンタリータッチの劇映画を得意としている。本作でも尚玄がフィリピンに渡り、現地のキャストやスタッフの中に溶け込んでいく様子と、劇中のナオの闘いぶりがシンクロするような撮影スタイルとなっている。

 沖縄生まれの尚玄は、ベトナム戦争中だった日本復帰前の沖縄を舞台にした『ハブと拳骨』(08)に主演し、近年は日本とマレーシアとの合作映画『COME&GO カム・アンド・ゴー』(20)や新感覚の犯罪サスペンス『JOINT』(21)などで限られた出番ながら印象に残る役を任されていた。久々の主演映画に、尚玄の役者魂も奮い立ったに違いない。

 ルディのもとでトレーニングを続けたナオは、プロデビューの夢を叶えるためアマチュア選手との試練の3連戦に挑む。フィリピンのハングリー精神旺盛な若手ボクサーたちを相手に、ナオは全身全霊で立ち向かう。ハンディキャップを感じさせないナオの真っ直ぐなファイトスタイルは、地元のボクシングファンたちを熱狂させる。会場の熱気もぐんぐんと上がっていく。

 試合シーンも、メンドーサ監督らしくドキュメンタリーさながらの撮影だった。1ラウンド3分間を、尚玄はノンストップで闘い続けたそうだ。あらかじめ手を決めておくなどの段取りはなく、ガチのパンチの応酬だったらしい。リアルなファイトシーンを、3台のカメラで追っている。都内での試写会に姿を見せていた尚玄に、メンドーサ監督の演出について尋ねると「長回しの撮影は何が起きるか分からずスリリングでしたが、すごく楽しい体験でした」と笑顔で振り返ってくれた。(2/3 P3はこちら

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