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スタンダップコメディを通して見えてくるアメリカの社会#28

ベネディクト・カンバーバッチ「最高裁の人工妊娠中絶」判断に皮肉

ベネディクト・カンバーバッチが時代劇で皮肉ネタ

 当然、民主党の重鎮・チャック・シューマー上院院内総務とナンシー・ペロシ下院議長は連名でただちに声明を発表し、これらを批判した。そして、人工妊娠中絶の権利を連邦法で成文化する法案を11日採決にかけたが、共和党議員の反対票が上回り否決された。この問題が今後も政治的に大きな争点になることは明白で、11月から行われる中間選挙においても影響が予想される。現在インフレなどにより支持率の低迷が深刻なバイデン政権にとって、女性の権利を尊重する政策を強調することは有権者への大きなアピールとなるはずだ。

 これまでもウーバーやアマゾン、ゴールドマン・サックスなど多くの大企業が、前述の州法への抗議と女性社員の権利保護を表明し、中絶の禁じられた州から、認められている州への渡航費を福利厚生でカバーするなどの支援策を発表した。

 コメディを含む多くのエンタメ業界からも女性の権利を守ろうとする運動が起こっている。冒頭の『サタデー・ナイト・ライブ』でこの日司会を務めた、イギリス人俳優のベネディクト・カンバーバッチは胸に「ロー対ウェイド判決」が出された年でもある「1973」と書かれたTシャツを着てステージに立った。

 そして番組冒頭のオープニング・コントは、

「最高裁判所のアリート判事は、意見書において、13世紀のイギリスの法律を根拠に、女性の中絶の権利を認めた『ロー対ウェイド判決』を覆そうとしています」

というナレーションで始まり、13世紀のイギリス貴族を思わせるカンバーバッチが女性の、生殖権の統治法を従者たちと議論する内容。

「きっと1235年の今、この法律を作っておけばこの先ずっと使い続けることができるんだ」

と自信満々に語るカンバーバッチ。アリート判事が言う「伝統的な」価値観が、およそ800年前の極めて前時代的なものであることを痛烈に皮肉ってみせ、改めて番組のスタンスを明確に示した。

 そして、本来であれば司会のコメントで迎えるエンディングでは、ゲスト・バンドのアーケイド・ファイアが新曲『End of The Empire』を歌う中、「1973」のTシャツを着た出演者全員が互いにハグし合う異例の演出。

「私たちは、今が進むときだって知ってるんだ

ラジオから流れてくるニュースが聞こえる

今はきっと私たちが進む前の最終局面なんだろう」

 アメリカは進むのか、はたまた戻るのだろうか。

https://www.youtube.com/watch?v=Z1XKrgRhdT0

https://www.youtube.com/watch?v=mLMp-1NdzR8

Saku Yanagawa(コメディアン)

アメリカ、シカゴを拠点に活動するスタンダップコメディアン。これまでヨーロッパ、アフリカなど10カ国以上で公演を行う。シアトルやボストン、ロサンゼルスのコメディ大会に出場し、日本人初の入賞を果たしたほか、全米でヘッドライナーとしてツアー公演。日本ではフジロックにも出演。2021年フォーブス・アジアの選ぶ「世界を変える30歳以下の30人」に選出。アメリカの新聞で“Rising Star of Comedy”と称される。大阪大学文学部、演劇学・音楽学専修卒業。自著『Get Up Stand Up! たたかうために立ち上がれ!』(産業編集センター)が発売中。

Instagram:@saku_yanagawa

【Saku YanagawaのYouTubeチャンネル】

さくやながわ

最終更新:2023/02/08 11:16
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