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アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~

「朝倉未来のYouTubeメンバー脱退」アンチは企画の“必要悪”

必要悪を使うには、ケアも必要

 そして、2つ目は「アンチはのちにファンになりえる」ということ。

 アンチはなぜヘイト(アンチコメント)するのか? それはその対象に対して興味・関心を持っているからです。それが憎いとか嫌いという感情であったとしても、興味・関心の対象であるからこそ、攻撃を仕掛けるワケです。逆に、何も興味を持っていなければわざわざヘイトはしません。興味・関心があるからこそ、その対象への見方が変わる出来事があればファンに転じることがあるのです。

 これはドラマなどの設定でよくある“嫌い合っていた2人が1つのきっかけで恋に発展する”王道パターンに似ています。例えば、朝倉未来さんのアンチが「朝倉未来はいけ好かない。元不良のくせにお金を稼いでいる。ビッグマウスも鼻につく」と思っていたとします。その感情を原動力にYouTubeの動画をいくつか見ていったところ「あれ?朝倉未来って案外、友達思いなんだな」「ビッグマウスだけどそれは自分を追い込むためにやっているのかも」「大きいことを言うだけの努力もしているんだな」「負けた時はちゃんと負けを認める潔さがあるんだな」ということに気づいてくることがあるのです。そうなると、憎しみから一転、むしろ熱量の高いファンに変わります。これが秋元康さんやコムドットのやまとさんが「無関心よりもアンチの方がいい」という理由です。

 エンタメを作るうえでは、アンチなど存在せず、ただただ熱量の高いファンがいる状態を作ることが究極の理想でしょう。それに近いのが日本ではスタジオジブリ、ディズニーランド、大谷翔平、サンドウィッチマンなどでしょうか。(もちろんこれらの方々にもアンチは存在しますが)しかし、多くのエンタメにとっては、新規ファンの獲得や既存のファンの深化にとってあって然るべき存在。いわば必要悪です。

 だからこそ、時には関心を持ってもらうために、格闘家が世間から反発を受けるような発言・発信をしたり、バラエティ番組などで世間から反発を受けるような演出をあえてすることがあるわけです。

 ただ、今回の朝倉未来さんのメンバーの脱退やテラスハウスでの木村花さんの問題のように、それに関わる人たちの精神に支障をきたすことがあってはなりません。

「アンチを誘発する演出」は、あらゆるコンテンツ作りで用いられている手法だと思いますが、その際に関わる人たちの心のケアまでを設計して考えなければいけないのかもしれません。

 朝倉未来さんが動画の中でも話していましたが、最悪のケースに至らなかったことは不幸中の幸いだったのだと思います。

 企画というものを考えるうえでは、心に留めておくべき事案だと思い、記事にさせていただきました。それでは今日はこのへんで。

放送作家。松本人志・高須光聖がパーソナリティを務めた東京FMのラジオ「放送室」で行われたオーディションをきっかけに放送作家の高須光聖に師事。以降、テレビやYouTubeでさまざまな番組を担当。主な歴代担当番組は『くりぃむナントカ』『シルシルミシル』『めちゃ×2イケてるッ‼』『ガキの使い 笑ってはいけないシリーズ』『得する人損する人』『激レアさんを連れてきた。』『新しい波24』『1周回って知らない話』『ゴン中山&ザキヤマのキリトルTV』『GET SPORTS』『ヨロシクご検討ください』『青春高校3年C組』『今田×東野のカリギュラ』など。

Twitter:@kikakusouko

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ふかだけんさく

最終更新:2023/02/28 06:40
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