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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.697

ナチス体験者が語る『ファイナル アカウント』 怪物よりも恐ろしい存在とは?

文=長野辰次(ながの・たつじ)

ナチス体験者が語る『ファイナル アカウント』 怪物よりも恐ろしい存在とは?の画像1
ヒトラー率いるナチ党は、1933年から1945年までドイツ国民に支持され続けた

 この世界には、モンスターよりも恐ろしいものがいる。そんな現実世界に実在する、モンスターよりも恐ろしいものの正体を暴いてみせたのが、ドキュメンタリー映画『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』(原題『Final Account』)だ。第二次世界大戦中、600万人ものユダヤ人が大量虐殺された「ホロコースト」の目撃者たちの証言集となっている。

 アドルフ・ヒトラー率いるナチ党は、欧州全体にかねてより蔓延していたユダヤ人差別の風潮を巧みに利用し、ドイツ人の民族意識を煽ることで圧倒的な支持を集めるようになった。当初は政治犯を再教育するために建てられた収容所は、戦線の拡大と共に欧州各地に増築され、ユダヤ人、ロマ、身体障害者、同性愛者たちも強制収容されるようになっていった。

 当時、ナチ党を支持していたドイツ国民は、収容所で何が起きていたのかを知っていたのか? ユダヤ系の母親を持つ英国出身のルーク・ホランド監督は、祖父母を収容所で殺されている。「祖父母を殺した人間を捜す」という強い動機から、ホランド監督は本作を企画した。

 2008年から10年がかりでホランド監督は根気強く取材して回り、ドイツやオーストリアで暮らす戦争体験者たちをインタビューし、カメラに収めた。インタビュー数は250件に及んだ。ナチスドイツ時代を知る80代~90代の高齢者たちの貴重な声を聞くことができる。

 戦後のドイツでは反ナチス教育が行なわれてきたことが知られているが、ホランド監督はそんな一般常識を覆す、生々しい本音を戦争体験者たちから聞き出している。

 ナチス時代のドイツには正規のドイツ国防軍とは別に、志願者たちによって編成された「武装親衛隊」が存在した。その「武装親衛隊」にいた男性が、1938年11月に起きた「水晶の夜」を振り返る。ドイツだけでなく、ドイツの支配下にあったオーストリアやチェコスロバキアでも、ユダヤ人が経営する商店やユダヤ教の会堂であるシナゴーグが次々と破壊され、放火された大規模な暴動事件だ。この事件がきっかけで、ナチスドイツにおけるユダヤ人迫害が顕在化していくことになった。

 当時、まだ10代だった元「武装親衛隊」は冷静に語る。

「シナゴーグが燃えても、胸が痛むことはなかった」

 ユダヤ人が襲撃され、暴行を受けていても、ドイツ人の多くは気に留めていなかったことが分かる。(1/3 P2はこちら

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