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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.698

新藤まなみの初主演作『遠くへ、もっと遠くへ』 この夏はいまおかしんじ祭り!

「コロナ禍」がもたらした、意外な福音

新藤まなみの初主演作『遠くへ、もっと遠くへ』 この夏はいまおかしんじ祭り!の画像2
北海道を訪れた小夜子たちは、それぞれ思いがけない出会いを果たす

 いまおかしんじ監督は、林由美香が主演した『たまもの』(04)や、同作に続いて2年連続でピンク大賞を受賞した『かえるのうた』(05)などのピンク映画の傑作を撮ってきた。だが、ピンク映画には「製作費は一律300万円以内」という制約があり、ピンク映画時代には予算や制作日数のかかるロードムービーには手を出すことができずにいた。

 意外なことに「コロナ禍」がいまおか監督に福音をもたらした。今回の『遠くへ、もっと遠くへ』は、新型コロナウイルスによって困難になった文化芸術活動の再興を支援する文化庁の「ARTS for the future!」への申請が通り、助成金が降りている。普段の予算に助成金がプラスされたことで、いまおか監督は念願のロードムービーを撮ることが叶ったわけだ。

 東京近辺の見慣れた風景から一転し、北海道の雄大な光景が主人公たちの前に広がる。夜のススキノで3年ぶりに妻・光子と再会する洋平。光子は風俗嬢として、すでに自立した生活を送るようになっていた。光子は久しぶりに会っても、やはり美しかった。いい女だった。だが、3年の間に光子の心は、洋平の知らない別人となっていた。

 風俗店の半透明のカーテン越しの洋平と光子の会話は、『パリ、テキサス』のハリー・ディーン・スタントンとナスターシャ・キンスキーのやりとりを思わせ、とてもせつない。

 一方、新藤まなみが演じた主人公・小夜子は、ちょっと変わったキャラクターとなっている。歩くときはスキップし、会話には「やっほー」と合いの手を入れる。光子がすごく現実的な女性であるのに対し、小夜子はファンタジーの世界から現実世界に紛れ込んできたような不思議な女性だ。小夜子に合わせるかのように、洋平も路上や札幌のジンギスカン料理店で踊り始める。

 映画初主演となる新藤まなみも、今年6月に公開された『神は見返りを求める』では人気YouTuberを演じていた若手俳優・吉村界人も、いまおか監督のおかしな演出を楽しんで受け入れたようだ。

 街の景観が年々変わっていくように、生きている人間の心も変わっていく。少年や少女のような純粋さを持っていた洋平と小夜子は、人間はいつまでも同じままではいられないことを共に受け入れ、旅を通して少しだけ大人になる。青春期の終わりを惜しむかのように、2人は何度も何度もベッドで愛し合うことになる。(2/4 P3はこちら

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