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日向坂46齊藤京子とファーストコンタクトからの”実験場”

齊藤京子「肯定だけしてもらえればいいですよね」 ヒコロヒー「そうそうそう」

 コミュニケーションが成立し難い相手といかに意思疎通を図っていくか。手探りで一つずつメッセージを発し、相手がこちらの出方にどういう反応を返すかを確認していく。その反応に応じて、こちらの出方を調整していく。

 ティモンディ・高岸と周囲のやりとりは、まるでそんな地球外生命体と人類のファーストコンタクトを見ているような面白さがある。しかも高岸の場合、何度だって繰り返しファーストコンタクト、永遠のちぐはぐトークショーである。彼1人だけ「やればできる!」とタイムリープとかしてるのかもしれない。いや逆か。彼以外の人間がみんなタイムリープしてるのかもしれない。

 さて、コミュニケーションのちぐはぐさといえば、「おやすみ前のちぐはぐトークショー」を謳う番組『キョコロヒー』(テレビ朝日系)。2021年の春に始まった同番組は、齊藤京子(日向坂46)とヒコロヒーという“異色”の2人がお送りする深夜番組だ。

 初回の収録まで、お互いに会ったこともなかったという2人。そんな2人のファーストコンタクトは、とても“ちぐはぐ”なものだった。たとえば、「(友だちは)めちゃくちゃおるわけじゃないけど、決まった連中と長い間ずっと遊んでる」とヒコロヒーが語ると、「あ、同じです。私も。LINEの友だちが2桁ぐらいです」と齊藤が応じる。これにヒコロヒーが「わかる、私も」と同調する。が、齊藤は「え、ホントですか? へー、そんな人いるんだ」と突き放す。ヒコロヒーは「あんたもや」とツッコミを入れていた(2021年3月31日)。

 いや、改めて文字にして読み返してみると、齊藤の「へー、そんな人いるんだ」は、「(LINEの友だちが2桁ぐらいの人が自分の他にも)いるんだ」という意味なのだろうと理解できる。しかし、これを会話の流れのなかで聞くと、唐突なハシゴ外しのような「へー、そんな人いるんだ」に聞こえてしまう。

 そんなデコボコしたトークが繰り広げられてきた『キョコロヒー』。お互いが相手の言っていることがよくわからず、「え?」と何度も聞き返すような場面も何度かあった。

 が、番組開始から1年を超え、収録が繰り返されるなかで、そんな“ちぐはぐ”さも少しずつ調整されてきたように思える。お互いが同調する場面が増えてきた。2人の間には共通感覚、”キョコロヒー感“のようなものが共有されてきたように見える。

 たとえば3日の放送で、芸人の槙尾ユウスケ(かもめんたる)に番組で作ったパンを試食してもらう場面があった。槙尾は「普通にうまい」と言ったあと、「ただ、もうちょっと辛味とか足してもいいかもしんないね」と副職でカレー屋を経営している経営者目線でコメント。これを受けて2人は次のように言うのだった。

齊藤「こういうこと言うのもなんですけど、肯定だけしてもらえればいいですよね」
ヒコロヒー「そうそうそう」

 槙尾が帰っても2人の会話は続く。

齊藤「苦情だけ言ってカレー屋さん戻ったみたいな感じ」
ヒコロヒー「確かに。申し訳ないけどずっと頭の中に、でも(カレーの)店2個つぶしてんねやんなっていう」

 最初は2人の間にあった“ちぐはぐ”は、いつしか2人とゲストの間(あるいはスタッフとの間)に生じることが多くなっていた。当初の2人のデコボコなトークが減って少しさみしくもある。が、これはまたこれで、ファーストコンタクトから邂逅までの実験を見てきたようにも思える。

“ちぐはぐ”さを無理矢理に仕立て上げない。できるだけ自然な2人を見せている。そういうことなのかもしれない。自然な2人を見せてきたからこその当初の“ちぐはぐ”だったのかもしれない。「やればできる!」と永遠のちぐはぐトークショーを一方的に期待するのも、なんか違うしな。タイムリーパーがそんなにいても困る。って高岸も違うが。

※「テレビ日記」前回の記事

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2023/02/27 19:03
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