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『YOUは何しに日本へ?』YMOの最高傑作を探すマニア外国人一家のレコード旅、反抗期と離婚

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『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)TVerより

日本盤の帯付きレコードにこだわるマニアなデンマーク人

 8月8日放送『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)に、驚くような理由でデンマークからやってきた家族が登場した。

――YOUは何しに日本へ?
父 「イエロー・マジック・オーケストラのレコードを買うために。ユキヒロ・タカハシ、サカモトたちのね」

 やはり、ヨーロッパの人はテクノ好きが多い。デンマークからということは片道だけで数十万円かかるだろうに、レコードを探すためだけに日本へ来たのは筋金入りだ。あと、異国のファンが声に出す際、「YMO」と略さないのが新鮮。「ユキヒロ・タカハシ」だけフルネームなのも、愛を感じた。でも、リーダー「ハルオミ・ホソノ」の名前を出さないのはなぜ……?

 ところで、彼が狙っているお目当ての作品は何なのだろう?

「ラジオでYMOを初めて聴いた13~14歳のとき、すぐにレコードが欲しくなって、店に行って1枚だけ買えたのが『BGM』というアルバムで、その日本盤が欲しいんだ」(父)

 筆者も大好きなアルバムである。YMOの『BGM』と『TECHNODELIC』は、100年経っても色あせない傑作だ(ビートルズ『Rubber Soul』『Revolver』の関係性と瓜二つ)。それにしても、YMOの初体験レコードが『BGM』というのもマニアなチョイス。『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』ではなかったのだ。あと、デンマーク人の彼はスネークマン・ショー(アルバム『増殖』でYMOとコラボ)も楽しんで聴いているのだろうか? 日本語のコントを聴いても、ワケがわからないと思うのだけど……。

 もう1つ気になるのは、「すぐ見つかるだろう」という予測である。YMOは全アルバムが人気作。絶えず需要と流通が活発だし、ファミリー周辺はともかくYMO自体にレア盤は存在しない。このVTRの取材日は2017年2月だったのでまだサブスクは今ほど全盛ではなかったが(Spotifyの発祥は北欧)、だとしてもAmazonでサクッと見つかるはずである。日本に来ないと買えないような代物ではない。

「YMOが生まれた日本で、自分の足で探して手に入れることがファンの僕にとっては重要なのさ」(父)

 共感する。オークションや通販で十分買えるけども、それより過程が大事なのだ。彼はこだわりの塊だった。でも、気持ちはわかるが、この人はお金を持ってるんだな……。

 さらにもう1つ、彼には譲れないこだわりがある。

――ヨーロッパ盤と(日本盤の)中身は一緒ですよね?
父 「帯がある日本盤がカッコいいんだよ」

 やはり、コレクターなら帯付きだろう。こうなると、入手の難易度はグンと上がる。ただ、日本の中古レコードは保存状態がいいことで有名だ。彼には、ぜひ楽しい旅を満喫していただきたい。そして、その楽しさをみんなに共有したい。

――カメラで密着取材させていただけないかと思うんですけど、いかがですか?
「イエス! OKだよ」(父)

 テレビ局が密着するのだ。「もしや、サプライズでメンバーに会わせてくれるかも」と、彼は期待していたはずである。でも、残念ながらこのロケ隊はテレ東のクルーであった。

YMOの話ばかりする父の後ろで呆れている娘

 レコードを探す当日、スタッフは再びこの家族と落ち合った。また、20歳の息子さんが偉いのだ。事前に、レコード店のリストをまとめてくれたそうだ。

「ディスクユニオンが良さそうだ。中古レコードがたくさんあるらしい」(父)

 古いレコードならユニオンが基本である。筆者も中学生の頃から15年ほど、ユニオン北浦和店に通っていた。一方で、14歳の娘さんがあきらかに面倒くさそうなのだ。無理もない。この年頃でこんな趣味に興味を持っていたら異常だ。というか、彼女はレコードの再生さえできない気がする。

 渋谷に降り立った一行は、ディスクユニオンの店舗を発見した。

「ヘイヘイヘイヘイヘイヘイ! イエス……!! ディスクユニオンだ」(父)

 お目当てのレコードが見つかったわけでもなく、お店に着いただけで大興奮の父。看板を見つめ、感無量の表情で「イエス!」と噛み締めている。

 無情だったのは、父1人しか喜んでいない家族内の温度差だ。スタスタと階段を上がり、興味なしのテンションがだだ漏れの子どもたち。外国に連れて行ってもらい、極東の地でやらされる行為がレコード探しなのだ。どう考えても、退屈に決まってる。

 店内に入った父は、さっそく捜索を開始した。高速の指でレコードをまくる、マニア特有のアレを始めたのだ。かつては筆者もこういう場所に連日通っていたが、あの宝探し感覚はたまらなかった。現代は便利になったのでこんなことはやらなくなったが、振り返るとあの興奮は格別だった。

 興味深いのは、クラフトワークのアルバム『人間解体』やシングル『放射能』が飾られているのにそれらに見向きもせず、YMO探しに一心不乱な父の一途さである。一途すぎて、完全に子どもたちを置いてけぼりにしている始末だ。

 そして、ついにYMOのコーナーを発見した彼。しかし、ここには帯付きの『PUBLIC PRESSURE』1枚しか残っていなかった。渡辺香津美のギターが大人の事情で差し替えられたライブ盤だ。

「でも、これも良いレコードだよ! 1979年にイギリスとアメリカで行われたライブを収録した名盤さ」
「YMOの作品は本当に興味深いよ。見事に日本の伝統的な音楽とエレクトロニックが融合している」
「彼らのスゴさを物語るのにいい例として、YMOの『BEHIND THE MASK』をマイケル・ジャクソンがカバーしたよね。彼らの音楽が当時からハイレベルだったという証拠だよ」

 YMOのレコードが見つかった途端、YMOへの愛が溢れ出す父。言葉が止まらない様子だ。後ろにいる娘からは完全に呆れられているのに……。ちなみに「BEHIND THE MASK」は、マイケル側が「出版権を100%よこせ」と要求してきたものの、YMOが断ったという逸話があるいわく付きの曲である。

 さて、渋谷のディスクユニオンに『BGM』がないことは判明した。でも、父のレコード探しの手は止まる気配がない。しまいには、細野晴臣『はらいそ』を発見してしまったのだ。圧倒的に『BGM』より手に入りにくい1枚である。7,776円という高値だったが、せっかくだからこれも買っとくべきである。

 さらに、レコード探しの指は加速。ポップグループ『Y』、JAPAN『Gentlemen Take Polaroids』、高橋幸宏『四月の魚』、メトロファルス、サディスティック・ミカ・バンドと、次々にディグりまくる父。YMOだけでは収まらないから、こういうタイプは面倒くさい。ニューウェーブものばかり買っているし、筆者は彼といいお酒が飲めそうな気がする。

 その間、不愉快オーラを放出する娘の“勘弁してくれ感”が尋常じゃない。音楽に興味がない人からすると、ディスクユニオンは地獄だ。外国に来て探しものなんて退屈でしかないし、そもそも彼女は最初からつまらなそうだった。

 この年頃の女子なら、たぶん洋服に興味があるのでは? 渋谷だし、109に連れて行ってあげたくなった。もしくは、兄と一緒に向かいのゲームセンターで遊ばせておくのもいい案だ。子どもたちは別行動をさせ、存分にロスト・イン・トランスレーションさせてあげたかった。

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