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鬼越トマホーク、120分間の喜怒哀楽 ラジオで結婚報告した坂井の「不幸の上に成り立つハッピー」

20歳の坂井がブックオフの100円コーナーで買った本

 CMが明けると、坂井が結婚したゆみの夫人から電話がかかってきた。

ゆみの 「もぴ~? 奥さんだよ! のろけてくれ~!」
坂井 「ごめんね。申し訳ない」
ゆみの 「良ちゃん、ゆみのの好きなところ10個言ってくれ」
坂井 「3個しかない(笑)。小さいの10個じゃなくて、大きいの3個しかない」
ゆみの 「じゃあ、大きいの3個言ってコーナー行こう!」
坂井 「可愛い、面白い、可愛い(笑)。ハッハッハッハッハ」
ゆみの 「大好きー! イエーイ!」
坂井 「ごめんねー。ちょっと戻します! すいません」

 明るくて、いい奥さんじゃないか。番組を聴き、ブースの状況を察し、電話してきてくれたのだ。坂井は結婚をしてよかった。これで一気に、張り詰めた空気は変わった。

 とは言っても、そのままコーナーに全振りするわけじゃない。坂井は、やはり半生を語りたがった。

「これだけ言わせて、5分ぐらいで! 仲悪くて絶望的な一族に育ったっていうのはあるのよ。家族間の会話はゼロで、チャンネルの主導権も親父が何十年も握る。そんな生活の中、親父への恐怖もあって。で、親父は志村けんさんの笑いがすべてだったから、ダウンタウンさんをまったく認めなかったの。『下品だ』って言って。ダウンタウンさんをまったく見れない環境というか、AVみたいな感覚でさ、ダウンタウンに触れない思春期を育って、学校の話題にも付いていけずさ、溶け込めずにいたわけよ」

 その後、高校を卒業した坂井は実家のお金を頼りにプー太郎生活に突入した。アルバイトを始めてはすぐに辞め、友だちは1人もいなかった。

「それで20歳のときにブックオフに行ったとき、100円コーナーに松本(人志)さんの『遺書』があったの。小っちゃいときから『ダウンタウンを見ちゃいけない』みたいな家庭に育ったから、その『遺書』になんか惹かれる感覚があったんだよね。ずっと、興味があったし。(中略)松本さんも『父親と確執があって、見返そうと思って(お笑いを)やった』みたいな。そこに強く惹かれて」

 友だちはいないし、人前に立つのも苦手。人とコミュニケーションが取れなかった坂井だが、『遺書』を読んで3年が経過した23歳の頃、ついにNSC(吉本興業の芸人養成所)入学を決意した。

「『この人(松本)に会いたい』と思って、NSCに入ったのよ。それで、NSCに入って……お前と出会ったんだ、俺は。お前と出会ったときに、俺はもう、今だから言うけど、絶対にこいつだと思った。お前しかいないと思って、俺は……たぶんお前と組めば、ダウンタウンさんまでたどり着けると(泣)」

「1冊の100円で買った本で、お前まで運良くたどり着いてさ。いろいろやってきて、ダウンタウンさんまでたどり着いたじゃない。そのときに、俺は『この決断は間違いじゃなかった』と。それで、ゆみのっていう俺のことを好きになってくれる女性と出会ってさ。俺も『絶対、結婚なんかしないし、人の人生なんて背負えない』と思ってたけどさ、結婚するって決めて。内に秘めてたダウンタウンさんへの思いも、なんとか松本さんに出会えてさ」

 8月12日に婚姻届を出した坂井夫妻。その前日の11日は、鬼越が出演する『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)の収録日だったそうだ。

「みんなに(結婚を)言わないようにしてたけど、相方とマネージャーとダウンタウンさんだけには筋を通そうと思って」

「松本さんに挨拶したらさ、『おめでとう』って言ってくれてさ。『今度、お祝いしような』って言ってくれて。なんかそれで、田舎の古本屋で100円で買ったときを走馬灯のように思い出しちゃってさ。あの1冊がなかったらこんな人生歩めてなかった、お前も隣にいなかったしね。(NSCに)入ってよかったなと思ってさ。で、結婚もするし。こんな人生になると思わなかったなあ、あんな田舎の閉鎖的なところで20年ぐらいつらい思いをしてたのに」

 なぜ、坂井が一族の闇を話したがるのかがよくわかった。これは人前に出るのも苦手だった彼が、今、芸人をやっている根幹の話である。

 中盤まで張り詰めた空気だったのに、ゆみの夫人からの生電話を機にちゃんと届く言葉で話せるようになった坂井の変貌にも驚いた。ただ、芸人がアイドルに手を出したのではない。彼にとって、人生を変える出会いだったのだ。自分を押さえつけ、萎縮して育った人間が、こんなに幸せになれるなんて思わなかった。結婚して、彼は本当によかったと思う。そして、ゆみのさんからの電話を機に、オープニングとは違う意味で惹き付けられるラジオになった。

 かつて、お笑い芸人を目指す若者たちにとって“生い立ち”はある種の通行手形だった。松本には貧しい幼少期があったし、ビートたけしには「貧乏」だけでなく「実家がペンキ屋」というコンプレックスもあった。そして、坂井の持つ「一族の確執」「閉鎖的な田舎育ち」という要素は、昔ながらではない現代的なそれである。そういう意味で、彼はこの世代の芸人の中で刮目に値する存在だと思うのだ。

 そして、金ちゃんの存在だ。坂井が口にした意味とは違うだろうが、相方が金ちゃんじゃなければ、絶対こういうラジオにはたどり着けなかった。「父は演歌歌手」「元子役」という境遇は、彼の人生に暗い影を落としたこともあると思うのだ。しかし、それをおくびにも出さない金ちゃんという存在に逆に興味が湧く。自身をメンヘラと認める坂井を包み込む忍耐力といい、こんな人間はなかなかいない。

「俺、思った。俺って、たぶんお笑い芸人として才能はないんだけど、良ちゃんと組む才能だけはあるわ」(金ちゃん)

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