世界は映画を見ていれば大体わかる#38

『ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男』やっぱり裏にあった血なまぐさい逸話

「凍り付くように恐ろしい家族の物語」

 パラマウントの業績は悪化し続けていた。ミュージカル映画の不振が響き、会長は「『ローズマリーの赤ちゃん』だけじゃ足りない」とエヴァンスにさらなるヒット作を要求。エヴァンスは再びベストセラーの映画化『ある愛の詩』の制作途中であったが、プロデューサーとして売り込みにやってきたラディを認めて「一年でヒット作をつくれ」と「断れない提案」をする。

 ラディは当時の若手スター、ロバート・レッドフォードを撮影現場に直接会いに行って口説き落とすという、当時のハリウッドでは掟破りのやり方でバイク映画『俺とお前』を完成。しかしこの映画はヒットしなかった……。

 プーゾの『ゴッドファーザー』の映画化権をめぐって、パラマウントとワーナー・ブラザーズは激しく競り合っていた。ワーナーの老獪なボス、ジャック・ワーナーはブルドーンに「100万ドルでウチに売れ」と交渉。これはパラマウントにとって「決して断れない提案」のはずだった。何もしないで金が手に入る。しかしエヴァンスは

「この本はすげえ売れています。最高に面白いですよ」(実はこの時、エヴァンスは読んでもいないのに適当なことをいっていた)「この映画で業界No.1になれるのに売るだって? ありえない」

とブルドーンを焚き付け、パラマウントは『ゴッドファーザー』の制作を決定。しかしエヴァンスに任されたのは400万ドルという低予算で製作すること。そこでエヴァンスは『俺とお前』の失敗に喘ぐラディに託す。「決して断れない提案」を。

 メインのプロデューサーとして会長に認められるため、ラディはプレゼンに挑む。「こいつはどんな映画だ?」と聞く会長にラディは長い間押し黙ってやがて口を開く。

「凍り付くように恐ろしい家族の物語」

 ……ラディは『ゴッドファーザー』のプロデューサーに決定。

 脚本は原作者のプーゾ、監督はこの時まだ玄人筋に評価されていたがヒット作に恵まれていないフランシス・フォード・コッポラ(ダン・フォーグラー)に決定。すべては順調なはずだった。ところが、思いもよらない妨害が入る。

 ベストセラー小説『ゴッドファーザー』を快く思っていない人々がいた。ニューヨークを根城にするイタリア系マフィアの5大ファミリーのボスたちだ。『ゴッドファーザー』を「イタリア系を蔑視する差別作品」として糾弾し、映画の製作をやめさせようとする。

 糾弾の先頭に立ったのは新しくファミリーのボスに就任したジョー・コロンボ(ジョバンニ・リビシ)だ。イタリア系アメリカ人市民権連合会という団体を設立、イタリア系移民への風当たりを和らげようとしていたジョーはラディやエヴァンスに嫌がらせをはじめる。ジョーの背後で妨害を示唆していたのは歌手のフランク・シナトラだ。

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