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スーパー・ササダンゴ・マシン"流行"を考える〈ポップカルチャー生涯学習〉

『ハイロー』を観たプロレスラーはなぜ溜息をこぼすのか──監督・平沼紀久に聞くLDHエンタメの真髄

文=スーパー・ササダンゴ・マシン(マッスル坂井)

『ハイロー』を観たプロレスラーはなぜ溜息をこぼすのかーー監督・平沼紀久に聞くLDHエンタメの真髄の画像1
写真=石田寛(以下同)

K-POP、2.5次元、タピオカ、韓国ドラマ…etc.「流行る」カルチャーには理由がある! DDTプロレスリングのレスラー兼タレント兼新潟県の金型工場「坂井精機」代表取締社長のスーパー・ササダンゴ・マシンが、世の中の流行を眺めながらプロレスとDDTの未来を考える連載。

今回は連載特別編として、公開中の映画『HiGH&LOW THE WORST X』で監督を務める平沼紀久氏をお招きして、大人気「ハイロー」シリーズをさまざまな視点から語り合います。

前編はコチラ

第4巻『ハイロー』と『トップガン マーヴェリック』を観ればプロレスを作れるの回

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平沼紀久(ひらぬま・のりひさ)1976年10月21日生まれ、神奈川県出身。2000年に俳優デビュー。劇団の立ち上げなどを経て、2018年『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』で映画監督デビュー。

スーパー・ササダンゴ・マシン(以下、ササ) 少し前に、ケンドーコバヤシさんと会う機会があったんです。そこで「いまHiGH&LOWにすごいハマってるんですけど、ケンコバさん見たことありますか?」って聞いたら「いやぁ……どこの世界に、ハーレーダビッドソン乗ってる暴走族がいるんですか」って言われたんですよ(笑)。

平沼紀久氏(以下、平沼)(笑)

ササ でもそれって、不良マンガに対するリスペクトがめっちゃあるから出てくる言葉じゃないですか。だから「いや、ケンコバさん、違うんですよ」と。「最近のHiGH&LOW、すごいことになってるんです。前作だと、ライバルとしてあの“殺しの軍団”鳳仙学園が出てくるんですよ!」って言ったら「えぇ……!?」ってなって。「続編にあたる最新作では、当然鳳仙と組んでさらなる大きな敵と戦っていくわけで」「それはそうやなぁ」「多勢に無勢でピンチになる」「そうやなぁ」「敵役にはK-POPのスーパースターがいたりして」「勝てんでしょう!」「ここで出てくるのが、鈴蘭高校なんですよ……!」って言ったら、タバコの灰がポトッと落ちて「見んとあかんやないですか!!」って言ってました。

平沼 最高ですねぇ。

ササ おじさんは「鳳仙学園」「鈴蘭高校」って言われたらタバコがポロッとなるんですよ(笑)。今、そういう不良の世界の大河ドラマみたいな作品は減ってきていますよね。「HiGH&LOW」を観て、そこをLDHが全部背負ってるんだなと感じました。格闘技やプロレスの試合の構成とも、ハリウッド映画のバトルの構成とも違う、ウェットな殴り合いって日本の不良モノの中にしか存在しないと思うんです。平沼さんももともと不良モノはお好きだったんですか?

平沼 好きでしたね。『(疾風伝説)特攻の拓』とか『カメレオン』とか『湘南爆走族』とか、めちゃくちゃ読んでました。小栗くんの『クローズZERO』も好きで、でも僕は小栗くんよりもちょっと歳が上なんで、あそこには入れなかった世代なんですよ。

ササ 制服が着れなかったと。

平沼 着れなかった(笑)。「いいなぁ」と思ってました。

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スーパー・ササダンゴ・マシン:1977年11月5日生まれ、新潟県出身。DDTプロレスリング所属。主催興行「マッスル」シリーズでは総合演出を担当。通常のプロレス興行とは一線を画したエンターテインメント性の高い内容で話題を呼ぶ。

ササ 不良モノをやりたいというのは「HiGH&LOW」立ち上げ時から念頭にあったんですか?

平沼 不良うんぬんより、HIROさんが最初から言っていたのは「中学生たちのバイブルになるものにしたい」ということでした。“普通”のレールからはみ出している人たちがかっこよく見えることってあるじゃないですか。「あの先輩が着てる洋服超かっこいい、どこで売ってるんだろう」「あのバイクめちゃくちゃかっこいいな、どこのなんだろう」とか。かっこいいものに憧れるって、そういうところから始まると思うんです。だから「いま一番かっこいい洋服はこれだよ」「いま一番かっこいいバイクはこれくらい改造してるやつだよ」って、映画を観たら一目瞭然でわかるようにしてあげたいという考えが最初にあったんです。リアルを追求すると、ケンコバさんがおっしゃるように「お金ないのになんでハーレー乗ってるんだよ」「なんでサンローラン着てるんだよ」ってなるじゃないですか。実際、髙橋ヒロシ先生からも最初は「みんな不良でお金ないんだから、タンクトップにドカジャンが基本だよ」と言われたんですけど、そこは「もっとこういうものを見せたいんです」と説明させていただいたところでした。

ササ 髙橋先生とそこまでのやりとりもされるんですね。あらゆる面で交渉と調整が本当に大変だったんだろうなと想像はしていましたが……。

平沼 そうですね。楽曲ひとつつくるにしても、僕ら演出チームからするとロックで爆アゲなやつが欲しいと思う場面でも、音楽のプロからしたら「ここは今の流行りを考えると、ヒップホップのほうがいいです」「中でも、この感じの音がいいです」という意見があったりするんですよね。今かっこいいとされているものがなんなのか、そこはプロの人たちの意見が必要なんです。一方で、ヒップホップがベースになるとBPMが遅くなって、テンポ含めて画のつなぎ方が難しくなるという課題もあって。

ササ 音楽もファッションも、一流のプロの方が携わっているんでしょうけれど、全部が全部その言いなりになっていない感じはすごくしました。

平沼 そこもせめぎ合いですね。一種類の「かっこいい」だけだと時代に遅れちゃう気もするんです。だから「これまではこの楽曲をこう使っていたけど、今はどういう形で使うのがいいのかな」というのも考えていかないといけない。監督をやって、本当に勉強になりました。

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