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長澤まさみ『エルピス』は“超骨太”社会派ドラマ 「森友」「副総理」にどよめきも

文=東海林かな(しょうじ・かな)

長澤まさみ『エルピス』は“超骨太”社会派ドラマ 「森友」「副総理」にどよめきもの画像
ドラマ公式サイトより

 長澤まさみ主演のフジテレビ系月曜ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』が10月24日にスタートした。「大洋テレビ」というテレビ局を舞台に、スキャンダルでエースの座から転落した人気アナウンサーと自己評価ばかり高い若手ディレクターが殺人事件の冤罪疑惑を追う、社会派エンターテインメントだ。

 第1話「冤罪とバラエティ」は2018年、映画撮影現場への取材シーンからはじまった。若手ディレクターの岸本拓郎(眞栄田郷敦)は、深夜の情報バラエティ番組『フライデーボンボン』を担当していた。インタビュアーは、浅川恵那(長澤まさみ)だ。かつてはゴールデンタイムの報道番組『ニュース8』でサブキャスターを務めるなど大洋テレビきっての人気女子アナだったが、週刊誌に路上キスをスクープされたことでエースの座から転落し、社内で“制作者の墓場”と揶揄される同番組でコーナーMCを務めていた。

 貼り付けた笑顔で中身のない情報を垂れ流し、同じく報道から左遷されてきたプロデューサーの村井(岡部たかし)のパワハラ・セクハラを無表情で受け流す浅川。そんな日々を打ち破ったのは、切羽詰まった様子で自分を呼び止めてきた岸本だった。岸本が「深刻な相談」をしたいと頼み込まれ、話を聞かされたのは、10年以上前に起こった八頭尾山連続殺人事件の犯人として逮捕された松本(片岡正二郎)が冤罪なのではないかというものだった。2年前に最高裁で死刑判決が下されており、またキャスター時代の苦い経験から「関わりたくないんだ。だから(話を詳しく)聞きたくない」「ぶっちゃけ、もう懲りてんだよね、冤罪」「君も諦めたほうがいいよ、悪いこと言わないから」と一蹴する浅川。それでも食い下がる岸本に、浅川は仕方なく「じゃあ、だめもとで。報道に持ち込んでみれば?」と助言を送り、報道の同期を紹介してやるのだった。

 しかし報道部では「時間ない」「調査報道なんか今どき誰もやんないって。そんな暇ない、ない」とあっさり追い払われてしまった岸本。愚痴を聞かされた浅川は「だろうね。誰も自分たちが報道したことの責任なんて振り返りたくないんだよ。だから報道ってみんな、必要以上に『忙しい、忙しい』って時間ないふりして……」と皮肉る。困った岸本だったが、偶然にも入社時に指導担当だったエース記者・斎藤正一(鈴木亮平)と鉢合わせる。過去に斎藤が八頭尾山連続殺人事件の取材をしていたことを知り、翌日、斎藤に話を聞いてもらう約束を取り付けた岸本は、浅川にも同席を求める。斎藤の名前にアナウンス部が静まり返り、浅川も「忙しい」と渋るが、それには理由があった。斎藤は浅川の元カレで、斎藤こそあの路上キスの相手だったのだ。社内の人間関係にまったく興味のない岸本は、それでも無邪気に淺川を誘う。

 翌日、なかなか淺川が姿を見せない理由を斎藤から聞かされ、気まずくなる岸本だったが、結局、浅川は律儀に姿を現した。しかし、岸本の相談を聞いた斎藤は、最高裁判決が出ており、「日本の警察と検察と裁判所の威信」がかかっているため、覆せる可能性はゼロと一刀両断。それでも「いかに可能性がないかじゃなくて、どうすればあるかを斎藤さんに教えてもらいたい」と食い下がる岸本のガッツに応え、弁護側が再審請求を出しているため、冤罪疑惑の調査報道を行い、メディアで特集を組んで世論の空気を再審に傾けることができれば、裁判所も動かせるのではないかとアドバイスする。

 だが、岸本の担当番組は深夜のバラエティ。企画が通る可能性は薄い。それでもダメ元で特集企画を提案することを決意した岸本は、懲りずに浅川に相談を続ける。根負けした浅川は「失敗したらその人、普通に死刑になるよ。それを受け止める覚悟、できてる?」と問いかける。神妙に頷く岸本を見て、浅川は協力する覚悟を決め、企画書を一緒に練り上げるのだった。

 プロデューサーの村井は元報道ということで一縷の望みをかけたが、「お前ら 『フライデーボンボン』を何だと思ってんの?」と、やはりあっさりと突き返されてしまう。それでも調査報道の意義を訴える岸本に、村井は「闇にあるもんってのはな、それ相応の理由があってそこにあんだよ。お前らごときがおもちゃみてぇな正義感で手ぇ出していいようなことじゃねぇんだよ!」「冤罪を暴くってことは、国家権力を敵に回すってこと。分かる?」とまくし立てる。岸本はすっかり萎縮して黙り込むが、浅川は黙っていられなかった。「分かりません」と啖呵を切るが、そんな浅川の顔色は悪く、様子がおかしい。「私はもう……分かり……たくありません! そういう理屈は……おかしいものは……」と言いながらも後を続けることができず、トイレへ駆け込み嘔吐する。浅川はスキャンダル以降、ストレスによる摂食障害と睡眠障害を患っていた。

 岸本の熱意に引っ張られるような形でかつての情熱を取り戻し始めた浅川は、「私、やるから。このネタ。やるよね?」と、冤罪疑惑を追う覚悟を決めたことを岸本に伝えるが、一方の岸本は「僕、ちょっと甘かったな~って」とすっかり熱意をなくしていた。実は、岸本は正義感から動いていたのではなく、 『フライデーボンボン』の出演者に手を出してはいけないというルールを破って口説いてしまい、その録音データをネタにヘアメイクのチェリー(三浦透子)に脅されていたのだ。そして冤罪疑惑を追及するというのが、データの交換条件だった。つまりは「自分を守りたかっただけ」だったと告白する岸本。「僕、そういう男なんです」と自嘲する岸本に、吐き気を飲み込んで頬をぶつ浅川。「私はもう飲み込めない、これ以上」「飲み込みたくないものは、飲み込まない! でないと、もう……死ぬし、私」と言い捨ててその場を去るのだった。

 岸本は、自分をけしかけたチェリーに事の顛末を話す。万事尽くしたと言わんばかりの岸本に、チェリーは左手に残る火傷の跡を見せる。チェリーは、八頭尾山連続殺人事件の犯人として逮捕された松本の家にたまたま居合わせた家出少女だった。少女ばかりが狙われた事件だったため、松本が少女をかくまっていたことで、メディアが松本犯人説を騒ぎ立て、警察がそれに突き動かされてしまった。チェリーは家で内縁の父親に虐待されており、たまらず家を出て、松本に保護されただけだった。「あのとき私さえいなければ」という後悔を抱いて生きてきたチェリーは、なんとか松本の無実を晴らしたいと思っていたのだ。泣き出してしまった岸本に、チェリーは「もういいっすよ」と慰め、データを引き渡す。そのさなか、行方不明になっていた中学2年生の少女の遺体が八頭尾山で発見されたとの速報が入る。殺人事件として捜査されるとの報道に、「またやったんすよ」とチェリーは呟くのだった。

現実に肉薄する骨太の社会派ドラマ

 15分拡大の第1話は、ドラマのスタンスを強く印象づける内容になっていた。特筆すべきは、冒頭にあった「このドラマは実在の複数の事件から着想を得たフィクションです」という告知と、エンディングに9冊もの参考文献がクレジットされていた点だろう。実際、テレビ報道への皮肉、テレビ局内へのバラエティと報道のカーストなど、現実世界を多分に意識したような脚本・演出となっている。

 特に終盤で登場した大門雄二副総理(山路和弘)の演出に、SNSはざわめいた。特徴的な帽子とダミ声、そして「副総理」の肩書は、明らかに衆議院議員の麻生太郎氏を思わせた。生出演した『ニュース8』ではキャスターの名前を呼び間違える場面もあったが、これも麻生氏のエピソードを彷彿とさせる。さらに、生出演のためスタジオに向かう大門に対し、官邸キャップである斎藤が「森友、止めてますので」と意味深な説明をする場面も。ドラマでは浅川が、キャスター時代について「冤罪ってマジで大変だよ? 蒸し返されるとまずい人がいっぱいいて、そういう人がやたら圧かけてくる。上からよくわかんない理由で表現曲げさせられたりとかさ」と振り返っていたが、視聴者からも「最後まで圧力に負けず、飲み込まずにいってほしい」「圧力かからないか心配……頑張れカンテレ」といった心配と声援の声も飛び出している。

 脚本を担当しているのは、『ワンダーウォール』『今ここにある危機とぼくの好感度について』(ともにNHK)など、近年、社会派の作品を立て続けに手がける渡辺あや。渡辺と長年に渡り企画を温めてきたのは、『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)や『17才の帝国』(NHK)のプロデューサーを務めた佐野亜裕美である。いずれの作品も社会への鋭い眼差しが光るが、『エルピス』はそれ以上に際どい社会の深淵に切り込むものとなりそうだ。登場人物が歪んだ真実をどう追いかけていくのか。第2話は、10月31日22時から放送だ。

■番組情報
月曜ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—
フジテレビ系毎週月曜22時~
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原 善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平 ほか
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
主題歌:Mirage Collective「Mirage」
プロデュース:佐野亜裕美、稲垣 護(クリエイティブプロデュース)
演出:大根 仁、下田彦太、二宮孝平、北野 隆
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作・著作:カンテレ
公式サイト:ktv.jp/elpis

東海林かな(しょうじ・かな)

東海林かな(しょうじ・かな)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

最終更新:2022/10/31 12:00

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