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宮下かな子と観るキネマのスタアたち49

『あのこは貴族』他者の外側ばかりに目を向け判断される世界の中でどう生きるか

『あのこは貴族』他者の外側ばかりに目を向け判断される世界の中でどう生きるかの画像1
文・イラスト 宮下かな子

「好きなタイプは?」と質問されることは公私ともによくあるが、いつも、無難な答え方だよなぁなんて思いつつ、「家族思いな人」「リスペクトできる人」とか、最近だと「食べることが好きな人」とか。いろいろ答えてきた。だけどいまいちパッとしなくて毎回その質問をされると、もっと私らしい答え方ないかな、なんてゆるゆる探していたんです。

 そんな私、とある映画を観ていた時に〝こんな男性は絶対に嫌だ!〟な会話に出会いまして。それが、トマト育ててみたい、という妻の言葉に、「買ったほうが早くない?」と言う夫。

 私、これ言われたら絶対に嫌だ。つい先日、4月に仕込んだお味噌が半年かけてようやく完成したのですが、手作り味噌を「買ったほうが早くない?」って言われたらすごくショック受けます。

 手作りの温もり感がある物や、作る過程を楽しむことが好きな私からしたら、それを理解してもらえないと無理だなと。それが第1条件かもしれないと、映画を観ながら思いました。

 もし相手も〝作ることが好きな人〟だったら、一緒に楽しめて、きっと大鍋3つ分の大量の豆を笑顔で潰してくれるんじゃないかなと思うけど、きっと男性は面倒に思う人が多いだろうから、そこまでは求めませんので笑) 。せめて、作ることが好きな私を理解してくれる人だったら嬉しいな。映画鑑賞しながら長年の小さなモヤモヤが解決されました。

 さて、今日はその会話が登場した作品をご紹介。岨手由貴子監督の『あのこは貴族』です。昨年豊作揃いだったのに見逃していた作品たちが、ちょうど今配信が始まっていて本当に有り難い。気になった方は、是非に。

〈あらすじ〉東京生まれの箱入り娘・華子(門脇麦)は、結婚を考えていた彼と別れ、相手探しに奔走。家柄の良い弁護士・幸一郎(高良健吾)との結婚が決まり、順風満帆だったが……。一方、地方出身で名門大学の入学を機に上京してきた美紀(水原希子)は、学費がなく夜のバイトを始めるも大学中退。そんな華子と美紀が、思いもよらぬ形で出会って……。

 原作は私も大好きな山内マリコさん。他作品『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎文庫)では、山内さんの出身地・富山県を舞台に、地方生活の窮屈さを描いていますが、今作も東京と地方が対比として描かれていて、家柄や出身、職業等によって線引きされる社会に焦点を当てたお話です。

 地方出身の私としては、共感できることがとても多くて。大学が都内の私立女子大だったのですが、都内出身の実家暮らしの子が大半を占めていて、ただでさえ違いを感じるのに、中には内部生のしっかりお嬢様もいたりして。

 入学当初はグループでわいわいしていたけど、徐々に窮屈に感じるようになって、後半は図書館で1人でお昼を食べてたな。大学時代の自分を思い出しました。

 劇中、親からの援助が困難になっても、それでもどうにか、努力して辿り着いたその場所に食らいつこうとする美紀の意思が、内部生の優雅な姿を遠くから見つめる横顔から感じられて。美紀を演じる水原希子さんの、内側から溢れる強さがとても美しかったな。

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