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『関ジャム』2022年ベスト10で躍進!水曜日のカンパネラ新ボーカルの功績

『関ジャム』2022年ベスト10で躍進!水曜日のカンパネラ新ボーカルの功績の画像1
『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)TVerより

 1月22日の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)にて、年始の恒例企画「プロが選ぶ2022年マイベスト10」が放送された。

『関ジャム』を見ること自体、ものすごく久々な気がする。なにしろ年末年始特番の影響で、ようやくこの回が2023年の初放送だったのだから。

 昨年の選者は、作詞家・いしわたり淳治、音楽プロデューサー・蔦谷好位置、音楽プロデューサー・Yaffleの3人だったが、今年の選者にYaffleはいない模様。昨冬からずっと藤井風のツアーに付いており、難しかったのだろう。新メンバーとして、今回はシンガーソングライター・佐藤千亜妃が加わった。

なぜ、若手ミュージシャンは腹から声を出さないのか

 最初にマイベストを発表したのは、いしわたりだ。彼が選んだ5~10位は以下である。

5位:YONA YONA WEEKENDERS「考え中」
6位:今市隆二「辛」
7位:imase「Have a nice day」
8位:サカナクション「ショック!」
9位:idom「i.d.m.」
10位:なとり「Overdose」

 毎度のことだが、“今”を感じた。例年、なとりのように顔出しをしないアーティストは必ずランクインする。昭和生まれの筆者みたいな老害からすると、そこが思い入れしにくい点なのだが、理解はできる。いわば、この人たちがボカロを見て育ったネイティブ世代。だから、なとり世代が顔出ししないのは自然なことだと思う。

 あと、今年のランキングを見て特に強く思ったのは、お洒落でエモくてチル系の曲が多いことだ。偽悪的に表現すると、みんな腹から声を出していない。理由はわかる。多くの若手が宅録をしているからだ。
 
 例えば、7位のimaseはその典型。音楽活動わずか1年で、TikTokに投稿したオリジナル曲の総再生数が12億回を突破した新星である。いち音楽リスナーだった若者が2020年に楽器を始め、2021年に作曲を始め、その年末にはメジャーレーベルと契約……という、奇跡の道を歩んできている。

「今回選んでて、『彗星のように現れる』という現象が2022年は重要だった気がします。というのも、彼は3年ぐらい前に楽器を初めて触り、作曲を始めたんです。この3年がなんだったかというと、ざっくり言うとコロナ禍なんですね。巣ごもり需要で、楽器がすごく売れた3年間だったんです。彼のように楽器を始めた人は日本中にたくさんいると思うんですよ」(いしわたり)

 そして、ついにはポカリスエットのCMソング(imase with PUNPEE&Toby Fox「Pale Rain」)を手掛けるまで至った。昨今は、メジャーになるまでのスピードがとみに早い。ネット発信でバズれる時代ならではの速度だと思う。巣ごもりの日々が音楽に還元されたわけだ。

 逆もまた、言えると思う。新曲の拡散力は、たしかにすごい。しかし、サブスク全盛の今、多くのリスナーは曲の消費(聴き捨て)に慣れてしまっている。この状況で、若いミュージシャンが生き残るのは至難の業だろう。彗星のように現れたとしても、彗星のように消える可能性も高いのだ。ミュージシャンにとって、可哀想な時代とも言えると思う。

 そんな中で目を引いたのは、押しも押されぬメジャーバンド、サカナクションの8位へのランクインだ。イメージとして、このバンドはずっと売れている印象がある。さらに、「ショック!」は映画『ルパンの娘』の主題歌だった。メジャーの貫禄をこれでもかと発しまくっている。

 面白いのは、この曲のリズムである。明らかに、トーキング・ヘッズとじゃがたらを想起させるのだ。加えて、「ショック!」という歌詞はいかにも、いしわたり好み。ついでに言えば、6位の今市隆二「辛」も、いしわたりが好きそうな歌詞だ。というか、まるで秋元康の歌詞みたいに聴こえてしまった。三代目 J SOUL BROTHERSのメンバー・今市まで、気だるいチル系の曲を歌っているのも興味深いし。やはり、2022年はそういう流れだったのだろう。

水曜日のカンパネラが新ボーカル加入で超パワーアップ

 続いてマイベストを発表したのは、佐藤だ。今回、彼女が選んだ5~10位は以下である。

5位:水曜日のカンパネラ「エジソン」
6位:Kep1er「WA DA DA」
7位:UA「お茶」
8位:NAYEON「POP!」
9位:a子「太陽」
10位:chilldspot「BYE BYE」

 正直、今年のランキングを見ると、知らないアーティストのランクインが多かった。関ジャニ∞・横山裕は「俺、何も知らんわ……」と口にしたが、彼は大半の視聴者の気持ちを代弁していたと思う。

 筆者も同じである。だから、ちょっと流し見気味に『関ジャム』をチェックしていた。しかし、ある瞬間でハッとした。7位にUAがランクインしていたのだ。初期のUAはよく聴いていたけれど、次第に彼女は難解な方向へ向かっていった。筆者はいつしかUAから離れてしまったが、2022年のUAはかなりポップになっていたようだ。

「お茶」という曲は、至極キャッチーである。なにしろ、サビの出だしの歌詞が「お茶!」なのだ。なんて、キャッチーなのか!

「『お茶』がサビの頭にきたの、たぶん初めてじゃないですか? これ、最高じゃないですか(笑)」(いしわたり)

 いや、本当に。しかも、歌っているのはUAである。1998年リリースのシングル「ミルクティー」を経て、2022年に「お茶」を発表した……という壮大な流れに、ニヤっとした。ただ、野暮なことを言うと、2022年のUAなら「お茶」よりも「微熱」のほうが個人的には好みだ。

 そして、5位には水カンがランクイン。この曲は確実に入ってくると思った。TikTokで流れまくっていたし、中毒性が半端じゃない。脳裏から「エジソン」が離れない時期が、たしかに筆者にもあった。

 何がいいって、脱退したコムアイの代わりに加入した新ボーカル・詩羽である。ボーカルが彼女に変わった途端、水カンは綺麗にハイパーポップ化し、見事にシンセポップの良曲を生み出した。

 これはあくまで、個人的な意見だが……はっきり言って、コムアイの頃よりはるかにいい。パワーアップしすぎるくらいにしている。新ボーカルが参加した最初の曲で、いきなり先代を超えてしまっているのだ。水カンのトラックメーカー・ケンモチヒデフミが、いろいろ変えてきたのも伝わってきた。

「ケンモチヒデフミは相変わらずすごいですね、天才ですね」(蔦谷)

 天才だと思う。彼がプロデュースした、ばってん少女隊「YOIMIYA」も素晴らしかったし、ケンモチがタカアンドトシ&みちょぱに提供した「恋のスパイスカレーeeeee!~ナンはおかわり自由です~」も最高だった。

モーニング娘。×レディオヘッド=米津玄師?

 最後にマイベストを発表したのは、蔦谷だ。極論を言うと、このランキング企画は、実質的に蔦谷のソロ企画と捉えていいと思う。彼のランキング発表こそが、本番。ただ、おなじみ“ヒゲダン大好きおじさん”だけに、今年もどこかでOfficial髭男dismを入れてくる気がしないでもないが……。

 蔦谷が選んだ5~10位は、以下である。

5位:和ぬか『青二才』(アルバム)
6位:米津玄師「KICK BACK」
7位:Mori Calliope「MERA MERA」
8位:yonawo「tokyo feat. 鈴木真海子、Skaai」
9位:水曜日のカンパネラ「エジソン」
10位:和久井沙良「Escape(feat.mimiko)」

 蔦谷の9位も、水カンの「エジソン」だったようだ。まあ、そりゃ被るか……。それだけ、魅力的な曲だったということだ。

「日本でボーカリストが変わって成功する例はすごく稀ですが、その至難の業を水曜日のカンパネラは成し遂げました。Dir.Fの慧眼、ボーカリスト詩羽の度胸と覚悟、そしてケンモチヒデフミの才能が爆発しています」(蔦谷)

 たしかに。海外にはIRON MAIDENやAC/DCなどもいるが、日本に限定すると成功例はグッと減る。せいぜい、オメガトライブ、WANDS、EXILE……くらい?

「いやぁ~、すごいなと思いました。ボーカリストが変わるって……しかも、コムアイさんには、あれだけのカリスマ性があって。(コムアイは水カウの)アイコンじゃないですか? でも、ちゃんとその匂いを残したままアップデートしてますよね。本っ当に素晴らしいと思います」(蔦谷)

 そして、6位には米津玄師がランクイン。やっぱり、「KICK BACK」もきたか! 人気アニメ『チェンソーマン』(テレビ東京系)のために書き下ろされたこの曲には、編曲・共同プロデュースとして常田大希が参加している。

「米津玄師と常田大希という、とんでもないコラボによる王者の風格さえ漂う強力な曲です」(蔦谷)

 いや、曲を聴くと、圧倒的に米津の匂いを強く感じてしまうのは事実だ。これは、2人の引き出しの差という気がする。このクラスのミュージシャンともなると、さすがに当人の“色”が曲ににじみ出てくる。過去に米津が発表した「ピースサイン」っぽい気がしたし、ハチとして発表した「ドーナツホール」っぽくもあった。

 「KICK BACK」で特に注目されているのは、この曲の歌詞である。「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」のフレーズは、モーニング娘。「そうだ! We’re ALIVE」からのサンプリングだ。モー娘。のプロデューサー・つんく♂は「米津氏の担当の方から『モーニング娘。のフレーズの一部を使用させていただきたい』と連絡があった」と明かしていたが、それがまさにこれだ。結果、企みは功を奏した。こんなに話題になったのだから。

 上記エピソードに加え、蔦谷が指摘したのは「KICK BACK」のイントロ部分である。

「『チェンソーマン』は97年の設定です。97年に出たレディオヘッドの『OK Computer』というアルバムがあるんですけど、その『Paranoid Android』って曲のリフと(KICK BACKの)イントロがほぼ一緒なんですよ。それ、たぶんわざとやってるんです」(蔦谷)

 言われてみれば、たしかに! いやぁ、面白い。ちなみに、「KICK BACK」でベースを弾いているのは、常田である。つまり、このオマージュを行ったのが米津か常田なのかは不明ということ。どちらにしろ、イカした遊びをするものだ。

 ということは、モー娘。とレディヘが組んだら「KICK BACK」になるのだろうか?(冗談です) ちなみに、「Paranoid Android」のリフは、98年にMr.Childrenも「ニシエヒガシエ」でサンプリングを行っている。

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