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『ブラッシュアップライフ』『100よか』…今期一番の期待作は? 冬ドラマ序盤ランキング

ガッカリドラマ3位 『女神(テミス)の教室~リーガル青春白書~』月曜21時~(フジテレビ系)

『ブラッシュアップライフ』『100よか』…今期一番の期待作は? 冬ドラマ序盤ランキングの画像4
『女神の教室~リーガル青春白書~』ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
東京地方裁判所の裁判官、柊木雫(北川景子)はある日、裁判所所長からロースクールへ派遣教員として突然の勤務辞令を受け、青南大学法科大学院、通称「青南ロースクール」の専任教員となる。「人を知らなければいい法律家にはなれない」がモットーの柊木は、教員の仕事にもやる気を見せるが、しかし目の当たりにしたのは、司法試験合格のみを目指すロースクール生の姿だった。「法」だけでなく「人」を学ぶ授業を展開する柊木のやり方に、生徒は反発。多くの司法試験合格者を輩出するエース教員・藍井仁(山田裕貴)からも馬鹿にされるが…。

 初回放送では、ロースクールを舞台にした「リーガル青春群像劇」との言葉どおり、下位ロースクールでの厳しい現実と、“熱血系教師が主人公の学園ドラマ”の王道を掛け合わせたような内容が新鮮で期待が持てたし、身近なトラブルをディベートのテーマとして取り上げるあたりは昨夏のヒット作『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)を想起させる部分もあった。だが、第3話まで同じようなストーリー展開が続いており、しかも主人公である柊木(北川景子)や、そのライバル的存在である藍井(山田裕貴)の存在感が薄まりつつあるのが気になる。

 この“同じようなパターンの話の繰り返し”は、昨年の月9『競争の番人』でも見られた問題だ。『競争の番人』同様、ロースクールという舞台設定の中で展開できる物語に限りがあるのだろうか。また『競争の番人』といえば、杏と坂口健太郎のW主演で、小池栄子らほかの主要キャストも充実していたが、坂口演じる小勝負の活躍に偏っており、もったいない面もあった。この『女神の教室』については、今後もっと柊木と藍井の出番があるものと期待したい。同時に、第4話以降は“パターン”から脱した展開があることも望まれるところだ。真中(高橋文哉)の裏の顔、刑事の風見(尾上松也)が調べている事件など伏線はいろいろとちらついているだけに、大丈夫だと思いたいが……。

ガッカリドラマ2位 『星降る夜に』火曜21時~(テレビ朝日系)

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『星降る夜に』TELASA配信ページより

〈あらすじ〉
35歳の産婦人科医・雪宮鈴(吉高由里子)はある医療裁判がきっかけで大病院を追われ、のどかな海街にある「マロニエ産婦人科医院」で働きながら、誰にも本音を語らず、孤独な毎日を過ごしていた。ある日、息抜きのために訪れたソロキャンプで、美しい青年・柊一星(北村匠海)と出会う。どこから来たのか、何者なのか、何も語らない青年は鈴に向けて何枚もシャッターを切る。しかも、鈴の酒を勝手に飲み始めたかと思えば、寒さに震える彼女に自分のマフラーを甲斐甲斐しく巻いてくる。やけに図々しい、この不思議な青年に戸惑いつつも、酒の力もあいまって、鈴はそのまま青年とキスをして…?

 昨秋のヒット作『silent』ととかく比較されがちだが、こちらは遅くとも2021年春には貴島彩理プロデューサー(父親は『愛していると言ってくれ』などを手掛けた名プロデューサーの貴島誠一郎)が脚本の大石静にオファーしていたという話であり、2021年末にフジテレビヤングシナリオ大賞に輝いたばかりの新人脚本家を起用した『silent』のほうが企画としては後発のはずである。

 いずれにせよ、まったくの別モノだ。人はどのように理解しあえるか(あるいは理解しあえないか)を11話をかけて描いた『silent』とは異なり、本作の一星(北村匠海)は“普通”の若者として描かれており、コミュニケーションの問題は基本的に立ちはだからない。「聴覚障がい者との恋愛」というドラマとしては新しい形であり、(「音のない世界で自由に生きる」という一星の形容についてはその表現に引っかかるところがあるものの)障がいを特別視しようとしない姿勢はいい。一星が明るいキャラクターで、テンポよく話が進むのも『silent』とは対照的だ。

 ただ、一星にしろ、鈴(吉高由里子)にしろ、春(千葉雄大)にしろ、登場人物の“コミュ力”が高すぎるような形になっているのは少々気になるところ。初対面ですぐに打ち解けられる人がぞろぞろと登場するのだ。「普段から(言葉が)通じないことに慣れている」という一星はともかく、他の人物については“ストーリー展開の都合上”経緯を省いたという印象がどうにもぬぐえない。初回で批判の的になっていたが、やはり見ず知らずの男にいきなりカメラを向けられ、さらには唇を奪われるということに女性がまったく警戒心を持たない(なんならそのまま仲良くなってしまう)のも、いきなりオフィスにやってきた人間に(住んでいる場所こそ話せないとしたものの)従業員の居場所をあっさり教えてしまうのも、ちょっと理解しがたい展開だ。テンポを優先するために、登場人物の心の動きや、状況の説明といったものが省略されすぎではないだろうか。一星が鈴に対する感情をどの時点で恋愛と認識したのか、そもそも一目惚れの類だったのかも視聴者目線ではよくわからないのだ。公式サイトによれば一目惚れらしいが、本作は公式サイトに書かれている設定を見て初めて「そういうことだったのか」と思わされる内容がチラホラある。

 このあたり(や繰り返される下ネタの数々)はまだ「そういうドラマ」だと飲み込めば、さほど気にならないかもしれないが、今後の問題となりそうなのが、詰め込まれすぎた“要素”の多さだ。そもそも、産婦人科医(医療裁判や、子どもを産みたくなかったという若い匿名妊婦など)に遺品整理士(整理を頼まれた遺品を遺族にわたす行為はどうなのか、“遺品”の猫を引き取っていいのかなど)と、主人公たちの職業だけでもそれぞれ独立したドラマがつくれそうなところに、妻子を亡くして都庁職員から45歳で医師になったとみられる佐々木深夜(ディーン・フジオカ)のかなり根深そうな過去もある。春も、何か事情があって遺品整理士に転職したらしい。さらに個性の強すぎる産婦人科チームや、添い寝士まで登場。「10歳年下のろう者との恋愛」に、これだけの要素を詰め込んではたして成立するのか。すでにとっ散らかり始めているというのが、第2話までの印象だ。うたい文句どおりの「大人のピュア・ラブストーリー」にちゃんと着地すると期待したい。

 なお、同じ曜日で同じラブストーリーの『夕暮れに、手をつなぐ』についてはもともとの期待度が低かったので「(事前の期待に反して)ガッカリしたドラマ」を選ぶ本ランキング上でトップ3に入れなかったことはご了承いただきたい。

ガッカリドラマ1位 『Get Ready!』日曜21時~(TBS系)

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『Get Ready!』ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
エースこと波佐間永介(妻夫木聡)は、表の顔はパティスリー「カーサブランシェ」のパティシエ、裏の顔は法外な報酬と引き換えに違法なオペをする闇医者チームの執刀医。エースが患者を選ぶ基準はただ一つ、“お前に生き延びる価値はあるのか?” ターゲットとなる患者の前では仮面で顔を隠し、その正体は世の中には知られていない闇医者チーム。素顔を隠し、秘密裏に医療行為を行う理由はいったい何なのか――。

 日曜劇場は『オールドルーキー』も『アトムの童(こ)』もどうにもいまひとつだったが、この『Get Ready!』に比べればまだ全然マシだったかもしれない。あらすじ・設定からして期待度はそもそも低かったが、予想を大きく下回る陳腐さで、日曜劇場がこんな安っぽいオリジナルドラマをつくったのかと思うと、ちょっと驚いてしまう。『アトムの童』でも意図が透けて見えていたように、TBSは若い視聴者をつかまえたいのだろう。本作の目指す方向性はわからなくもないが、妻夫木聡や藤原竜也といった俳優と、往年の戦隊モノの秘密基地のようなデザインのアジトが嚙み合っていないのに象徴されるように、キャスト・脚本・演出・美術において、それぞれ“刺さる”年齢層がチグハグに感じる。

 このドラマの最大の問題は、闇医者チームの行動原理がぼんやりしていることだ。無論、彼らが何のために闇医者稼業をやっているのか、その目的が明かされるのを引っ張るというのは構わないし、そこが本作のキモなのだろうが、それ以前に、彼ら(というかエース)には仕事を受ける・受けないの基準があり、しかしその基準がとにかく不明瞭なのだ。エース(妻夫木聡)は「救う価値がある命なのか」にこだわるが、ほかのメンバーはその点はどうでもよさそうだ。第3話ではスペード(藤原竜也)が「俺たちは慈善団体でも正義の味方でも何でもない。これはあくまでビジネスなんだよ」とも話していた。そして「救う価値」にこだわるエースも、一度は断った案件を引き受けるパターンがあり、その“手のひら返し”にいたる経緯も説得力に欠ける。改心さえすれば、汚いことをしていた裏に大義名分があったとわかれば「価値あり」なのであれば、初回冒頭で手術を断った羽場副総理(伊武雅刀)だって手術する条件として改心を突きつけてもいいはずだが、なぜかそうはならなかった。

 第4話では「凄腕オペナース」のクイーン(松下奈緒)が元医療従事者でもなんでもなく、エースに命を救われた後にエースにイチからオペ看の技術を学んだ(しかも今では執刀までできる)というトンデモ設定が明かされ、悪い意味で驚かされた。今期はB級ノリの作品や、ツッコミどころの多い作品が目立つが、そのどちらも目指していないはずなのに、どちらともを兼ね備えてしまっているという点で「ガッカリドラマ1位」に挙げる。闇医者チームの驚きの目的が今後明らかにされ、彼らの行動すべてに納得の説明がつき、この文章について土下座謝罪したくなるようなサプライズがあると期待したい。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2023/02/12 17:11
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