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『アントマン&ワスプ:クアントマニア』期待と不安が激しく入り混じるMCUフェーズ5が始動!

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』期待と不安が激しく入り混じるMCUフェーズ5が始動!の画像1
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』公式サイトより

バフィー吉川の「For More Movie Please!」
第4回目は『アントマン&ワスプ:クアントマニア』をget ready for movie!

 本格的にマルチバース(多元宇宙)の設定を持ち込むための環境作りとして機能させていたのか、それとも世界観を広げ過ぎて迷子にさせていたのか? イマイチ不明だったマーベルのフェーズ4が終了し、ついにフェーズ5~6にかけて展開される「マルチバース・サーガ」に突入!

 そんな重要な1作目に選ばれたのが、2月17日より公開中のマーベル・スタジオ最新作『アントマン&ワスプ:クアントマニア』だ。

 新章の1作目がコメディ要素の強いアントマンというのは不安もあるかもしれないが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)において消滅してしまった人類の半数を元に戻すきっかけとなった重要人物でもあるのだ。

 脚本家に抜擢されたジェフ・ラブネス、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(22)や『ロキ』のマイケル・ウォルドロン、ほかにもトム・コッフマンなど、本作には“ある作品”に共通する作家が多く参加している。その“ある作品”というのは『リック・アンド・モーティ』だ。

 ジェフ・ラブネスは25年公開予定の『Avengers: The Kang Dynasty』の脚本も務める予定であり、マイケル・ウォルドロンも「マルチバース・サーガ」の完結『Avengers: Secret Wars』の脚本務める予定。

 つまりMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)内のマルチバースを構築しているのは『リック・アンド・モーティ』の作家たちであることから、アドベンチャー要素が強くなるのではないかという期待と不安が、激しく入り混じっている……。

【ストーリー】
新たな「アベンジャーズ」へ続く物語が、ついに始動。身長わずか1.5cmの最小ヒーロー、アントマンとワスプは、<量子世界>に導く装置を生み出した娘キャシー達とともに、ミクロより小さな世界へ引きずり込まれてしまう。そこで待ち受けていたのは、過去、現在、未来すべての時を操る能力を持つ、マーベル史上最凶の敵、征服者カーン。彼がこの世界から解き放たれたら、全人類に恐るべき危機が迫る…。アベンジャーズで最も”普通すぎる男”アントマンが、マーベル史上最大の脅威に挑むアクション超大作。

征服者カーンを登場させたことはMCUとしては正解だったのか?

 ディズニープラス配信ドラマの『ロキ』の第6話『とわに時を いつまでも』で、カーンの変異体“在り続ける者”が初登場したことで、カーンという存在がMCU内において明らかとなったわけだが、フェーズ5、6のメインヴィランとして征服者カーンが登場することは、すでに19年から決まっていた。

 カーンというキャラクターは、原作においてもタイムトラベルが可能で、マルチバースに大きく関わる存在であり、マルチバース上に多数存在している。中には平和的考えの持ち主やヒーロー側に所属する者などもいたりして、設定がなかなかややこしい。

 登場させるまでには、MCUの中でマルチバースというワードを一般化しておく必要があったことからも、フェーズ4はカーンを登場させるための環境作りというべきものだったといえるだろう。

 しかしそのやり方が、なかなか強引で、物語の構築に疑問を感じるものが多かった。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)ストーリーは、スパイダーマンとドクター・ストレンジが行ったことが原因だった。『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』や『ワンダヴィジョン』もワンダが発端。つまり、ヒーロー側の行いが世界を危機にさらすような作品が年々、目立ってきているのだ。

 脅威から世界を救っているように見せかけて、実はヒーローたちの行いの代償をヒーローたちが払っているだけだったりする。その被害が一般人にも及んでいるとしたら、ヒーローというものの在り方が問われるはずだ。

 そういった論争は今までの作品の中でも描かれてはきていたものの、世界観を広げすぎたせいでドラマ性がどんどん失われてきてしまっている。そんな疑問点から目を逸らさせ、アドベンチャー要素で誤魔化すためにジェフ・ラブネスやマイケル・ウォルドロンといった、『リック・アンド・モーティ』のクリエイターたちが招集されているとしたら……。

 フェーズ5がまだ始まったばかりであることから、今後、軌道修正をしていってもらえればいいのだが、それ以上に不安なのは、アメコミの世界というのは(マーベルだけに限らずDCやイメージなどもそうだが)、設定に行きづまると何度もリセットして仕切り直しを行ってきていることだ。それと並行して、リセットされる前の世界線を描いたアナザーストーリー的なものが出版されて、最終的にその世界とつながるイベントがあったり、またそれがリセットされたりして……歴史が続いてきている。

 それもマーベルの世界と言われれば間違いではないだけに、映画も同様に「マルチバース・サーガ」終了後、一度世界観がリセットされる可能性もあるということだ。

 それを見届けるのも、楽しくはあるのだが……。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』
■監督:ペイトン・リード
■製作:ケヴィン・ファイギ
■出演:ポール・ラッド/エヴァンジェリン・リリー/マイケル・ダグラス/ミシェル・ファイファー/ジョナサン・メジャース/キャスリン・ニュートン/ビル・マーレイ 他
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
■コピーライト表記:©Marvel Studios 2023
公式サイト: https://marvel.disney.co.jp/ movie/antman-wasp-qm

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

Buffys Movie & Money!

ばふぃーよしかわ

最終更新:2023/03/03 20:18
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