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『ねほりんぱほりん』「友情結婚」を必要とする社会に感じる世知辛さ

文=寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

『ねほりんぱほりん』「友情結婚」を必要とする社会に感じる世知辛さの画像1
『ねほりんぱほりん』(NHK)公式Twitter(@nhk_nehorin)より

「友情結婚」ってなに?

 3月3日放送『ねほりんぱほりん』(Eテレ)のテーマは、「友情結婚」であった……といっても、あまり耳馴染みのない言葉だ。それは、出演者も同様のよう。

「友情結婚って、友だちだった人と結婚するってこと? ……ああ、ビザの関係かしら」(YOU)

 まっさきに、ビザの関係を疑うYOU。それは、友情結婚というより偽装結婚である。

 今回のゲストは、男性のハルさん(40代)。恋愛対象は男性で、周囲にセクシャリティーはカミングアウトしていない。2年前、彼は恋愛関係ではない女性と友情結婚をしたそうだ。

「世間体を気にする人たちが、周りから『普通の結婚をしてるんだよ』と見られるために(友情結婚を)していることが多いです」(ハルさん)

 どうやら、友だち同士でする結婚というわけではないらしい。今まで、「友情結婚」というものを知らなかったが、気づいていないだけで身近にも意外といるかもしれない。

 ただ、現代は必ずしも結婚しなきゃいけない世の中ではない。「世間体を気にしてまで結婚しなくていいのでは?」とも思ったが、人にはそれぞれ事情がある。

「『両親を安心させたい』と考えると結婚したいと思ったし、自分の子どもを育てたいというのもあったので。そのためには結婚をして、パートナーがいたほうが子どもを育てやすいかなと思って」(ハルさん)

 同性愛者が「セクシャリティーを隠したい」という理由で、異性と結婚する話はたまに聞く。一方、「親を安心させたい」「自分の子どもを育てたい」は、ごく普通の男女が結婚する理由とほぼ一緒である。

 問題は、ハルさんの場合は「異性と性行為をしたくない」という大前提が存在することだ。でも、結婚はしたいし子どもも育てたい。ここに、ハードルとジレンマが存在する。

恋愛感情がない「友情結婚」のほうが人生観のすり合わせは大変?

 友情結婚にも、さまざまな形がある模様。おおまかに以下の2つだ。

・性的マイノリティの方が性的嗜好など自分のことを理解してくれる相手と結婚する。
・もともと仲が良かった友だちと恋愛感情がないまま結婚に踏み切る。

 筆者は後者を想像していたが、友情結婚はそれだけではなかった。あと、友情結婚を選ぶ理由や事情にもいろいろとある。

・世間体
・親を安心させたい
・子どもがほしい
・老後が不安

 社会的信用を得たり、老後のセーフティネット的な意味合いが、結婚には大きく含まれている。「友情結婚」というテーマには、それが端的に表れていると思う。

 ハルさんは、「世間体」「親を安心させたい」「子どもがほしい」という理由で性的嗜好を理解してくれる異性と結婚した人だ。そもそも、彼はどうやって結婚相手と知り合ったのだろう?

「僕の場合、たまたまネットで探していたら、友情結婚を専門にしている結婚相談所をみつけたんです。そこで出会った女性と結婚しました」(ハルさん)

“友情結婚専門の結婚相談所”なんてあるのか……。たしかに、需要はありそうだ。普通の結婚相談所より、話が早い気もする。成婚率も高いのでは? 逆に言うと、そのハードルの低さに目をつけ、自らのセクシャリティーを偽って登録する人がいないかも少し不安にもなった。

 ハルさんが利用した友情結婚相談所は、軽はずみに利用できない。入会金が10万円、月会費は1万円、成婚料は30万円に設定されているのだから。いや、特に成婚料が高いな……。でも、実際問題として友情結婚するための出会いはかなり少ないだろう。背に腹は代えられない。

「結婚相談所が作った冊子があって、その冊子をもとに結婚相手の希望条件を細かく決めていく流れになります」(ハルさん)

 冊子には友情結婚生活を送るうえの条件を記入するシートがあり、以下のような項目があった。

・同居or別居
・結婚後の家事分担
・お金の管理方法(共通or別口座)
・子どもをほしいかほしくないか
・結婚後の性的欲求への対処法
・セクシャリティーのカミングアウトをしているor今後したい?

 非常に細かく書かれている。恋愛感情がない分、友情結婚のほうが価値観と人生観のすり合わせは大変なのだろう。

YOU 「友情結婚のお相手(奥さん)は、ハルさんのセクシャルは全部わかってるんですか?」

ハル 「そうですね。そこを最初の段階でお互いにオープンにしてから出会って」

山里 「(オープンにして)ちょっと、楽になったのはあるんですか?」

ハル 「そうですね。最初から『自分はこうなんです』って言えるのは、だいぶ楽ではあります」

 ハルさんは割り切った共同生活が送れているようだ。でも、恋愛感情がないのに結婚が可能ならば、同性同士だって結婚を認めないとおかしい……という気もしてしまった。

「子どもがほしい」と「外に恋人を作ってもいい」は両立する?

 友情結婚相談所で進める流れは、一般の結婚相談所のそれとあまり変わらない。相談所が条件を合う人をマッチングし、ホテルのラウンジでお見合いが行われる。ハルさんは最初の3カ月に、月1ペースで3人の女性とお見合いをした。

ハル 「(3人の女性とは)話自体は合うんですけど、ちょっと見た目がタイプじゃなかったんで……。僕が恋愛感情を抱くのは男性に対してなんですが、女性に対しても“推し”みたいな感じで『可愛い』という感情は普通にあるので。そういう『可愛い』と思える女性と結婚できたら1番理想的かなと考えていました」

山里 「どういう女性がタイプだったりするんですか?」

ハル 「本当、アイドルみたいな。今でいうと日向坂46みたいな感じの子が」

山里 「いました?」

ハル 「日向坂のメンバーはやっぱいなかったです」

 友情結婚でも相手のビジュアルは大事。それはわかる。生理的に無理な相手とは一緒に暮らしたくないし、好印象な人がいいに決まってる。あと、「昔のお見合い結婚と友情結婚は似ている?」とも思った。恋愛感情はなくとも、相手が生理的に無理ではなく、条件が合ったならば、流れに則って結婚をしてみる……というような。

 それにしても、ハルさんの理想は妙に高すぎないか? 言うに事欠いて、“日向坂46みたいな子”である。恋愛感情がない分、相手に求めるスペックは厳しくなるのだろうか。繰り返すが、彼が異性に抱く感情は恋愛のそれではなく、推しに対するそれだ。

 そして、ついに出会った。4人目にお見合いした相手は、ハルさんにとって(容姿が)“範囲内”の女性だった。残るは、お互いが設定した希望条件のすり合わせである。

ハル 「結構、お互いの条件は似ていたので。子どもはほしくって」

山里 「恋人はどうだったんですか?」

ハル 「そこも、お互いに『外に恋人を作ってもいいよ』と言っていて」

 ここが筆者には引っかかった。夫婦に子どもが生まれ、その親は家庭外に恋人がいたとする。その親は、家庭より恋人を優先しないだろうか? 生まれてきた子どもは寂しくならないだろうか?

 もっと突っ込んで言うと、“外に恋人を作ってもいい”ルールを認めると、「妻が産んだ子は自分の子どもではない」という悲劇が生まれかねない。泥沼化する恐れがあるのだ。結婚した当人にとってはベターな選択の友情結婚も、生まれてくる子の境遇があまり考えられていない気がしたのだ。

 ちなみに、ハルさんの奥さんはなぜ友情結婚相談所を利用したのだろう?

「奥さんは性行為が苦手というのが根底にあって。自分が恋愛感情自体を抱くかどうかもわからないし、恋愛対象が女性か男性かもいまいちわからないと言っていました」(ハルさん)

 ハルさんの奥さんは、アセクシャル(他者に対して性的に惹かれない人々)なのかもしれない。それを理由に、彼女は友情結婚相談所を利用したということ。

 2人は出会って3カ月で結婚を決めたそうだ。いや、短くないか? その結婚相談所には、「初回のお見合いから3カ月以内に結婚するかどうかを決める」というルールがあったようだが……。

「3カ月経ったとき、奥さんのほうから『一緒に結婚してくれませんか』と言ってもらえて、それで結婚することになりました」(ハルさん)

「一緒に結婚してくれませんか」という言葉が、しみじみ深い。恋愛感情から発したプロポーズではなく、お互いの境遇を理解し合う“同志”として社会を生き抜くために結婚を申し出た……というニュアンスに聞こえたのだ。

YOU 「結婚するにあたって、ご両親に電話とかしたわけ?」

ハル 「しました」

YOU 「クソ喜んでた?」

ハル 「クソ喜んでました(笑)。『こんなに喜ぶんだ』ってくらい喜んでくれたので。尋常じゃなかった。あれぐらい喜んでくれると、友情結婚してよかったと思いました」

 息子が異性の女性と結婚し、親が大喜びをする。正直、ハルさんにとってもご両親にとっても残酷と思えた。世間体を意識し、偽りの結婚をしてまで親を安心させる。ハルさんのご両親の大喜びから、世知辛さを感じてしまったのだ。親の安心も大事だけれど、本当は一緒にいたいと思える相手と家族になれるのが何よりのはず。でも、現実はそうもいかなかった。

 オープニングでYOUは、友情結婚について「ビザの関係かしら」とボケのつもりで発言したが、友情結婚は実際に偽装結婚と近いところがある。

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