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『星降る夜に』北村匠海“最強の一星”の優しさと強さにムロツヨシ“伴”も浄化

『星降る夜に』北村匠海“最強の一星”の優しさと強さにムロツヨシ“伴”も浄化の画像
『星降る夜に』TELASA配信ページより

 吉高由里子主演のテレビ朝日系火曜ドラマ『星降る夜に』、最終回目前となる第8話が3月7日に放送された。産婦人科医・雪宮鈴(吉高由里子)と、遺品整理士のろう者・柊一星(北村匠海)のラブストーリーを中心に、生と死を隣り合わせに生きる登場人物たちの悲しみや優しさを描く脚本が話題となっている本作。特に鈴を逆恨みする男・伴宗一郎(ムロツヨシ)をも抱きしめた一星の優しさと強さに、多くの視聴者が涙した。

 5年前、妊娠中の妻が大学病院に運ばれるも、子どもは無事に生まれたが、妻は帰らぬ人となった伴。大学病院への搬送時点ですでに母子ともに危険な状態だったが、もともとの担当医が、大学病院に緊急要請する際にはっきりと伴に状況を説明しなかったこともあり、伴は医療過誤だと担当医の鈴を訴える。鈴に過失はなく、伴の訴えは棄却されたものの、納得がいかない伴は、鈴が現在マロニエ産婦人科医院で働いているのを突き止め、SNSに「雪宮鈴は人殺し」などと触れ回り、さらに鈴の自宅に同じような誹謗中傷の張り紙をしたあと、窓からレンガを投げ入れるなど、徹底的に鈴を付け狙うようになっていた。

 マロニエへの“襲撃”からしばらくは姿を見せなかった伴だが、今度は鈴が手話教室から出てくるところを待ち伏せする。鈴を「人殺し」だと恨む一方の伴は、周囲が鈴を庇うのが気に喰わない。だが、しつこく鈴を責め続ける伴に対し、一星の勤務先「遺品整理のポラリス」社長で、鈴とともに手話教室に通っている北斗千明(水野美紀)は、「自分がつらいからって、逆恨みするんじゃねえ!」「いい大人が……他にすることないんかい! そんなんだからいつまで経っても幸せになれないんだよ! お前と同じような境遇でも、頑張ってる奴だっているんだよ!」と正論で啖呵をきる。

 伴が何も言い返せない間に、鈴は千明を引き離すようにその場を走り去る。千明は言い過ぎたと謝り、「あいつは鈴先生のことを付け回すのが生きがいになってんのかな。大丈夫?」と心配するが、鈴は、伴がマロニエで暴れた際、看護師の伊達麻里奈(中村里帆)が妊娠中と知って動きを止めたことを思い出し、「あの人、私のこと傷つけようとか殺そうとか、そういう感じじゃないような気がするんです」「彼も闘ってるような気がするんです」と、伴の境遇を思い遣る。

 一方、鈴の同僚の産婦人科医・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)も、妻を出産時に亡くしていた。それをきっかけに医師を目指した深夜だが、今でも妻の分の食事まで買ってしまうなど10年経っても悲しみから抜け出しておらず、妻とともに暮らした東京の自宅も整理できずにいた。東京の自宅の掃除をした後、マロニエに戻ってきた深夜は、伴と遭遇する。どこか落ち込んでいる様子の伴は、医者でルックスもいい深夜に対し「いいなぁ。ぜ~んぶ持ってて」とこぼす。深夜が結婚しているうえで鈴と不倫しているのではと邪推し、けなそうとするが、深夜に「僕の妻は死にました……。出産の時、子どもと一緒に。……僕ひとりだけを残して。だからあなたの気持ち、少しだけわかる気がします」と言われてしまい、戸惑う伴。「わかんないよ!」「一緒にすんな!」「何ひとりで乗り越えた顔してんだよ!」と罵るが、深夜は穏やかな口調で「僕が医者になろうと思ったのは多分……復讐のためです」と話し、その意味を量りかねた伴を置いて、立ち去っていった。

 そんなある日、一星の祖母・柊カネ(五十嵐由美子)が買い物中に急性心筋梗塞で倒れた。たまたま居合わせた深夜の素早い対応によりカネは一命を取り留めたが、一星は、高校生の頃に両親ともに突然事故で失い、ひとりぼっちになったときのことを思わず思い出す。駆け付けた鈴を見た一星は、すがりついて涙を流した。一星が孤独から救われたのは、遺品整理のためにやってきた千明との出会いと、祖母のカネの存在があったからだった。

 深夜は、伴の悲しみについて考えていたようだった。このところ元気のない様子の深夜を心配した鈴は、自分に何かできることはないかと訊く。深夜は鈴の気遣いを遠慮しながら、「あの人は僕だなと思って」と打ち明ける。「あの人を見てると、自分を見てるような気がしてしまって。僕が暴れないで済んだのは、鈴先生がいてくれたからです」と深夜は伴を自分に重ね、心配してくれる鈴に感謝を告げるが、鈴は「暴れてもいいのに」「泣いて、叫んで、怒ったりしてもいいのに」と返す。それこそが、伴の悲しみの本質だった。突然、最愛の妻を失い、訴訟を起こしたものの、担当弁護士からも勝つ見込みがないと突き放されてしまう。仕事もクビになり、幼い子どもは家で泣いている。相談できる友人もいないようだった。泣き叫びたいが、それができる場所が自分にはない。孤独を深めていった伴が行き着いた先が、鈴への執着だったのだ。

 鈴のもとに、一星の親友・佐藤春(千葉雄大)から連絡が入る。一星とともに海岸で伴の娘・静空(戸簾愛)がひとりで歩いているところに出くわしたのだが、静空は「お父さんが私を捨てたの」「お父さんはいつも私を捨てて、迎えに来るの」と言い、伴は必ず迎えに来ると話していた。しかし、日が暮れてきたのに伴が来る様子がない。鈴は深夜とともに海岸へ向かう。その途中、ふたりは一人で歩いている伴に出会った。これまでとは一変して「雪宮先生、申し訳ありませんでした。みなさんにも……本当にご迷惑をおかけしました」と頭を下げて謝罪する伴。何かを覚悟したような表情で立ち去る姿を見て、不安を感じた鈴は、伴を追いかける。

 伴は命を絶とうと海に向かっていた。鈴たちは止めようとするが、「こうするしかないんだ」と言い放つ。伴は、自分がやり過ぎていたことはとっくにわかっていた。しかしどうしても自分を止められず、鈴への嫌がらせをしては娘にすがりついて泣いていた。後に引けないと思い込んでいる伴は、「優しくしないでください。歩み寄られたら耐えられない」「お願いです。嫌な人でいてください。悪い人でいてください。じゃないと……ゴールがもうないんです」と言って、海に飛び込もうとする。そんなとき、伴の耳に届いたのは「お父さん!」と悲痛に叫ぶ娘の声だった。一星たちが静空を連れて駆け付けたのだ。伴は思わず立ち止まり、張り詰めていたものがプツンと切れる。そして地面に崩れ落ちながら、声の限り泣き叫んだ。伴はようやく泣くことができた。そんな伴を一星は静かに抱きしめたのだった。

 第7話に続き、伴を演じるムロツヨシの鬼気迫る演技が話題になった第8話。最後の一星に抱きしめられながらの号泣は本作のベストシーンのひとつだろう。しかしそれ以上に千明、深夜と言葉を交わすごとに動揺し、少しずつ変わっていく表情が印象に残った。「この人は最後、どうなるのだろうか」と悲劇的な結末が頭をよぎり、心も体も行き場を失って死を選ぼうとする伴のやり場のない悲しみと絶望は見ていて辛かった。

 だからこそ、全てを包み込む一星の優しさと強さが響いた。一星は、伴の行動の根底にあるのが孤独であり、「あの男は鈴に甘えてんだと思う」「自分でもどうやって悲しさを鎮めたらいいのかわかんなくなってるんだよ」と、鈴が構うからこそ暴れているのだと看破したうえで、「俺は最強だから、深夜の遺品整理もするし、今度あの男が来たら、抱きしめてやる」「深夜のことも、鈴のことも、あの男のことも、全力で抱きしめてやる!」と鈴に宣言していた。その宣言どおりのハグを実行してみせた一星に、「めちゃくちゃ優しい世界」「涙腺崩壊した」と視聴者の涙を誘った。

 さらに一星の「深夜の遺品整理もする」「深夜のことも全力で抱きしめる」という宣言の実行も、今夜放送の最終話でなされることとなりそうだ。予告映像では、一星、春、深夜に、なんと伴までもが一緒に湯船に浸かるという驚きのシーンも。しかし、医師になった理由を「復讐のため」と吐露した深夜の「心の遺品整理」は、どのような形で決着するのだろうか。そして、鈴と一星の心は寄り添ったまま”胸キュン”のラストを迎えるのか。ハッピーエンドが少ないといわれる大石脚本のなかで、本作は心が温まる優しい結末に期待したい。

■番組情報
火曜ドラマ『星降る夜に
テレビ朝日系毎週火曜21時~
出演:吉高由里子、北村匠海、千葉雄大、猫背椿、長井短、中村里帆、吉柳咲良、駒木根葵汰、若林拓也、宮澤美保、ドロンズ石本、五十嵐由美子、寺澤英弥、光石研、水野美紀、ディーン・フジオカ ほか
脚本:大石静
音楽:得田真裕
主題歌:由薫「星月夜」(ユニバーサル ミュージック)
ゼネラルプロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
監督:深川栄洋、山本大輔
制作:テレビ朝日 MMJ
公式サイト:tv-asahi.co.jp/hoshifuru_yoruni

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/03/14 12:00
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