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自分の「偽物」が現れモデルやグラドルと豪遊…元芸人が体験した不可解な出来事

自分の「偽物」が現れモデルやグラドルと豪遊…元芸人が体験した不可解な出来事の画像1
檜山豊 公式ツイッターより

 皆さんはトークバラエティ番組というとどのような番組を思い浮かべるだろうか? ダウンタウンの松本さんがやっている「人志松本のすべらない話」(フジテレビ系)や「人志松本の酒のツマミになる話」(フジテレビ系)、明石家さんまさんがやっている「踊る!さんま御殿!!」や「ホンマでっか!?TV」。さらには「しゃべくり007」(日本テレビ系)や「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)、「櫻井・有吉THE夜会」(TBS系)などを思い浮かべる人もいるだろう。

 つまり今放送されているバラエティ番組のほとんどがトークバラエティと言っても過言ではなく、芸人にとってトークとはネタよりも必要不可欠で価値が高いものなのだ。

 このようなトーク番組で役に立つのは芸人が経験したことを面白おかしくストーリー立てて話す「エピソードトーク」だ。元々は芸人界くらいでしか使わないような言葉だったが、今や一般的な言葉になっており、ネットで「エピソードトーク」と検索すると「就活の面接に有効なエピソードトークの作り方」や「エピソードトークが苦手な人向けのコツ」といったワードが出てくる。つまり「エピソードトーク」は我々一般人の社会生活やプライベートにおいても重要なコンテンツと認識されていることがわかる。

 しかし芸人の「エピソードトーク」はどこかファンタジーに感じてしまうことはないだろうか? それは普通の生活ではあり得ない奇跡的な出来事や、信じがたい不可解なことが起きているからだろう。これは芸人だから起きるのか、それとも起きるような人が芸人になるのかは定かではないが、実は僕も芸人時代にとても不可解な出来事に見舞われたことがある。

 あれは2000年代前半。僕が芸人を始めて5、6年目といった頃だろうか。その頃は芸人としてそこまで忙しくなかったので、僕は連休を利用して地元の茨城へ里帰りをしていた。里帰りと言っても特にやることはなく、当時レギュラーで出演させてもらっていた「完売劇場」(テレビ朝日系)の台本提出の締め切りが差し迫っていたので、実家でパソコンを使い台本を書いていた。

 集中力があまり続かない僕は台本を書くことに飽きてしまい、エゴサーチをすることに。当時エゴサーチといえば日本最大級の電子掲示板「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)ぐらいしか見るものがなかった。匿名掲示板ということもあり、基本的に芸人スレッドは暴露や悪口などが多いのだが、その日の僕のスレッドは違った。暴露でも悪口でもなく目撃情報が載っていたのだ。

 茨城で見られたのかと思い文章を読んでみると、なんと昨晩、ホーム・チーム檜山が後輩芸人を大勢引き連れ、渋谷のカラオケ店に行き、お酒を浴びるほど飲み暴れていたそうなのだ。これが真実なら檜山はなんとも迷惑な輩なのだが、昨晩僕は茨城県の実家におり、渋谷には行っていない。さらに後輩芸人を引き連れるほどの人望はなく、田舎者丸出しなので渋谷で遊ぶなんてもってのほかだ。

 そしてコップに半分のビールを飲んだだけで顔が赤くなり寝てしまう僕は、浴びるほどお酒を飲むことは不可能なのだ。よくもまあここまで嘘だらけの目撃情報を作れたものだ。檜山を知らないにもほどがある。しかし「2ちゃんねる」で本人がこの目撃情報を否定するなんて見たことないし、本人だと思ってもらえない可能性の方が高いので、そのままスルーすることにした。

 若干モヤモヤしたまま台本を作成していると、携帯電話が鳴った。マネージャーさんからだ。電話に出ると開口一番「檜山昨日の夜どこにいた?」と。僕は実家に帰っていたことを伝えると、マネージャーさんは渋谷にいたかどうかの確認をしてきたのだ。例のアレだ。「それって2ちゃんねるのやつですよね?」と尋ねると「2ちゃんねる?」と明らかにピンと来ていない。どうやら例の目撃情報を見て電話してきたわけではないらしい。

 僕は2ちゃんねるの話を説明すると、どうやらマネージャーさんの情報源は2ちゃんねるではなく、知り合いのマネージャーさんから連絡があったとのこと。知り合いのマネージャーさんが渋谷で後輩芸人らしき若者を引き連れて、酔っぱらって大騒ぎしてる檜山を見たと心配されたらしい。僕は昨日から実家で台本を作っていたと伝えたのだが、どうやらその大騒ぎしていた人物は自分を「檜山」と言っていたらしく、僕が嘘をついているような状況になってしまったが、とにかく事実無根だと訴え続けなんとか信じてもらえたのだが、業界関係者が僕と見間違えたということは、見た目も声も雰囲気も僕に似ており、さらに自分を「檜山」と名乗っているので、間違いなく「他人の空似」ではない。ドッペルゲンガーでもない限り、僕の名を語る「偽物」ということだ。

 それから1年後、すっかり「偽物」のことなど頭から消え去っていた頃、フジテレビのトイレでたまたま知り合いの若手俳優さんに会った。お互い「お久しぶりです」的な形式ばった挨拶を交わすと、その俳優さんが「檜山さん、かおりちゃんって女の子知ってます?」と質問してきたのだ。僕はかなり物覚えが悪いので、数回会った程度の人を名前だけで思い出すことは容易ではない。なので「何やってる人?」と聞くと「モデル」をやってる女性だというのだ。僕の交際関係にモデルさんはいない。つまり数回会った程度の人であることは間違いない。

 失礼だとは思いながら「ちょっとわからないかなぁ」というと俳優さんは「え?!マジですか?」と驚いた表情を見せたのだ。僕はその表情には何かあると思い「ちなみにそのかおりさんって人は、檜山とどこで会ったって言ってたの?」と聞くと「会ったというか、付き合ってたみたいですけど」。寝耳に水である。僕の元カノに「かおり」という名前の女性はいない。もしかしたら若いころの遊んだ時期にそういうことになってしまった女性かもしれないと思い「ちなみにどのくらい付き合ってた感じ?」と聞いた。付き合った期間が短ければその可能性が高い。

 僕の質問に対し俳優さんは「3年くらいって言ってました」。パニック。いくら物覚えが悪い僕でも3年付き合った女性の名前を忘れることはない。あまりにも身に覚えのないことだったので、その場は誤魔化したような形になってしまったが、そのとき例の「偽物」の存在が僕の頭をよぎった。

 そこからさらに1年後くらいに、とあるライブに出演した。そのライブはテレビで放送されるような大規模なもので、司会や出演者もベテラン芸人さんが多く参加していた。僕と与座で廊下の片隅でネタの練習をしていたとき、司会を務めてらっしゃった「浅草キッド」の水道橋博士さんが僕たちのそばを通過しようとしていた。その瞬間僕たちはネタをやめて挨拶をしたのだが、僕たちを見た水道橋さんの顔がニヤリとした。

 そして僕たちに向かって「おぉホーム・チーム。めちゃめちゃ遊んでるみたいだねぇ。グラビアの子とか行ってるんだって?」と。これまた身に覚えがない。ホーム・チームは二人いるので僕でなければ相方の与座なのだが、与座はそんなことするようなタイプではないし、水道橋さんは明らかに僕を見ている。つまり「ホーム・チーム」と言っているが、この場合「ホーム・チーム」イコール「檜山」なのだ。「いやいや全然遊んでないですよ!本当に!」と必死に言い訳する若手芸人のようになってしまったのだが、ここまで連続すると間違いなくそのグラビアアイドルたちと遊んでいるのは僕の「偽物」だ。

 どうやら僕の偽物は僕より社交的で、お酒に強く、後輩に慕われており、さらにモデルさんやグラビアアイドルさんたちと知り合うツテを持っており、さらにその女性たちからモテるほどの魅力があるらしい。

 結論、偽物の方が本物より総合的にスペックが高い。それ以来「偽物」の噂を聞くことはないが、僕より人生を楽しんでいたのは間違いない。自分の偽物が現れる経験などあまり出来るものではないが、芸人をしていたからこそのエピソードと言えるだろう。これが元芸人の「エピソードトーク」です。あしからず。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/04/07 09:00
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