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映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』公開記念インタビュー

サメ社会学者Rickyに聞く、「サメ映画」という深~い沼と可能性

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サメ社会学者Rickyさん(撮影=二瓶彩)

 ネット上で俗に「サメ映画」といえば、“サメと死闘を繰り広げる低予算パニック映画”のこと。基本的にB級~Z級の作品が多く、レビューサイトでは5点満点で1点や2点、「時間のムダ」といった超低評価もめずらしくない。

 日本ではそんなダメダメなサメ映画を愛するファンも多いのだが、制作はそのどれもが海外産ばかり。そんななか、4月14日(金)から、待望の国産サメ映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』が、全国ロードショーされる。

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映画『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』

 監督は『ウルトラマン』『仮面ライダー』など、数多くの特撮モノを手がけた坂本浩一氏。俳優陣も特撮出身者が勢ぞろいとあって、見どころは「“王道”サメ映画ながら、超絶クオリティの高いアクション」という一言に尽きる。だが、そもそもなぜ人はサメ映画に魅了されてしまうのか。サメ、及びサメ映画が人を惹き付けるポイントはなんなのか?

 その謎に迫るべく、サメ社会学者として独自の活動を行うRickyさんに、サメの魅力、サメ映画の魔力についてじっくりお話をうかがった。もちろん『ニンジャVSシャーク』の感想も!

サメ社会学者Ricky

1992年生まれ、東京都葛飾区出身。早稲田大学国際教養学部卒業。サメの解剖実践やダイビング、水族館スタッフとしての経験を活かし、サメを中心に動物の生態や環境問題についてサメブログ「Board-Gill」YouTubeにて発信中。映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』や『海上48hours ―悪夢のバカンス―』の劇場パンフレットでは、サメの解説も手がけている。

 

「サメ社会学」って何?

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静岡・焼津の食品加工業者の方から頂いたという、ハチワレ(オナガザメ科)の脊椎骨の杖!

――まず、「サメ社会学」とはなんですか?

 サメ社会学者Ricky(以下、Ricky):一言でいうと、「サメと人との関わり」という観点で学び、発信していくものです。

 僕は幼少期から海やサメが好きで、『ジョーズ』(75)も幼稚園時代に観ていました。でも、理数系の勉強が苦手で、研究者になるのは断念。文系に進み、大人になったある時、シャークジャーナリストの沼口麻子さんとお会いしたのが、人生のターニングポイントでした。

 そこで研究者以外にもサメに関わる方法があることに気づき、人との関わりに焦点を当てて発信する活動をスタートしました。HPではサメの生態の解説や環境問題、サメ映画のレビューも公開しています。

実は臆病なサメの性格

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――サメは、人間を見たら猛スピードで襲いかかる、恐ろしい生き物というイメージがあります。でも調べたら、実際の死亡事故は、全世界で年間一桁なんですね。

Ricky:『ジョーズ』の影響で、危険な印象はすごく強いですよね。でも、実は500種類以上いるとされるサメのうち、人間に致命的な傷を負わせるのは3~10種類なんです。

 フロリダ自然博物館のデータ「国際シャーク・アタック・ファイル(ISAF)」では、2022年、人間が挑発的な行動をしていないのに、サメに咬まれた事故は全世界で57件。そのほとんどは米国とオーストラリアで発生しています。そのうち人間に致命傷を負わせたものは5件で、21年の9件と比べて減少。過去10年間で最も少なかったです。

――件数は少なくても、サメが人を殺傷すると、そのセンセーショナルさが印象に残ってしまいます。

Ricky:有名なものでは、アメリカのニュージャージー州で起きた事故。1916年7月1日~12日という10日ほどの間に、4人死亡、1人負傷した連続襲撃事件で、『ジョーズ』の元ネタともいわれています。

 近くで捕らえたホホジロザメ(※)から人骨が出てきたので、犯人かと思われていましたが、襲撃現場のなかには、川もあった。ホホジロザメは淡水では生きられないので、そこでの犯人は淡水OKのオオメジロザメ説が浮上しました。結果的に、複数のサメによる事故が重なった、という見方が有力です。

(※)環境省によれば、ホホジロザメは全長8メートル、体重2トンを超える大型のサメ。英語圏での俗名がMan Eater Shark=人食いザメと呼ばれるほど、最も危険なサメとされる。

 日本では、松山(愛媛県)の騒動が知られます。瀬戸内海で、1992年3月8日に起こった、潜水士が襲われる事故です。

 潜水器具を装着して貝漁をしていた潜水士が、船上の仲間に「上げてくれ!」という救助連絡の直後、行方不明になってしまった。20分ほどして引き上げられたのは、ズタズタになった潜水服だけ。歯の痕などから、ホホジロザメが犯人だとされました。

 さらに同年5月、その近くで大きなホホジロザメが捕獲され、翌月には瀬戸内海の別の場所で、ボートに乗った漁師が襲われました。当時、現地では『ジョーズ』さながらのパニックになったという話を聞いています。

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クロトガリザメの標本
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歯がびっしり!

――凶暴なサメが出没する場所というのはあるのでしょうか。

Ricky:人食いザメとして危険なイメージの強い三大サメは、ホホジロザメ、オオメジロザメ、イタチザメ。日本では、ホホジロザメはどこの近海にもいますし、イタチザメとオオメジロザメは沖縄の海にいます。イタチザメは古タイヤや空き缶など、なんでも飲み込むので、「海のゴミ箱」という異名もありますね。

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アカシュモクザメの頭蓋骨

――では、どういう時に人を襲うのでしょう?

Ricky:実は、サメは人間を好んで襲っているわけではなく、アシカやアザラシなど本来の獲物や、競合する捕食者と間違えた、という説はよく言われています。また、サーフボードに恰幅のいい男性が乗っていると、アザラシっぽい影ができる。それゆえサーファーを獲物と勘違いして襲ってしまう、という話もあります。

 ちなみに、意外にもサメの中には、海底でじっとしている種類も多いです。種類や個体にもよりますが、サメはパブリックイメージとは逆で、基本的に警戒心が強くて臆病な性格をしているんじゃないかな、と僕は思っています。

――襲われそうになった時の対処法はあるのでしょうか?

Ricky:パニックにならずに、落ち着いて早く水から上がってください! という一点です。

 よくサメ映画では、サメの背びれがどんどん迫ってくるなか、「逃げろぉー!!」って必死になって、逃げ切れるのか、食われるのか……みたいな緊迫シーンがあるじゃないですか。でも、サメが本気出したら、絶対逃げられませんから(笑)。

 ホホジロザメの場合、計測方法により諸説ありますが、国立極地研究所が2019年に発表した研究内容では、瞬間最高速度は時速24キロ。そのほか、40キロとも50キロともいわれています。パニクってもムダ。逆に慌ててますよ、という雰囲気を出すほうがマズいんです。

サメ好きは「サメ映画」をどう思っているのか

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――サメ好きの1人として、サメ映画というジャンルをどう思っていますか? 

Ricky:『ジョーズ』のヒットで、「サメ=人を食う」となった固定イメージを払拭したいと思っているのは確かです。一方で、あの独特の「サメ映画」文化はすごく面白いなと。

――「サメ映画」って、大きく『ジョーズ』のようなちゃんとしたやつと、そうじゃないやつに分かれますよね。

Ricky:僕もサメ映画は好きでよく観ますが、レビューするときは、「A級」「準A級」「B級」「Z級」と4段階に分けています。A級は、普通に映画としてのデキがよく、皆さんにおすすめできるもの。『ジョーズ』、『ディープブルー』(99)、『ロスト・バケーション』(16)などです。最近だと、昨年公開された『海上48hours ―悪夢のバカンス―』もおすすめでした。

 準A級は、世間的にはB級かもしれないけど、個人的に好きなもの。サメ映画が好きな人は、心のどこかでサメが人を食うことを期待する傾向があるんですけど(笑)、僕の場合、必ずしもそうじゃなくて、何か面白ポイントがあればいい。

 B級は、ツッコミどころを楽しむ作品。雑なCG、雑な演技、よくわからんストーリー展開などを、「なんだよこれ!」って言いながら観る。Z級は、もはや「映画」じゃない。サメ映画の沼であり、闇ですね(笑)。

――Z級になるとサメがハリボテになったり、陸にあがったり、幽霊になったり。

Ricky:大体、サメ映画がむちゃくちゃなことをするのは、経費削減の意味が大きいと思います。水中撮影は大変なので、予算が低くなるほど、海から陸に出始める。『ニンジャVSシャーク』も途中まで頑張ったけど、力尽きて……立派なB級作品です。

――サメ映画は、予算が潤沢ではないのに、わざわざ作りますよね。サメの何がそこまで人々を突き動かすんでしょう?

Ricky:ほんと、なんなんですかね?(笑)

――特にZ級サメ映画のファンは、日本人が多い説があります。同人誌文化と似てるのかな……。まずいい作品を見て、クリエイティビティを刺激されて、という。

Ricky:たしかに、『ジョーズ』という型があって、そこから派生してますもんね。まず『ジョーズ』のクオリティが高くなかったら、後年、ここまで多種多様な……変な作品も生まれなかったと思いますね。

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