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一番“ガッカリ”は『unknown』か『教場0』か? 春ドラマ序盤ランキング

ガッカリドラマ3位 『それってパクリじゃないですか?』水曜22時~(日本テレビ系)

一番“ガッカリ”は『unknown』か『教場0』か? 春ドラマ序盤ランキングの画像4
『それってパクリじゃないですか?』ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
月夜野ドリンク開発部の藤崎亜季(芳根京子)は、真面目でお人好しな新米社員。ある日、社運をかけたプロジェクトとして開発が進められている新ドリンクのボトル、通称「キラキラボトル」のデザインが、ライバル企業に盗まれるというが事態が発生。亜季には情報を漏らした可能性があるとの疑いがかけられる。トラブルを調査するために、親会社である上毛高分子化学工業の知的財産部から、「弁理士」の北脇雅美(重岡大毅)がやってくる。弁理士とは“理系の弁護士”といわれる、知的財産権のプロフェッショナル。助けを求める亜季だったが、北脇は近寄りがたい厳しい人物で…。

 知的財産をテーマに、芳根京子を主人公に据えたお仕事ドラマ。地味で少々難解なテーマではあるが、たとえば『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)のようなおもしろい作品になり得る可能性もあったのではないか。そんな期待とは裏腹に、ドタバタドジっ子キャラな主人公にどうにも鼻白む作品だった。芳根京子はこの類型的なキャラクターを懸命に演じているとは思うが、物語の展開上、(仕事なのに)感情に流されるばかりで、ただ騒がしい、話をかき乱す側になりがちなのが残念だ。

 この主人公像の失敗は、特に第4話で浮き彫りになったように思う。芳根演じる藤崎亜季は、知的財産部に異動となってからもすぐに感情に流されて判断をコロコロ変えてきたが、第4話ではある商標の出願をめぐって、理屈ではなく感情で、出願取り止めを土壇場で訴えた。結果、出願しようとしたものは“公共のもの”だったため、ライバル会社が商標を出願したことが発覚すると世間からバッシングされ大炎上となり、亜季たちは出願を取り止めて正解だった……というオチなのだが(のまネコ問題やゆっくり茶番劇問題に近い話)、せっかく亜季が知財部の人間として少しずつ成長してきた姿が描かれていたのに、また“感情優先”に逆戻りとなってしまった。

 この第4話の問題点は、第2話で経験したことが無視されていることだ。自社の商品と名前もパッケージもそっくりな商品を販売している、小さな町の食品会社を訴えるかどうかという問題が描かれた第2話では、“訴訟を起こすことは簡単だが、地域に貢献してイメージのいい小さな会社を訴えると世間から反発を買う”という理屈で訴訟以外の解決方法にシフトするという展開があったのだ。「“みんなのもの”を商標登録することは、いいのか?」という命題に、この第2話の経験を生かして亜季が北脇(重岡大毅)を説得するという流れだったらよかったのだが、亜季は結局、情に訴えるしかなかった。そして、先を越されたライバル会社が大炎上したことで“結果ラッキー”という決着で、このドラマに対するモヤモヤは強まってしまったのだ。第1話~第3話までは丑尾健太郎(『ブラックペアン』『競争の番人』など)、第4話の脚本は佃良太(『舞いあがれ!』航空編など)で、脚本家が違ったことで起こってしまったことかもしれないが……。

 また、難しい用語や解釈が出てくる割に、テロップや解説シーンが少ないのも気になる。やりすぎると教育番組っぽくなってしまうが、脚本の丑尾健太郎が関わっていた昨年のフジ月9『競争の番人』くらいにはわかりやすく解説したほうが、視聴者もドラマに入り込みやすいのではないだろうか。タイトルでもある、「パクリ」と「パロディ」の違いについても、“愛があるか?”“配慮があるか?”といった情緒的な話に終始して、「結局(法律上は)どう違うのか?」といった点がぼかされていたのも残念だった。

 原作小説があるので仕方ないが、飲料メーカーの知財部という設定上、発生するトラブルや物語の舞台が似たようなものになってしまうのも、本ドラマの難しいところ。オープニング映像では『マスク』『ゴーストバスターズ』『ラ・ラ・ランド』『プラダを着た悪魔』などさまざまな映画のパロディをやっているだけに、1話まるまる他作品の“パロディ”をやる……というのはさすがに難しいかもしれないが、それぐらいの冒険心がもっと欲しかった。

 想像以上に話が重苦しい展開が続く『日曜の夜ぐらいは…』(テレビ朝日系)とで迷ったが、『それってパクリじゃないですか?』は、“難しい話を、理想主義のドジっ子女子と現実主義のツンデレ男性上司のタッグでやわらかく見せる”といった保守的な狙いが、どうしても演出にも脚本にも透けて見え、そしてそれが失敗しているように思えたため、こちらをガッカリ3位とした。

ガッカリドラマ2位 『風間公親-教場0-』月曜21時~(フジテレビ系)

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『風間公親-教場0-』FOD配信ページより

〈あらすじ〉
風間公親(木村拓哉)は、県警本部捜査一課の刑事指導官。キャリアの浅い新人刑事とバディを組み、実際の事件捜査を通じて刑事として必要なスキルを学ばせる任務に当たっており、刑事仲間はそれを“風間道場”と呼んでいる。地域課の制服警官だった瓜原潤史(赤楚衛二)はある事件の犯人を逮捕し、署長賞を受賞したことをきっかけに、捜査一課への配置換えを命じられた。“風間道場”で実際の事件を通して刑事の基礎を叩き込まれることになったのだ――。

 神奈川県警の警察学校で生徒たちを前に最恐の教官として君臨していた風間公親の過去エピソードを連ドラ化。正直なところ、連ドラではなく今回も前後編のスペシャルドラマ(もしくは映画等)にすべきだったように思う。風間とバディを組む新人役に赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太の5人を揃える豪華さは魅力ではあるが、1人につき2話+αはもったいないし、全11話となるだろうボリュームのための埋め合わせ感が強い。

 そして気になったのが、ドラマが描こうとするものと事件の難度のバランスだ。この『教場0』で風間はあくまでヒントを与える側に回り、たとえ犯人を逃すことになっても新人教育のほうが重要として、あくまで新人刑事に捜査をさせる。だが、実際には「刑事としてのスキル」を学ばせるというよりは、「刑事としての心構え」の教育に近い。実践的な指導の場面は少なく、むしろ本人が抱えている弱さ、欠点に対して本人に向き合わせるという精神的な指導がメインなのだ。これは『教場』シリーズの流れを汲んでいるわけだが、そうした“(新人刑事の)人間ドラマ”を主にするのであれば、事件をここまでややこしくすべきではないだろう。

 第3話のみ、事件がシンプルだったために隼田聖子(新垣結衣)へのフォーカスがしっかりできていたが、他の事件はというと、タクシーの走行経路でダイイングメッセージを描いたり、ブロンズ像の一部を凶器として用いて溶接で元通りにつなぐことで犯行をごまかそうとしたり、犯行現場で出産したりと、トリックをひねり過ぎていて、そちらに気がいってしまい、取っ散らかった印象を受けるのだ。そもそもこんな『名探偵コナン』に出てきそうな難事件を新人に解決させようという構図に無理がある。基本的に原作どおり(原作では走行経路はダイイングメッセージではないのだが)なのはわかるが、そもそも君塚良一脚本によるこの『教場』シリーズではこれまでも、ドラマオリジナルキャラクターがいたり、原作では男性キャラなのがドラマでは女性キャラになっていたりと改変は少なくないわけで、もう少し現実的に脚色してもよかったように思う。あるいはこれだけの難事件なら、もう少し風間が主体的に動く形に改変してもいいのではないだろうか。

 ……というのが第4話までの感想だったが、やはり第5話より北村匠海演じる遠野の回となったことで、“本編”が始まったという印象が強い。そもそも本作のウリは「あの最恐の教官はいかにして誕生したのか?」であり、「風間を襲った犯人の正体と、風間が警察組織に対して持つ激しい恨みの理由」を解き明かすための過去編だ。多少のフォローはあるものの、風間のパワハラ色はさほど変わらないこともあり、「風間の(わかりづらい)ヒントをもらいながら新人が難事件を解決していく、その過程で自身の問題にも向き合っていく」パターンがやや単調に感じられたが、ほんの少しずつ散りばめられてきた“千枚通しの男”の件が第5話を機にようやく動きそうで、坂口憲二演じる、風間の“裏のバディ”の登場もあって、「これを待っていた」という視聴者は少なくないのではないか。

 後半戦に差し掛かるところでようやくおもしろくなってきそうな雰囲気が強まったので、正直言えば今は期待のドラマとなっているのだが、「序盤ランキング」という名目上、第4話までのガッカリ度合いでこの順位に据えた。後半の巻き返しに期待したい。

ガッカリドラマ1位 『unknown』火曜21時~(テレビ朝日系)

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『unknown』ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
「週刊熱波」のエース記者である闇原こころ(高畑充希)は、相棒カメラマンの加賀美圭介(町田啓太)と共に、清純派女優のスクープつかむため張り込みをしている。こころは、恋人である交番勤務の警察官・朝田虎松(田中圭)と付き合い始めて1年。さらには次のデートがこころ30歳の誕生日の当日だと知った加賀美は、「そろそろプロポーズ来るんじゃない?」と囃し立てるも、こころは複雑な表情を浮かべる。その正体は吸血鬼。普通ではない自分がコンプレックスで、これまでの恋愛もずっとうまくいかなかった。好きだからこそ、虎松に全て打ち明けたい。だけど、「秘密」を知っても、彼は私を愛してくれるだろうか――?

 千鳥ノブでなくても「クセが強い!」と言いたくなる本作。高畑充希演じる主人公が吸血鬼で、その父親が吉田鋼太郎で、『おっさんずラブ』チーム再集結ということで察するべきだったが、ふたを開けるとバリバリのコメディだった。しかし、ティザービジュアルなどでは、2人が暮らす町で発生する凄惨な殺人事件が主軸となりそうな「本格サスペンス」色を打ち出していたのだ。この手口、前期のテレ朝木曜ドラマ『警視庁アウトサイダー』と似ている。どう考えてもサスペンスを期待していた層がこのノリについていけるはずないと思うのだが、なぜこんな宣伝手法を行うのだろうか。

 表のパッケージと中身が違ったのはさておき、公式で「2人のラブストーリーと並行し、ピリッとスパイスを効かせる」と表現されているように、連続殺人事件のほうは本当にただのサイドストーリーで、このドラマのメインはラブコメなのだろう。田中圭演じる虎松のほうも、父親が殺人事件の犯人(らしい)という“秘密”があり、連続殺人事件と結びついていきそうだが、とにかくこの事件のほうは遅々として話が進まないのだ。あからさまに吸血鬼の犯行と見せかける(ので吸血鬼の犯行ではないと思われる)連続殺人事件、ただの恋の当て馬役に終わるわけはなさそうな町田圭太演じる加賀美の行動など、考察要素も薄い。結果、秘密を打ち明けるか悩みながら、乗り越えていくラブストーリーを、不意に訪れる吉田鋼太郎劇場なども交えてコミカルに描くドラマとなっている。中身は基本的に『吸血鬼に結婚は難しい』というタイトルでもよさそうな内容で、そちらに話を絞っていれば、もう少し楽しく観られた気がする。設定が設定だけに、どんな突飛な展開になってもおかしくないわけで(たとえば『ときめきトゥナイト』よろしく、加賀美が実は魔界の王子だとか)、テレ朝が謳うような「本格サスペンス」はそもそも成立しづらいわけだが……。

 吉田鋼太郎が町田圭太にキスしそうな距離まで顔を近づけたり、千葉雄大や志尊淳をカメオ出演させたりと、『おっさんずラブ』色をプンプンと匂わせる内輪ウケのノリが強いつくりも、個人的には引っかかる。実力派キャストを中心とした演技は申し分ないだけに、後半戦はしっかり「本格ラブ・サスペンス」となることを期待したい。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2023/05/19 12:34
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