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『THE SECOND』松本人志の発言から見えた「松本基準」への違和感

『THE SECOND』松本人志の発言から見えた「松本基準」への違和感の画像1
松本人志

 結成16年以上の漫才師を対象とした『THE SECOND~漫才トーナメント~』(フジテレビ系)が5月20日に開催され、吉本興業所属のギャロップが優勝した。

 現役の芸人が審査員を務めるお笑い賞レースが多い一方で、『THE SECOND』では100人の観客が1~3点でネタを採点し、その合計点(満点は300点)で争うという審査方法を採用。まさに“眼の前の客をいかに笑わせるか”が基準となった大会だ。そんななか、大会アンバサダーとして登場したダウンタウン松本人志のいくつかの発言に違和感を覚えたとの声もある。

「松本さんが金属バットに対して、“いつかM-1の決勝戦に上がってくると思っていたから、これまでちゃんとネタを見てこなかった”と話していました。

 THE SECONDとは直接関係ない発言でしたが、松本さんはM-1で審査するにあたって、“新鮮味”や“初見でのインパクト”というもの加点のための基準として持っているんだろうなということが伝わってきます。でも、それは漫才の技術とはまた別の話であって、プロ目線ではないような気もするんですよね……」(エンタメ誌ライター)

 たしかに、現役の芸人の審査員に求められるのは、プロでしかわからない部分をしっかりチェックする目線であり、インパクトがあったかどうかは素人でもわかること。お笑い界のトップに立つ松本人志に求められる審査基準ではないだろう。

「松本さんが金属バットを見ないようにしていたことで、金属バットはM−1で結果を出さない限り世に出てこれない状況になっていたと思います。つまり、金属バットのチャンスを奪っていた可能性すらある。ほかにも、松本さんのちょっとしたさじ加減が間接的に影響して、チャンスを逃している芸人はいると思いますよ」(同)

 また、準決勝第1試合ではマシンガンズと三四郎が対戦。マシンガンズのネタでは、Yahoo!知恵袋に投稿された自分たちへの悪口をプリントアウトしたものを読むという流れがあった。

 松本は「紙を出してきたのがどうとられるか、というのはあるでしょうね。プロの審査員ならちょっと…というところもあるかもしれないですが」と発言。漫才に小道具を使ったことが減点対象になる可能性を指摘した。

 しかし、結果はマシンガンズが284点、三四郎が256点でマシンガンズが勝利。この284点は、準決勝第2試合でのギャロップと囲碁将棋と並んで、グランプリファイナルでの最多得点である。

「一般審査員は漫才にちょっとした小道具がでてきたからといって、減点はしないということです。松本さんの“審査基準”は、必ずしも本質的ではないとさえ言えると思います。そもそも、M-1グランプリでも、小道具を使うコンビが決勝に上がってきたこともあるし、それが減点対象になるとは言っていない。松本さんの中にある“基準”と、それ以外の人々の“基準”とのズレを感じざるをえません」(同)

 オリエンタルラジオの中田敦彦は、5月3日に放送された『あちこちオードリー』(テレビ東京)で「芸人の世界って、価値観がかなりカッチリしてるじゃないですか。『これがおもろい、これはおもろくない』(というように)。でも、本当は面白いものはいっぱいある。なのに、価値観を決めてる組織がいるじゃないですか」と発言し、波紋を呼んだ。その“価値観を決めている組織”というのが、松本人志やその周囲の人々なのではないかと噂されていた。

「奇しくも、今回のTHE SECONDでは松本さんが自身の価値観をあらわにする場面があり、しかもその価値観が必ずしも絶対ではないということも露見されたわけです。もちろん、“松本さんが間違っていて、一般審査員こそが正しい”ということでもなく、いろいろな価値観があっていいということ。お笑いの多様性を認めていくためには、観客審査のTHE SECONDはとても意義深いものになったと思います」(同)

 松本人志がお笑い界のカリスマであることは間違いないが、松本人志らしくあることだけがお笑いではないのも確か。あまりにも“松本主義”に傾倒しすぎた今のお笑い界を軌道修正するという意味でも、THE SECONDは重要な存在となっていきそうだ。

浜松貴憲(ライター)

1980年生まれ、東京都出身。大学卒業後、出版社に入社。その後、いくつかの出版社を渡り歩いた末に、現在はフリーライターとして、テレビ番組、お笑い、YouTubeなど、エンターテインメント全般について執筆している。

はままつたかのり

最終更新:2023/05/24 20:00
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