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『水ダウ』クレバーな伊集院光VS山之内すずの「詐欺被害防止VTR」

『水ダウ』クレバーな伊集院光VS山之内すずの「詐欺被害防止VTR」の画像1
『水曜日のダウンタウン』(TBS系)公式Twitter(@wed_downtown)より

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(6月18~24日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

伊集院光「その引き方にちょっと引いてんだよね、俺らからすると」

 21日の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、興味深い説が放送されていた。「昭和はむちゃくちゃだった系の映像、全部ウソでもZ世代は気づかない説」だ。昭和はむちゃくちゃだった、そんな映像を本当にすべてむちゃくちゃにしてウソだけで構成したら、はたしてZ世代は信じるのか。それを検証する企画である。

 昭和世代代表として偽番組に参加したのは伊集院光(昭和42年生まれ)、FUJIWARAの藤本敏史(同45年生まれ)、ケンドーコバヤシ(同47年生まれ)の50歳代に加え、御年80歳の中尾彬(同17年生まれ)だ。伊集院、フジモン、ケンコバの3人がプレゼンターとして昭和の映像を紹介する。中尾は彼らより上の世代として、よりハードな昭和のエピソードを語る役目だ。

 なお、4人はどんな映像が出てくるのか事前に知らされない。初見の映像に乗せてウソのエピソードを語らなければならない設定である。偽番組の司会を務める千原ジュニア(千原兄弟)は、番組の設定の前に戸惑う4人を前に次のように言った。

「まあ言えば、おしゃべり大喜利です」

『水曜日のダウンタウン』にはこういった、無理な状況に追い込まれた芸人たちは口八丁手八丁で相手を言いくるめられるか、みたいな設定の説が多くある。たとえば「『いい意味で』をつければどんな悪口でも怒られない説」。このときはみなみかわがパンツェッタ・ジローラモに「いい意味でイタリアの恥さらし」と言わざるをえない設定に置かれていた。もちろん今回のZ世代の面々はジローラモのように「殴ろうか」なんてことは言わないので、ヒリヒリ感の度合いは違うのだけれど。

 さて、今回ターゲットとなるZ世代代表として登場したのは、山之内すず(平成13年生まれ)、松本勇輝(同15年生まれ)、木村伊吹(同15年生まれ)、ゆいちゃみ(同17年生まれ)だ。こちらは偽番組であるということすら知らされておらず、普通の昭和VTRを見る番組だと思って出演している。

 企画は、ある意味で対決の構図のように進んでいく。ウソのエピソードを即興で語らなければならない年長世代は言いくるめられるのか、昭和当時でもアウトだっただろうあまりにもありえないウソを紹介される若者世代は見破れるのか、勝つのはどっち、みたいな。昭和世代側が即興で語らなければならない状況がそんなゲーム性を生んでいて、企画の設定の妙も感じる。年長者が一方的に若者を騙す、みたいな構図に結果としてならないところも絶妙だ。ある意味どちらもドッキリにかけられているようなものだから。

 ただ、単なる検証企画ではなく対決構図の面白さが生まれたのは、何より2人の出演者のパフォーマンスによるところが大きいかもしれない。

 昭和世代の側で目を見張ったのは伊集院光である。プレゼンターとして伊集院が紹介したのは昭和の電車の映像。昔はいま以上に電車が混雑していたから、電車に乗り切れない人は車両の屋根の上に乗っていたとか、運転手も朝の混雑時には屋根の上に乗る乗客に配慮してカーブはスピードを緩めて走っていたとか、そんな嘘八百が並べられる。

 もちろん、合成された映像と「乗り入れ整備が進んでいなかったことが主な原因」といったナレーションで、それっぽく紹介される。ただ、あまりにもありえそうにないエピソードだ。VTRを見た山之内すずは、いきなり企画の正体を見破るようなコメントをする。

「ホンマに見たことない映像すぎて、ドッキリじゃないかって今すごい思ってるんですけど」

 鋭い。が、これを伊集院が切り返す。

「その引き方にちょっと引いてんだよね。俺らからすると」

 絶妙な切り返しだ。堂々とこう言われると、これ以上ドッキリを疑うことは難しくなるかもしれない。その後も伊集院は「法律で厳密にいうと『乗ってください』とは言ってないんだけれども、ああしないともう輸送ができないから、体力に自信がある人とかはああやって乗るし。でもそのかわりに子どもとか、それから女性は中に入ってくださいみたいなことはちゃんとやってたけどね」と周辺情報を補足し、それっぽさを補強していく。

 その後も、ケンコバやフジモンらがプレゼンターになったときに情報を補足したり、中尾やフジモンのミスをフォローしたりなど、八面六臂の活躍をする伊集院だった。

 収録が終わると、ケンコバが指摘した。

「伊集院さんはマジで詐欺師になれますね」

 倫理的な詐欺師。確かにそう言えるかもしれない。いい意味で。

山之内すず「3個でこんだけ差があるってことは、何十年あると、そりゃ変化はありますよね。そっかそっか」

 伊集院は90年代からずっとテレビで活躍しているけれど、現在の世の中的なイメージの中心はラジオのほかには『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)での「ひらめきの天才」みたいなところだろうか。短い時間で自分の頭のなかにあるさまざまな知識を総動員しながら正解を探り当て、有名大学出身者とクイズで互角に渡り合っていく。そんな姿に添えられた異名だが、今回の昭和のウソエピソードをそれっぽく話すというのも、そんな「ひらめきの天才」の能力が発揮された場面だったように思う。

 伊集院はかつてこんなことも言っていた。

「クイズ番組に出てて、つまんないクイズとおもしろいクイズがあってね。つまんないクイズって、要は人が覚えてないようなことを覚えてるクイズ。なんの興味もないんですよ。考えたらわかるのかもしれないと思いながら考えてる時間が、僕の中でのクイズの楽しさ」(『100分de名著』NHK Eテレ、2021年3月21日)

 考えたらわかるのかも思いながら考えている時間。伊集院にとっては、そんな面白いクイズに答えているような時間だったのかもしれない。

 さて、事前に情報が知らされないなかウソのエピソードを即興で語らなければならない年長世代と、昭和当時でもアウトだっただろうあまりにもありえないウソを語られる若者世代、勝つのはどっち。そんな対立構図を昭和世代側で支えたのが伊集院だとすれば、Z世代側から支えたのが山之内すずだ。

 すでに触れたように、少なくとも放送された映像上、真っ先にドッキリを疑っていたのが山之内だった。その後も、あまりにありえないエピソードを疑う様子を見せていく。

 たとえば、昭和は満員電車に人を押し込むために駅員では力が足らないので、日本大学の相撲部の学生をアルバイトとして動員していた、といった話を中尾彬がしはじめたときのこと。いや、そこまでならまだ想像できるかもしれない。ただ、裸で相撲部員がホームに立っていたといった蛇足を加えるので、一気にウソっぽくなる。苦し紛れだろうか、中尾が「言ってる意味わかる?」とねじ伏せ気味に山之内に確認する。が、彼女は「意味はわかるんですけど、ちょっと腑に落ちないですね」と切り返すのだった。

 あるいは、やはり中尾が、校則を破った生徒は校庭でドーベルマンに追いかけられる罰を受けていた、といった話をはじめたときのこと。あまりに突飛な話にフジモンも思わず笑ってしまっていたが、これに山之内は「ドーベルマンはどこから連れてくるんですか」と冷静にツッコんだ。

 他方で、むしろそのクレバーさゆえか、山之内はウソのエピソードを自分で補完し納得してしまうような動きも見せていく。たとえば、昭和の学校では中学卒業後に就職する人も多かったので学校でお酒を飲む授業があった、みたいなこの企画でも指折りのウソが紹介されたときのこと。伊集院が「今は絶対ダメだけど、百歩譲ってあのころの時代をかばうならばだけどね、ああやって飲んで『あ、俺はお酒弱いんだ』とかもみんなわかるじゃん。それもまぁ勉強っていうか、社会に出るからすぐに、わかったほうがいいっていう」と絶妙なフォローをするのだが、これを聞いた山之内は「ハタチになってわけわからずに一気に飲んで倒れたりするよりかは、ちゃんと先生の目が届くところで」と理解する。ウソを聞いている側も参加した合作のウソのようなものができあがっていた。

 あるいは収録の合間のシーン。隠しカメラでZ世代の4人が雑談をする様子が映されていたのだが、山之内は自分より2~3歳ほど年下の出演者に小学生のときのランドセルの色について質問していた。自分のときよりもランドセルの色が多様になっていると気づいた山之内は「3個でこんだけ差があるってことは、何十年あると、そりゃ変化はありますよね。そっかそっか」と自分から納得していく。

 ウソとウソのあいだを自分の想像で埋めてストーリーをつくっていく。まるで詐欺被害防止の教材に使えるような、自分は騙されないと思っている人間が詐欺に引っかかる過程を見るようでもあった。あるいは、自分でもウソと感じるエピソードを紹介する番組に仕事として出る矛盾をなんとか自分のなかで説明しようとする、人間の合理化の過程について説明した心理学の教材のようだった。

 さて、こうやって山之内の立ち回りを振り返ってみると、今では考えられないエピソードに若者としてツッコミを入れ時代の変化を印象づける、というのは山之内がこの手の番組上で求められる立ち回りなのだろう。ある意味で、そういう立ち回りを的確にこなしたと言えるのかも知れない。

 一方、あまりにも的確にこなすので、攻めるZ世代と守る昭和世代の関係の面白さがより浮き彫りになっていた。この企画、最初からそんな攻めと守りの構図がどこまで見えていたのかはうかがい知れないけれど、伊集院そして山之内のうまさがその構図を引き立てたのは確かなように思う。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2023/06/28 12:00
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