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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.751

音楽ドキュメント『シーナ&ロケッツ 鮎川誠』 愛することがロックだったマコとシーナの伝説

「お前なら、できるさ」という肯定の言葉

音楽ドキュメント『シーナ&ロケッツ 鮎川誠』 愛することがロックだったマコとシーナの伝説の画像5
鮎川誠にとって、ステージは「シーナに会える場所」だった

 鮎川誠とシーナを知る、さまざまな音楽関係者たちが登場する。甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)が振り返る鮎川との出会いのエピソードは、ひときわ印象的だ。

寺井「高校生だった甲本さんは、当時はまだ音楽活動をしていなかったものの、ロックが大好きで、岡山のラジオ局を鮎川さんが訪れた際に会いに行ったんです。鮎川さんは初対面だった甲本さんとお互いに好きなロックについて語り合い、甲本さんが『いつか僕もロックをやって、シーナ&ロケッツと対バンしたい』と言ったところ、『お前なら、できるさ』と返したそうです。このエピソードは、甲本さんがずいぶん前に語っていた記事を読んだことがあったので、お忙しい甲本さんにお願いして、インタビューに応じてもらいました」

 鮎川の「お前なら、できるさ」という肯定の言葉がなければ、人気バンド「ザ・ブルーハーツ」は生まれなかったかもしれない。甲本へのインタビューは30分ほどだったが、甲本はこうも語っている。

「鮎川さんとシーナさんがいなくなったことは大したことじゃない。“いた”ってことがすごいんだ」と。

寺井「甲本さんは一生かかっても返しきれないほどの恩義を、鮎川さんに感じているそうです。でも、甲本さんのコメントは、言葉でできる最高の恩返しじゃないでしょうか。他のコメントをしてくれた方たちもそうです。鮎川さんとシーナさんがいなくなった寂しさよりも、2人に出会った楽しかった思い出ばかりを、みなさん語るんです。追悼作品らしくない、明るいものに仕上がっています。シーナ&ロケッツのファンだけでなく、2人を知らない人たちも、『こんなすごい人がいたんだ』と驚きながら、楽しめる音楽ドキュメンタリーになったんじゃないでしょうか」

 人を愛することがロックだった。鮎川誠とシーナは、とてもシンプルで大切なことを教えてくれる。そしてシーナ&ロケッツは、ロックの歴史の中でこれからも生き続けるに違いない。

『シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~』
監督・編集/寺井到 撮影/中牟田靖、宮成健一、丸本知也 編集/高尾将 音効・MA/寺岡章人 ナレーション/松重豊
配給/KADOKAWA 8月11日より福岡先行上映中 8月25日(金)より全国公開
©RKB毎日放送/TBSテレビ
rokkets-movie.com

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最終更新:2023/08/17 19:00
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