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山口組分裂から8年も存続する「神戸山口組」…今後も犠牲は増え続けるのか

六代目山口組総本部
現在も使用制限がかけられている六代目山口組総本部

 今から8年前の8月、ヤクザ業界のみならず、社会全体がその後の動向に注目することになる事態が起きた。それが日本最大ヤクザ組織「山口組の分裂」となる。

 前触れもなく突如起きた事態にさまざまな情報が錯綜する中で、六代目山口組を離脱した勢力によって翌9月に発足されたのが、山口組と同じ代紋を掲げた「神戸山口組」だった。

 中でも、特に注目されたのが、五代目山口組時代に当代を輩出させた最大勢力の山健組宅見組が、神戸山口組の中核として、旗揚げに参加したことだった。他にも、六代目山口組最高幹部といわれる、執行部経験のある組織、俠友会(現在は解散)、池田組、正木組(同)なども参画し、普段はヤクザネタには関心が薄いマスコミメディアも連日、分裂騒動を取り上げることになった。

 「当時は、昼の情報番組でも、毎日のように山口組の分裂騒動を取り上げていました。数字が取れていたんです。昼の情報番組といえば、主に主婦層がターゲットとなるんですが、そこにも突き刺さったんです。興味の対象は、ヤクザの持つ暴力性というより、山口組という巨大組織のお家騒動という点。昔から、伝統芸能や大企業におけるお家騒動はワイドショー的には格好のネタでしたが、山口組分裂騒動もそれらと同列にとらえられたのでしょう」(テレビ関係者)

 そこから、両陣営によるTwitterを使ったSNS合戦や、神戸山口組による繁華街の練り歩きと いったデモンストレーションが展開されたが、判官贔屓も後押しされ、神戸山口組がまるで山口組に拮抗しているような印象を与え続けた。だが、そんな状況も長くは続かない。本家である六代目山口組は、離脱した組織に対して暴力を行使し続け、圧倒的優位に立っていったのだった。

 「ヤクザの武器は、なんといっても暴力。それがバックボーンにあるからこそ、通らない話でも通るのだ。山口組サイドは例え実行犯が無期(懲役)になるようなことになっても、離脱した組織に制裁を加え続けた。神戸山口組はそれに対して、いつしか防戦一方となっていき、次第に内部崩壊を繰り返すことなっていった」(ヤクザ事情に詳しい関係者)

 まずは、神戸山口組発足時に先陣を切って、デモンストレーションを展開させた現・絆會 が離脱。その後、資金力に定評のある池田組の離脱。神戸山口組の主軸を担っていたはずの山健組、宅見組の離脱。一度、衰退し始めた神戸山口組の弱体化を止めることはもうできなかった。

 それでも、神戸山口組は現在も存続し続けている。

 「『もう良いんじゃないか』という声は内外から起きていると何年も前から言われている。それでも頑なに神戸山口組の井上邦雄組長が、『1人になっても引退、解散はしない』と宣言しているといわれるように、神戸山口組はまだ存在している。そのお陰で、これからも懲役に行かなくてはならない組員は出てくるだろう。しかも、対立が続く限り、両組織に課せられた規制は解かれず、事務所が使えないなど、さまざまな制限を受け続けることになる。神戸山口組が誕生したときは『若い衆のために』みたいなことも言っていたが、結局、あれはなんだったんだ、とみんな思っているのではないか」(業界関係者)

 神戸山口組が解散しない限り、すでに勝敗が決していても、厳しい規制が設けられた特定抗争指定暴力団体の認定が解除されることはないだろう。そして、六代目山口組も攻撃の手を緩めることはないと考えられる。結果、さまざまな犠牲は増え続けるのだ。

 神戸山口組が発足された際、誰が同組織の今日ほどの衰退を予想できただろうか。最終局面に入ったといわれて随分の月日が流れている。果たして、神戸山口組は今後どうなっていくのだろうか。解散があるとすれば、それがつまり、8年続いた山口組分裂の終止符になることを意味するのだろう。

(文=山口組問題特別取材班)

ヤクザ業界をフィールドとする作家、ライターおよび編集者による取材チーム。2015年の山口組分裂騒動以降、同問題の長期的に取材してきた。共著に『相剋 山口組分裂・激動の365日』(サイゾー)がある。

やまぐちぐみもんだいとくべつしゅざいはん

最終更新:2023/08/29 18:29
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