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『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ』第10話 失敗を笑うのはやめましょう

第10話 12月24日17時50分~20時6分 | TVer

 さて、第10話です。毎回、あーだこーだと文句を言いながら、ちゃんとこの『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)というドラマを解読しよう、せめて全体像だけでも把握しよう、意図だけでも汲み取ろうとしてきました。

 7話までの「3主人公、3シチュエーション」を並走させて、それぞれに影響を波及させていくという作劇は、残念ながら失敗していました。特に大沢たかおシェフのパートは、ほぼすべての時間帯を雑談によって浪費しました。

 8話では、合流したシチュエーション同士の生むダイナミズムに期待しました。あらかじめ設定された情報がおおむね開示され、ここからは本来このドラマがやりたかったサスペンスが始まると期待しましたが、続く9話で早くもその期待は霧散しました。

 ニノと江口洋介、ニノと中川大志、中谷美紀と大沢たかお、そういう1対1の会話は緊迫感こそありましたが、どれも唐突で、強引で、到底ドラマの展開を視聴者に理解させるものではありませんでした。バラバラに、画面だけが深刻なシーンがガチャガチャと並んでいました。まるでダイジェストのような、無意味な映像が羅列されました。

 そして今回の第10話、そのガチャガチャの意味不明な羅列がなんのためだったのかがわかってきます。要するに『ONE DAY』はクライマックスで、「裏切りの連鎖」というものをやりたかったわけです。彼らが本当に本当のことを言って物語を進行してしまっては、「裏切り」が発生したときに矛盾を生んでしまう。だから9話では、あんまりハッキリしたことは言えない。なんとなく含みを持たせておかなければならない。そういう作劇上の都合が作用して、結果、わけのわからん会話シーンが積み重ねられていた。

 警察の中に犯罪組織との内通者がいる。犯罪組織内に裏切り者がいる。警視庁と神奈川県警の間で、目的の齟齬(そご)がある。そうした状況の中で、各々が騙し合い、裏をかき合い、抜け駆けしようと奔走する。義理とメンツと倫理と保身の間で人間たちがもがきながら、必死に守るべきものを守ろうとする。8話から始まった本来の『ONE DAY』は、そういうドラマでした。

 まあ、欲張りなことです。とにかくギミックをやりたかったんだ、この人たちは。でも、その志は高いと思います。年末のフジテレビ月9、クリスマスシーズンにかかる1クールドラマで、単なる恋愛劇じゃなく、いわゆる「超大作」を目指した。「今回の月9は、なんか違うぞ」「ちょっとスゴイことやってるぞ」と、世間を驚かせようとした。

 こういう言い方は好きじゃないけど、つまりは「大人でも楽しめる」というものを本気で目指したんだと思うんです。『大停電の夜に』(05)と『パルプ・フィクション』(94)と『24 -TWENTY FOUR-』(01)をモチーフに、後半には『インファナル・アフェア』(03)まで持ってきた。それこそ『ラブ・アクチュアリー』(03)でいいのに、あくまで「本格」であろうとしている。洋食屋のパートはあいかわらず無茶苦茶だけど、クライマックスに及んでもきっちりコメディリリーフの役割だけは守っている。コメディのまま、ドラマを語り切ろうとしている。

 月9でタランティーノをやるんだ、スコセッシをやるんだ、それが『ONE DAY』というドラマの正体、根っこの部分だったんだと感じました。

 盛大に失敗しています。やりたかったことの1割も伝わってないと思う。でも、もうこの作品を口汚くののしったり、揚げ足をとって笑いものにしようという気にはなりません。創作者が欲をかいて、より面白いものを作ろうとして失敗した。それだけのことだった。むしろ、ここまで大きな失敗をできる環境があることが、現在におけるドラマというジャンルの懐の深さだとさえ思う。

 最終回を前に、ここまで総括しちゃって次回の原稿は大丈夫なんでしょうか。今は、それだけが心配です。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/01/31 12:11
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