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『さよならマエストロ』第6話 超ベタな群像劇は序章に過ぎなかった

第6楽章 さよならコンサート | TVer

 TBS日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』の18日放送分は第6話。晴見フィルのホームであるあおぞらホールの閉館がいきなり1カ月繰り上げになり、急遽、さよならコンサートが行われることになりました。

 演奏曲はビゼーの有名なオペラ「カルメン」です。振り返りましょう。

■それは序章に過ぎなかった

 マエストロ(西島秀俊)の気を引こうと躍起なフルート・ルリさん(新木優子)は、さよならコンサートで「ハバネラ」を歌うことに。前回、練習室でマエストロに迫っているところをみんなに見られてひと悶着起こした女性だけに、自他ともに認めるイメージぴったりの曲のようです。

「Si je t’aime,Prends garde à toi!(もし私があなたを愛したら、気を付けて!)」

 そんな歌詞。

 今回も、コンサートを控えたホールの客席でひとりごちるマエストロの前に現れ、「私のこと避けてますよね……傷つきました……」などと言い出しましたので、またメロドラマをやるのかな、それは前回見たよぅと思っていたら、そのへんは序章でしかありませんでした。

 マエストロはルリさんのフルートの音色から、実は彼女が「優しくて、とても繊細で傷つきやすい人」であることを見抜き、コンサート当日になって「ハバネラ」の歌唱パートを取りやめ。フルートがメインで優しい旋律を奏でる「メヌエット」からコンサートを始めることにしました。

 コンダクターの真横で「メヌエット」を吹くルリさん。その目線の先には、6歳のときに離婚してしまったという父と母が、それぞれの家族を連れて演奏を聞きに来ています。

 一方、40年前から晴見フィルの一員としてバイオリンを弾いてきたコンマス・近藤さん(津田寛治)には夢がありました。指揮者になりたかった。その夢を聞いたマエストロは、晴見フィルにとって最後の演奏になる曲の指揮をコンマスに託します。

 マエストロは言わずと知れた世界的な天才コンダクター。近藤さんは地方のアマチュアです。当然、指揮者としても音楽家としても実力は劣るわけで、マエストロの後に指揮棒を振ることなどためらってしまうわけですが、そんな近藤さんにマエストロは告げるのです。

「指揮者に必要なのは、何だと思いますか? アパッシオナート、音楽への情熱です!」

 演奏曲は「ジプシーの踊り」。盛り上がるやつですね。

 そうして実に平和に、みんな満足気に、晴見フィルのさよならコンサートは幕を閉じたのでした。

 なんだか最終回みたいだな、と思って見てたんです。というか、ここまでのドラマだと思っていた。

 廃団寸前の田舎のアマオケに天才コンダクターがやってきて、団員集めやトラブルに苦労しながら、さよならコンサートまでたどり着く。このドラマだったらマエストロの娘が若くして音楽に絶望しているバイオリニストだったりするわけで、コンマスに病気とか事故とかあって、代わりに第1バイオリンに娘が加入。父親の指揮で娘が演奏して家族の絆が復活してよかったね、と。そういう話で最後まで行くのかと思ってた。

 全然違いましたね。あくまで晴見フィルはマエストロの音楽家としての情熱を呼び覚ますための段取りであって、ここからが『さよならマエストロ』だったわけです。第6話までは、序章に過ぎなかった。

■ベタな群像劇は終わり、ドラマはどこへでも行ける

 最終回みたいだと思った理由として、このドラマは群像劇として満足感の高いものだったんです。

 アンニュイなチェロ(佐藤緋美)にしても、天衣無縫な指揮者志望の女子高生(當真あみ)にしても、キャラ付けが絶妙な上にマエストロと関わりを持ち始めるきっかけのエピソードが秀逸でしたし、その分、印象も強烈だった。マエストロの導きによって変わっていく若者2人を見ているだけでも楽しかったんですよね。

 それにコンマス近藤さんも初回から粒立ちがありましたので、なんかあるだろうなということは感じさせていたし、フィルと潰そうとする市長(淵上泰史)にもラスボス感があった。市長に「音楽なんて意味あるんですか?」みたいなことを言われて、マエストロが激昂するシーンなんてあってもいいな、とか勝手に想像してたわけです。

 そうやって脇役たちが丁寧に描かれていたからこそ、こういう群像劇の展開はベタでいい、ベタだからこそいいと言っていたわけですが、それはここまで序章を見せるための作り込みだったのかもしれないとなると、なかなか剛腕な作り手だなと驚かされます。

 予告では、どうやらマエストロはドイツの楽団からオファーが届くようです。音楽への情熱を呼び覚まされたマエストロがどう決断するのか、再び家族と離れて音楽の道に没頭していくのか。

『さよならマエストロ』というタイトルが、ようやく動き出したわけです。ここまできれいに序章をまとめ上げれば、ドラマはどこへでも行ける。

 次回も楽しみです。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/02/19 17:00
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