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緊急対談! 高須基仁(元役員)×文化芸能部長

内外タイムス倒産の内幕「オーナーの逮捕が決定打だった……」

kunishima_takasu.jpg国島氏(左)と高須氏(右)

 11月30日、内外タイムス社が自己破産申請を行い、創刊60年の歴史に幕が下ろされた。「内外タイムス」は9月に「リアルスポーツ」と紙名を変更し、新たなスタートを切ったばかりだった。

 一時は同社の経営に携わり、同紙名物コラムニストとしても長く活躍してきたヘアヌード・プロデューサーの高須基仁氏が、同社文化芸能部長・国島泰太郎氏と対談。破産の真相に迫った。

高須 私が常務取締役兼社長室長兼出版局長をやっていたのは、02年。元オーナー・恩田貢氏のご子息である恩田葉一郎氏と仲が良かったという縁で入った。私の仕事は、当時「ナイタイ(ナイトタイムス)」から独立し、経営に乗り込んできた風俗情報会社「シーズ」を追い出し、恩田一族に経営権を取り戻すこと。そのとき国島くんは文化社会部デスクだったな。当時は社員が60人くらい、ボーイ(新聞社において庶務を担当する者)までいて新聞社の体をなしてた。レコード大賞の審査員にも加わってたし。

国島 僕も一回審査したことがあります。

高須 給料もそこそこよかった。でも、すでに赤字体質ではあった。当時の刷部数はだいたい5万部。それが徐々に落ちてきて、最終的には刷部数3万部まで落ちた。なにが問題だったと思う?

国島 風俗広告が落ち込んだことでしょうね。

高須 昭和30年代のコメディアン・トニー谷は「男の上半身は『朝日新聞』、下半身は『内外タイムス』でできている」と言っていた。風俗の3行広告は内外タイムスの特徴だった。それが落ち込んだのは、石原慎太郎がエロの規制を厳しくしたせいか?

国島 それもありましたね。高須さんがいらっしゃった頃は、月1億円以上広告収入があったと聞きました。それが徐々に減り、社員数も減っていきました。かつて5人くらいいた校閲も、最後は一人もいませんでした。

●公称50万部、実売は5,000部……。

高須 刷部数は3万部だけど、当時から実販は返品が9割という日もあった。売れて1万部、通常は4,000、5,000部の世界。たった130円の新聞が。でも公称は実販50万部で広告をとってた。私が半年で解任された理由はそこ。サイゾーで「実販は50万部もない、5万部だ、嘘をつくな」と、それでも多く見積もって書いたのだが、「高須さん、こんなことを書くのは問題だ」と役員会議でもめた。「私は問題とは思わない、それなら辞めるよ」と。しかし、実際は1万部しか売れてないのだから広告の効果はなく、そのことに広告主も気づき広告が減り、最後は月5,000万円もいかなくなった。

 また、03年恩田貢氏が癌で亡くなり、その翌年、印刷を請け負っていた廣済堂の桜井文雄会長が亡くなったことも経営圧迫の一要因となった。2人の結びつきがなくなり、金銭の貸借だけが残された。すでに内外タイムスは印刷費の未払いが20億円近くあった。それで「今後は前払いしないと刷らない」ということになり、内外タイムスは1週間分約800万を先払いして刷ることになった。最後の方はそれすら追いつかなくなり、従業員を40名まで減らし、給与も普通の新聞社の半分以下になった。
 
 そんな状況の中、従業員はカタルシスで生きた。新聞労連から金借りて印刷費をつなぎ、「リアルスポーツ」に名称を変更。紙面は圧倒的によくなった。ところが部数は堕ちる一方……。

国島 「内外タイムス」時代から読んでた人が、名称変更により多少離れたと思います。紙面はマシになったから、離れた分、新い読者をつかんで、結局横ばいだったんじゃないかと。

高須 この10年を振り返ると、恩田貢氏、シーズ、恩田氏のご子息、不動産会社のアムス・インターナショナルと経営陣が入れ替わって、最終的にはラバンナの南原貴裕氏がオーナーになった。南原氏の主たる事業は化粧品販売、競馬予想、不動産。6月1日に「内外タイムス新聞葬」をやり、それで9月1日から「リアルスポーツ」に名称を変更した。それが3カ月で破綻。これだけトップが入れ替わってきて、その間「やばいな」と感じたことはあった?

国島 経営交代するたびに上が外で動いていることが分かったので、またスポンサー探しをしているんだろうとは思っていました。今回も同様に、南原さんも手を引くんだということは感じとれたんですけど、もうそういうことに慣れちゃってて、誰か(次のスポンサーを)見つけるかな、いや、もう次はないだろうなといったことはみんなで話してたんです。

●オーナーの逮捕で破綻は決定的に

高須 破綻の理由は、南原氏がステロイド入り化粧品を販売し、薬事法違反でパクられたことが大きい。いよいよ「これ以上、無理だ」ということになったのだろう。11月中旬に、社長室長のW氏が私のところに来て、「高須さん、買ってくれ」と言ってきた。私はスポンサー探しに奔走し、あるIT関係の人がもしかしたら……という話になった。ところが、W氏は私のところに来る前に統一教会に売りに行って断られていたということが分かり、話がこじれた。宗教団体に売りに行くとは、なんということをするのだ、と。乗り気だったIT関係者も、首をかしげた瞬間だった。内外タイムスは、一時期オウムの関係者も入ってたんだよな。

国島 そうなんですか。

高須 そういった話し合いがあった矢先にこうなっちゃった。12月いっぱいは持つと思ったのだが……。社員に知らされたのはいつだった?

国島 破産申請した当日、30日ですね。通常通り朝仕事して刷り上がった後、11時頃、まず上の人間だけ集められてWさんから初めて聞きました。これまでの経緯と、「裁判所に破産申請をしていて今日受理されるので、明日からは(新聞が)出せない状況です」という説明です。そのときに「社長から説明がないのはおかしい」という意見が出され、Wさんが電話して「会社に来て説明してくれ」ということになった。それで午後1時くらいに、社員を集めて社長の説明を聞くことになりました。

高須 重森弘充社長はなんて言ってた?

国島 「いろいろがんばったけどダメでした」と。先ほど高須さんが言われた通り、「オーナーの南原さんが逮捕されて……」という説明がありました。

高須 社員ともめたりしなかった?

国島 労働組合の人は「経営責任が……」と怒鳴っていましたが、ほかは特にもめませんでした。ただ経営がラバンナに変わってから採用されて、まだ数カ月しか働いていない子がいたので、その子たちが一番かわいそうでしたね。社長から説明を受ける前、整理の女の子が明日の原稿のゲラを持ってきて「ここ○行出てます」って言ってきたんで「もう明日出ないから。見る必要ない」って言ったら、「ええっ!?」と言葉に詰まってました。他の若い子らも驚いてました。

高須 一度上層部以外の社員を入れ替えてるから20代、30代の若い子が多いんだよな。給料はどうなった?

国島 途中、ゴタついたときは遅配も何度かあり、11月も25日に入る予定が30日に伸びましたが入っていました。外部の取引先には2カ月後に原稿料が入るので、高須さんの9月分の原稿料も11月30日に入っています。10、11月分は……申し訳ないですが泣いてもらっています。

高須 仕方ない。最後はもうにっちもさっちもいかない状況。どうにもならないという諦観。10年間同じ苦しみを味わってきて、「もういいか」という状況だよ。

国島 社員の間にも「もういいか」という雰囲気がありました。

高須 よくがんばった。俺がいた頃は、借金まみれの中、毎朝5時半に出社し、国島くんと2人で一面をつくって、8時半に刷り出しが終わり、10時頃私は自分の会社に戻るという形でやってた。たった半年だったが、私もよくやったなと思う。国島くんも在籍して約10年がんばった。

reallive.jpgWEB版「リアルスポーツ」は「リアルラ
イブ」として再スタートを切っている。

国島 そうですね。いい経験させてもらった、という感じです。こんなスポンサーをコロコロ変えて生きのびた会社は珍しいですから。

高須 ウェブ版は継続するとか?

国島 ウェブ制作を委託していた会社が、「アクセス数がそれなりにあったから」ということで、「リアルライブ」と名前を変えて、自分のところでライターを集めて記事作りから始めるみたいです。

高須 国島くんの今後は?

国島 未定です。

高須 どんな会社だったと思う? 会社に対する怒りはない? 

国島 まったりした会社でしたね、基本は。トップが変わるたびに号令をかけて気合いを入れてくるから、最後も「挨拶はでかい声で!」なんて言われて、僕ら内心「アホらしい」と思いつつも、お金を出してもらってるから一応やってたというところはありましたけど。会社に対する怒りは、僕はありません。社内でもどっちかといえば僕のように「しょうがないな」と言う人のほうが多いです。やっぱり何度も同じようなことを繰り返してきたので、疲れちゃって……。

高須 全員経営者みたいなもんだよ。自分たちが担保になって、新聞労連からお金を借りて印刷費に当てていたんだから。私はみんなよくがんばったと思ってるよ。

Naitai magazine (ナイタイマガジン) 2009年 05月号

No.1風俗誌もいまは昔……。

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最終更新:2009/12/07 11:56
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