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大切な患者様は死なせない! 世界の医療業界が安楽死に大反対するワケ

hospital.jpgイメージ画像(「Thinkstock」より)

 11月1日、ひとりの女性が29年の命に終止符を打つ予定だ。末期の脳腫瘍と診断された米オレゴン州のブリタニー・メイナードさんが、州法で認められている安楽死を選択したのだ。当日、彼女は自宅の寝室で医師に処方された薬を服用し、人生の幕を閉じる。


 現在、安楽死が法的に認められているのは、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクに加え、オレゴンを含む米4州のみと、世界でも少数派だ。

 安楽死や尊厳死(延命治療を行わない消極的安楽死)の法制化に関する議論は、日本でもかねてから存在する。

 昨年、読売新聞が行った全国世論調査では、終末期における延命医療を「望まない」と答えた人が81%に上った。治療の担い手である医師たち自身も、本音は同様だ。医療従事者向け情報サイト「ケアネット」が2012年に医師を対象に行った調査では、「延命治療は控えてほしい」という回答が70.8%に達している。

 同年、超党派の議員連盟により「終末期の医療における患者の意思尊重に関する法律案」(尊厳死法案)が作成された。しかし、今年予定されていた通常国会での審議入りは、来年以降の通常国会に持ち越されることとなった。

 日本をはじめ世界の多くの国で安楽死・尊厳死の合法化を阻んでいるのは、「死ぬ権利」の主張以上に根強い反対の声だ。反対派の根拠としては、倫理や宗教的理由が挙げられることが多いが、外資系製薬メーカーの男性社員A氏(43歳)によるとそれだけではない。

「皮肉な話ですが、病人が多いほど儲かるのが医療業界。大切な患者様が命を自ら絶ってしまうということは、業界にとって損失につながる。特にICUでの延命治療は、病院にとって一番の儲けどころと言っても過言ではない。世界の医療業界は、安楽死が合法化されないよう、各国で反対派のロビイストを密かに支援している。日本で尊厳死法案が審議入りしても、廃案に持ち込もうとする国際的な圧力がかかるでしょう」

 医療業界の利益のため、意思に反して苦痛の中で生き永らえなければならないとしたら、これほど皮肉なことはない。一方で、「医療費や年金支出を削減したい日本にとっては、尊厳死の合法化は希望の光でしょう」(A氏)とも。国民の命は、結局、国や医療業界の損得勘定によって決められるということか……。
(文=奥窪優木)

最終更新:2014/10/28 14:00
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