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中島岳志が振り返る参院選「本当の勝者」<前編>

山本太郎は新時代の田中角栄か!? れいわ新選組の「躍進の謎」に迫る!

 7月に行われた参議院選では、与党側が選挙前の147から141へと議席を減らした一方、野党第一党となる立憲民主党が改選前の9から17へと議席を伸ばす結果となった。

 しかし、そんな結果とともに、史上2番目の低投票率となる48.8%を記録し、国民の政治に対する関心の薄さがますます浮き彫りに。「れいわ新選組(れいわ)」や「NHKから国民を守る党(N国党)」などの出現といった、不可解な選挙結果で多くの国民を混乱に陥れている。

  この選挙を、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志氏は、どのように振り返るのか? 今回の選挙において中島氏が注目をしたのは、選挙前、マスメディアではほとんど黙殺されていた「台風の目」。そう、山本太郎の登場を「事件」だと語る。その真意とは!?  

低投票率は日本だけではない! 

──まず、今回の参院選を全体として振り返り、中島さんとしてはどのように感じていますか?

 中島:今回、与党側の明確な勝利というわけではなく、安倍政権の権力が強化された形にはなりませんでした。選挙前には安倍4選も議論されましたが、その後押しになった選挙とは言えないと思います。一方、注目すべきは野党勢力。特に、「れいわ新選組」の活躍でしょうね。

 ──今回の参院選に向けて、山本太郎氏はれいわを立ち上げました。そして比例代表において、政党が当選者の優先順位をあらかじめ決められる「特定枠」という選挙制度を活用しながら舩後靖彦氏、木村英子氏の2人を議員として送り出しています。  

中島:山本太郎氏の出現は、日本政治史上の「事件」とも言うべき出来事。私は、世界史的な意味があると考えています。それを捉えるためには、政治学でこの20年にわたって議論されてきた「ラディカルデモクラシー」という概念を抑えなければなりません。

  自由競争を重んじる新自由主義が世界を席巻していくと、政策のほとんどを市場に任せることになり、政治が介入する余地が小さくなる。政治に代わって、金融資本が大きな力を持つようになっていきます。アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの『帝国』(以文社)などは、まさにそのような未来を予見する議論でした。

  そのような新自由主義が続き、かつ間接民主制の下では、主権者である国民は「自分の1票によって世の中が変わる」という感覚を得られなくなっていきます。選挙による生活の変化が期待できないから「1票の重さ」と言われてもきれい事にしか感じられない。その結果、「選挙に行かなくていい」という結論が導かれるんです。これは、日本だけでなく、多くの先進国で起こってきました。

 ──近年、国政選挙の投票率は60%を下回ることもあり、今回の参院選に至っては、48.8%という低投票率になりました。これは、投票によって「政治が変わる」という実感が持てない構造的な問題に起因しているんですね。

 中島:そこで注目されるのが、直接的な主権の行使を標榜する「ラディカルデモクラシー」です。これには、大きく2つの方向があります。

  1つ目が「熟議デモクラシー」というもの。特に、地方政治などの現場では、タウンミーティングや市民の意見を集めるグループワークを行いながら議論を練り上げていき、政策に反映させる事例も多くあります。首長・議会・住民が一緒になって議論を練り上げる参加型デモクラシーを作ることで、有権者は政治参加の実感が得られます。

  そして、もうひとつの軸が、ベルギー出身の政治学者であるシャンタル・ムフなどが提唱する「闘技デモクラシー」というあり方。争点を明確にし、境界線を引いていくことで対立軸を作っていく。そして、対抗者に対して「俺の声を聞け」と戦いを挑みながら権利や欲求を訴えていくことで有権者の情動を喚起していくという方法です。

  この図式を前提として考えた場合、霞が関と永田町で政治が決まる自民党のやり方は、ラディカルデモクラシーではありませんでした。しかし、この「ラディカルデモクラシー」の中でも、「熟議デモクラシー」としての運動がかつて日本でも起こったことがある。それが、立憲民主党が躍進した1年9カ月前の衆議院議員選挙でした。

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