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現役ディレクターが吼える「テレビバラエティは死んだか」(後編)

makkoidvd.jpgマッコイ斉藤氏の手によるDVD作品。右/『ノーマ
ニフェスト for UESHIMA』 左/『我々は有吉を訴
える ~謎のヒッチハイク全記録~』。

前編はこちら

──そんなマッコイさんから見て、今、面白いと思える番組はありますか?

斉藤 ありますよ。頑張ってる人は頑張ってますよ。特にテレビ東京の深夜枠はあなどれない。時流に媚びずに、面白いバラエティをガンガン作ってますから。『やりすぎコージー』にしても『怒りオヤジ3』にしても、過激で斬新。ああいうチャレンジは同業者として嬉しい限り。あとはバラエティじゃないけど、僕が今一番、好きな番組は『真相報道 バンキシャ!』ですね。政治や犯罪に対するあの緻密さと執念深さは、ものすごいものがある。報道バカが報道の限界に挑んでますよね。やっぱ僕らも笑いの限界に挑まないと。じゃないと、若い作り手が育たないし、世界に誇れる日本のお笑い文化も廃れちゃいますからね。

──芸人さんの質が低下していると思うことはありますか?


斉藤 いや、泥臭くて面白い芸人さんは今もたくさんいるんですよ。ただ、彼らの活躍の場がテレビから失われつつあるというだけのこと。だから、僕や一部の芸人さんは最近、「テレビじゃ放送できない笑いはDVDで残そう」という方向に走りつつあります。

──有吉弘行さんが再びヒッチハイクに挑戦するという問題作『我々は有吉を訴える』(ポニーキャニオン)もそのひとつですね。

斉藤 そう。あれはさすがに今のテレビじゃ無理(笑)。でもああいう毒のある笑いを好きな人は大勢いるはずなので、そういう人たちに作品を送り続けるのが僕の使命だと思ってます。あとは現在、『上島ジェーン(仮題)』というDVDも鋭意制作中ですよ。

──なんですか、それは?

斉藤 上島さんがサーフィンに挑戦するという物語。上島さんの“一番熱かった夏”の全記録です。サーファーたちとの交流、そしてひと夏の恋……。水中カメラも駆使して格好よく撮ってますんで、期待してください(笑)。9月発売予定です。

──それはものすごく面白そうですね(笑)。でもDVDって、商売として儲かるんでしょうか?

斉藤 今のところ儲けはほとんどないですよ。でもこういう笑いのカテゴリーを潰しちゃいけないと思うから、僕としては作り続けるしかない。

本当に面白い芸人だけが最終的には生き残る

──ところでマッコイさんは、テレビ離れの一因ともいわれるネット文化を脅威に感じることはありますか?

斉藤 ないですね。ネットは情報収集には便利だし、YouTubeには面白い動画もあるけども、競争相手とは思わない。ネットの中傷もまったく気にならないです。どうせそういう奴がテレビ局にクレームの電話を入れてるんだろうな、とは思いますけど。

──アメリカでは最近、番組制作者がテレビ業界から飛び出して、YouTubeなどで自分の作品を無料配信するムーブメントがあるそうです。マッコイさんは、そういう活動を視野に入れていますか?

斉藤 無料配信? どうやって女房と子どもを食わせていくのよ(笑)。ないない、そんなのまったく視野にないですよ。

──では、今後も当分はテレビ中心で活動を続けていく予定ですか?

斉藤 ええ。テレビはまだ死んじゃいませんからね。今の時期はたまたまクイズ番組が氾濫して、学校にたとえると、バラエティの世界がいい子ちゃんだらけの進学校みたいになっちゃって、不良も坊主頭にさせられているような感じだけど、そういう風潮も、いつか変わると思いますよ。テレビはこれまでいろんな挑戦をして、いろんな変革を遂げてきたんだから。クイズ番組だってあと1~2年したら減るでしょうし、お笑いブームというかネタブームもいつか終わって、本当に面白い芸人さんだけが生き残り、昔のようにコント番組で大暴れしてくれる時代が来ると思いますけどね。

──家族揃ってテレビを見ながら大爆笑できる日が、再び来ますかね?

斉藤 来ると思いますよ。まぁそんな時代が来たとしても、僕の作った番組は、不良やオタクなどのひねくれ者が、自分の部屋に1人閉じこもってニヤニヤしながら見るんでしょうけど(笑)。

「サイゾー」7月号より/構成・岡林敬太)

マッコイ斉藤(まっこい・さいとう)
1970年、山形県生まれ。 ビートたけしに憧れてテレビ業界に入る。『極楽とんぼのとび蹴りゴッデス』(テレビ朝日)、『すれすれガレッジセール』(TBS)など、多くの人気番組を世に送り“深夜番組のカリスマ”と呼ばれるように。常識にとらわれないぶっ飛んだ制作スタイルが多くのコアなファンを魅了。芸人からの信頼も厚い。

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やっぱり『やりすぎ』はマッコイ氏にも評価が高かったです。

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最終更新:2013/02/07 13:15
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