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若槻千夏「ヌードTシャツで学校建設」という不明瞭すぎる”美談”

akumanokeiyakunisign.jpgTBS『悪魔の契約にサイン』HP

テレビで話題のトピックを複眼的な視点で読むメディア・ウォッチャー今一生が、「こいつはギモンだ!」ともの申したのは……。

 タレントの若槻千夏がTBS系のバラエティ番組『悪魔の契約にサイン』の企画で自身のセミヌードを印刷したTシャツを1月31日・2月1日に東京の赤坂サカスで販売し、完売した。

 1枚2000円のTシャツが約3000枚売れたら、インドに学校を作れるだけの資金が集まる。そんな企画趣旨だが、この「美談」にはいろんな疑問がわいてくる。

 社会や世界のために「一肌脱ぐ」というアクションは、これまでもあった。

 国際環境保護団体グリーンピースは氷の溶けたアルプス最大の氷河に600人を集めてヌード写真を撮って地球温暖化防止を訴えたし、動物愛護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)の“I’d Rather Go Naked Than Wear Fur”(毛皮を着るくらいなら裸のほうがマシ)キャンペーンの趣旨に賛同して脱いだ人たちもいる。日本でも昨年、乳がん撲滅キャンペーンのチャリティとして写真家の蜷川実花さんが10人の女性のヌードを雑誌『グラマラス』の創刊3周年記念企画として撮影した。

 いずれも裸というインパクトによって社会的課題に対する関心を広く喚起できたが、それはヌードという表現が本来の趣旨を伝えるのに適していたからだ。

 では、若槻は学校建設の資金を作るのにヌードになる必要があったのだろうか? 1枚買うとTシャツの図柄とは別のセミヌード生写真1枚がおまけとしてもらえるという意味不明のコストを考えると、視聴率アップの話題作りのためにヌードをやらせて社会貢献という美談で正当化しようとした印象がぬぐえない。

 そもそも女性の肌の露出が神経質なほどタブーとなっているインドで、「ヌードで建てた学校」が地元の親や子どもから手放しで歓迎されるのだろうか? 国や自治体、企業の資金さえ満足に提供されない貧しい田舎町なら、日本という外資による学校建設は有益なのかもしれない。だが、田舎に行けばいくほど女性の解放は進んでおらず、欧米や日本のように「女性の裸」をおおらかに受け入れてくれるとは限らない。

 他にも、このチャリティには不明瞭な点が多い。

 インドのどこにどのくらいの大きさの学校を建てるのか、建設費に充当される「収益の一部」とは売上総額600万円のうちのいくらなのか、建設後に必要な教員の人件費などの運営維持費は誰が責任を持つのか、なぜチャリティ販売を始める前にそうした詳細な説明をしなかったのか……。詳細は、TBSあるいは寄付先の公式サイト上でも明らかにされていない。

「学校建設費をヌードで資金調達する」という国際協力は、NGOの関係者に聞き回っても「前代未聞」という。

 そこで寄付先にメールで尋ねると、「ご寄付の詳細につきましては今後TBS様との調整によりホームページ等で情報を開示して参ります」という回答が返ってきた。

「こんなに良いことします。だからお金を出して」と言うだけなら、路上で難民支援の募金を偽装しているカルト宗教団体と同程度のアカウンタビリティ(説明責任)だ。

 社会的責任投資の観点からみると、TBSは説明不足を認めざるを得ないだろう。

 それとも、番組のチーフプロデューサー・合田隆信氏は、自分の子どもや妻が「学校が建つなら私も脱ぐ」と言い出しても「他に方法があるだろう」とは言わないのだろうか? 番組サイトには「追加販売を検討」とあり、今月18日のOAでチャリティイベントの模様を伝えるとか。追加販売による収益を何に使うのだろうか? そして、学校の運営に持続可能な仕組みを持たせるところまで若槻にレポートさせ、誰もが納得できる情報開示をしていくだろうか? 数々の疑問への答えを心待ちにしよう。

●今一生(こん・いっしょう)
ライター・編集者。1997年「CreateMedia」名義で編集した『日本一醜い親への手紙』がベストセラーに。’99年に発表した『完全家出マニュアル』で造語した「プチ家出」が流行。著書に『親より稼ぐネオニート』(扶桑社新書)、『社会起業家に学べ!』(アスキー新書)、『プライドワーク』(春秋社)など多数。「放送文化」でドキュメント番組批評を連載中。
http://www.createmedia.co.jp

ちなつの歩き方

その「ひとり旅」の全貌。

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最終更新:2009/02/06 14:00
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