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アイデアは自分で考えない!? 人気放送作家の『アイデアを盗む技術』

yamana0510.jpg『アイデアを盗む技術』(幻冬社)

 料理の世界では「味を盗め」とよく言われるが、そんなに簡単に盗めたら苦労はしない。しかし親方は、その苦労を弟子に強いる。盗むことは、イコール発見そのものに他ならないからだ。

 その、親方が教えてくれない盗む技術を記した裏ワザ的新書が『アイデアを盗む技術』。『ザ! 鉄腕DASH!!』『行列のできる法律相談所』『人生が変わる1分間の深イイ話』『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)などを手がける放送作家・山名宏和氏が、他人のアイデアを盗むちょっとしたコツを、自身の経験談や例え話をふんだんに用いて、分かりやすく伝授してくれる。アイデアを生むときの心の動き、モノを見る姿勢、既存のアイデアの加工法など細やかに解説しており、新人中堅ベテラン、仕事をする全ての人のタメになる良著だ。

 構成は、大きく分けて「視線のスイッチを入れる技術」「感情の動きを取り出す技術」「他人の視線を利用する技術」「テレビの発想を盗む技術」の全4章。経験談が中心だが、その話はオフィス内の出来事ではなく、エレベーターの故障や郵便配達員のことなど、日常の些細な出来事ばかり。普段から”面白い”を探す視線をスタンバイ状態にしておいて、なぜ”面白い”と感じたか、立ち止まって考えることが重要である。すぐ仕事に役立つわけではないが、何年も経って、ふとしたところでその “面白い” が企画に生かされることがある、と山名氏は語っている

 他人のアイデアをそのまんま使ったらただの盗用になってしまうが、他人の”面白い”発想・着眼点を借りることは出来る。『人生が変わる1分間の深イイ話』も、よその番組のアイデアを発展させて作られたのだという。『アメトーーク!』における、芸人をひな壇に並べる手法や、「○○芸人」とくくるグルーピングの手法を借りて、1分間の時間しばり、出演者による「深イイ」評価といった仕掛けに発展させた。特別な演出を用いなくとも、既存の手法を発展させ、組み合わせることで面白い番組が成立するのだ。

 山名氏曰く「アイデアは思いつくものではなく見つけるもの」。

 高杉晋作は辞世に「おもしろきこともなき世をおもしろく」と詠んだ。つまらない日常における”面白さ”の発見こそが、アイデアの源泉となる。この本を読んで『アイデアを盗む技術』を盗んでやろう。”面白い”は道端にゴロゴロ転がっている。
(文=平野遼)

・山名宏和(やまな・ひろかず)
1967年生まれ。放送作家。主にバラエティーを中心に活躍。現在も、『ザ! 鉄腕DASH!!』『行列のできる法律相談所』『人生が変わる1分間の深イイ話』『ダウンタウンDX』『たけしのニッポンのミカタ』など、数々のテレビ・ラジオ番組の構成を行うほか、映画や舞台の脚本なども手がける。また社会人向けの企画・発想法の講座「アングル」を定期的に開催し、講師も務めている。著書に『ニッポンの少数民族』『だから直接聞いてみた』(ともに宝島社、共著)、『企画術の教科書』(インデックス・コミュニケーションズ、共著)、『大人の宿題』(サンマーク出版)など。

アイデアを盗む技術

盗んでナンボ。

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最終更新:2010/05/10 18:30
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