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【第20回】小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談

楳図かずおさんの至言「世界を相手にやっている人は、友達作っちゃうと危ない!」(前編)

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 モテない、金ない、華もない……負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第20回は特別編! 大マンガ家の楳図かずお先生と、先生が大絶賛中のクレイアニメDVD『チェーンソーメイド』の長尾武奈監督をお迎えしました!

[今回のお悩み]
「友達がいないのですが……」

――長尾監督、『チェーンソーメイド』を激しく応援していらっしゃるという楳図先生、初めまして! 今日はよろしくお願いします! 私、以前から『チェーンソーメイド』の動画を見てたんですけど、可愛いイメージのクレイアニメでまさかのスプラッター!? って驚いたんですよ!

長尾武奈監督(以下、長) クレイアニメは日本だと可愛い系が人気なんで、こういうのはどうだい? 的な(笑)。

――カラフルな粘土であんなにグロテスクな切り株動画を作るなんて……! しかも、まだ学生さんなんですよね。卒業後はどうされるんですか?

 普通に就職しながらアニメを作るのもいいな、と思いつつ、チャンスがあればそれはそれで……とか、探り探りです。というか、修士論文もこれから……。

楳図かずお氏(以下、楳) 大変な時期ですねぇ。せっかくだから、修士論文の中にもゾンビやメイドさんを出してしまいましょう! たぶん、他の人には書けないようなものが書けますよ(笑)。

 いやぁ、それで卒業させてくれるものなら(笑)。

――ちなみに、主役はどうしてメイドさんだったんでしょう? 趣味?

 ゾンビ物を作ろうと思ったとき、「戦うヒロインがいたらいいな、日本だと今なら……メイドさんだ!」と思って。

――あ、じゃあ、ご自分の趣味というよりも、世相に合わせた感じだったんですね。

 それもありつつ、自分でも楽しんで(笑)。メイドさんがチェーンソー持ったらカッコイイだろうなぁ、と。 

――確かにカッコよかったです! どういう作品から影響を受けましたか?

 ジョージ・A・ロメロとか、『死霊のはらわた』っていうゾンビ映画の目を潰すシーンとか、チェーンソーと言えば『悪魔のいけにえ』っていう古典のような名作とか。

umez_akari03.jpg『チェーンソーメイド』の撮影に使われた
クレイ人形。かわいい!

 僕は、あのゾンビの目をブスって指で潰すシーンが、見ている方に突き刺さってくる感覚があって良かった。実写ではないので、デフォルメして可愛く作っているんだけれども、それでものめりこんでしまう怖さがあって、素晴らしいですよね。イケてる描写です。

――楳図先生の『神の左手 悪魔の右手』でも、目からハサミが飛び出してくるシーンがありましたね。アレは本当に怖かった……。

 やっぱり目は嫌ですよねぇ(笑)。あと、チェーンソーで下から上までズイーンッ! とやるときに、ズバッと一気にじゃなくて、痛そうな、体の抵抗感みたいなのを出しながらやるのが良いのかな、と。そういう細かい表情などが大変良くできているから、人形が本当の人間みたいに見えてしまう。

――メイドさんがゾンビに対して「何すんのよ!」って顔するのも面白くって。人形の表情が細かいんですよね。

 ああ、あそこが一番萌える瞬間なんですよ!

 萌える瞬間(笑)。ああいう細かい微妙な表情の変化が全体の怖さを上手く盛り上げていました。ああいうところをはしょっちゃうと、ガタガタの本当にスプラッターになっちゃうんだけれど、そこのところは大変上手にできてるなぁ。あとキャラクターがみんな可愛いんですよね。可愛らしいのと残酷なものの2種類が入ってる。本当の人間の感じでつくっちゃって、童話性がなくなって、エグいだけになっちゃうのは嫌ですよね。

――楳図先生、本当に大絶賛じゃないですか!

 うふふ!

――アニメの制作はどこでやられてるんですか?

 自分の部屋でこもって一人で……。

――え? スタジオとかじゃなくて?

 そうですね、自分の部屋の、テーブルの上です。

――おお……。ちなみに、1作品撮るのにどれくらいの時間がかかるんですか?

 作り始めた5、6年前は2カ月くらいだったんですけど、最近は半年とか……。凝り出すとどうしても血しぶきだけに1日かけたり、どうすればもっと肉片が飛んでいるようになるかな~、とか考えながら……気付くと4、5時間経ってるみたいな。汁系にはこだわりたくて(笑)。まず、集中力をあげてスタートできるまでが一番大変かな。

――汁は大事! 私もスタートしちゃえば早いんですけど、それまでが長い(笑)。やる気スイッチが全然見つからなくて途方に暮れることが良くあります。

 ヘビメタとか、メタルの激しいのをかけて気持ちを上げたり、好きなホラー映画の一番好きな場面を見て、やる気を出すと良いですよ。『スキャナーズ』っていう映画の、あの場面がいいんじゃないか? っていうのを確認したりして。

――超能力で頭が爆発する映画だ! 監督は映画をものすごく見てらっしゃいますよね。

 中学の頃からホラー映画好きで。 

――私もロメロのゾンビにハマッてゾンビのコスプレをやり出したら、こういうお仕事が増えて、ロメロとゾンビには感謝しっぱなしです(笑)。アニメのキャラクターの声は誰が入れているんですか?

 『血みどろの森』という別の短編ではゾンビの声を自分でやってました。「ううーうー……」って。実家だから、その時は家族もさすがに引いてました。

 アハハハ!

 でも、家族も昔からホラーが好きなのを知っていたし、おばあちゃんが一緒にゾンビ好きになっちゃて。今までは漫画とか読んでいなかったんですけど、「楳図さんのは面白い。『まことちゃん』のグワシ!」とか言って(笑)。

 ねえ、精神が新しいですよね? うふふ!

――素晴らしい環境! 今後チャレンジしたいシーンはありますか?

 そうですね、もっと痛みを感じさせる、粘土だけれどもこんなになっちゃうんだ!? っていうのを追求したいなと思います。あと、すごい悪意がこもった人も描きたいなぁ。

――やっぱり普通の作品より、ホラー要素があったほうが作っていて楽しいんでしょうか?

 楽しい!

 そりゃあ、楽しい! 綺麗なのは綺麗なので、それ以上はないんですけど、醜い部分があると、そこはすごい想像性があって、楽しんでやれますよ。崩れた顔の方が面白いですよね。
後編につづく/取材・文=小明)

●楳図かずお(うめず・かずお)
1936年和歌山県生まれ。55年マンガ家デビュー。以降、数々の伝説的作品を発表し、各界に多くのフォロワーを生んでいる。審査員を務めた「第10回 DigiCon6」優秀賞のクレイアニメ『チェーンソーメイド』(ポニーキャニオン)を推薦中。

●長尾武奈(ながお・たけな)
1986年京都府生まれ。高校時代からクレイアニメの制作を始め、国内外の映画祭で高い評価を得る。代表作『チェーンソーメイド』はYouTubeで300万回以上再生。DVD『チェーンソーメイド』(ポニーキャニオン)発売中。

●小明(あかり)
1985年栃木県生まれ。02年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/
サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中

CHAINSAW MAID

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最終更新:2018/12/19 15:02
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